蓬 窓 閑 話

「休みのない海」を改題。初心に帰れで、
10年ほど前、gooブログを始めたときのタイトル。
蓬屋をもじったもの。

ノリタケの森

2021年04月29日 | 思いだすままに

 昔、元気だったころ、暇を見つけては独り暮しの母のところへ行った。ほかに部屋はあるのに、母のベッド脇に蒲団を敷いて、朝から晩まで一緒にいた。

 たぶん私が「ノリタケの森」へ行くと言い出し、母も乗り気になった。

 タクシーで15分ぐらいだったろうか、母は骨折から退院したばかりだったが、杖をつき、しっかり歩いていた。しかし、人さまから見ればおぼつかなかったであろう。 受付では「車椅子をお貸ししましょう」とお姉さんが親切に言ってくれた。

 建物がいくつかに分かれており、煉瓦の建物は、昔「則武」と言われていたころの倉庫か作業所とおぼしき所。そこに展示された「オールド・ノリタケ」が素晴らしかった。

 母の乗る車椅子を押しながら、ゆっくり歩いた。

 ショップでは、ボーンチャイナのNoritake、ポットから砂糖入れまである紅茶セットが欲しかったけれど、手が出なかった。

 その後、古道具屋で五客セットを見つけて、長いあいだ使った。ボーンチャイナでも寿命がくれば割れる。いま使っているのを見てみたら、Narumiとある。鳴海製陶もおなじみの名。

 母と外出した最後の思い出である。

 あとは、病院のみ。

 ノリタケの森は、ネットを見ると、整備がゆき届いて、ますますお洒落なミュージアムパークになっている。名古屋駅から5分もかからない。

 関東には栗田美術館がある。あちこちの岡に建物があり、全体も素晴らしかった。

 鍋島や伊万里など、古い時代の豪華な花瓶や大皿で、あまり興味が湧かなかった。西洋長屋住まいじゃ床の間もない。ショッピングセンターの脇に並べてあったインカ文明の素焼きの土器のほうに魅せられた。脚もすでに痛みはじめたころだった。

 オールドノリタケは、時代はもっと新しく、19世紀初め西洋向けに作られた洋風の花瓶や食器セットである。見出し写真にあるように、文様は日本風。喜ばれたらしい。

 

 出かけては駄目と言われると、動けない者でも出かけたくなる。しかも、不要不急のところへ。

 皇居の東御苑は好きだった。木の間がくれシャガが咲いており、ときどき雉がいたりし、野趣が残っていた。しんとしたところを独りで散策すると、心鎮まる思いがした。

 深川江戸資料館では、浮世絵の展示会をしているという。観たい!

 いずれも、独りで行くのは無理になってしまったし、いまは入れないだろう。

 

・ ワクチンの案内がきているが、面倒くさそうだし、薬に弱いので体調も悪くなりそう。したいと思わない。そのために尊厳死協会のカードを持ち歩いている。人工呼吸器など延命措置はしないでくれという趣旨である。あとは、なすがまま……