優緋のブログ

HN変えましたので、ブログ名も変えました。

「いま、会いにゆきます」

2007-01-05 11:25:23 | 読書
この作品、もうすでに映画かもドラマ化もされ、かなり有名な感動作らしいことは知っていた。
でも、興味がわかなかった。
ずっと本棚に放置されていた。

数ページ読んでみたものの、相変わらず先に進まない。
いろいろありすぎの韓国ものを見すぎたせいか…。

とにかくこの物語に出てくる人物は普通のいい人ばかり。
お金持ちや、特別の美人やとんでもない意地悪な人もいない。

主人公の若い父親はちょっとした不具合を抱えたサラリーマン。
主人公、巧はこの「不具合」の為に打ち込んでいた陸上を止め、大学も中退し、交際相手の澪との将来も諦めようとする。

真面目な二人はごく近くで長い間生活しながら、手を握るまでも長い間かかった。巧は別れようとする時も、少しづつ澪との距離を置きながら、自然に相手が自分から離れ、もっと適切な、健康な人と出会って幸せになるようにと願う。

だが、自分の願いどおりに澪からの手紙が途絶えるようになると、「明日を望む気持ちが半分ぐらいになえてしま」う。
それまで「明日」は澪からの手紙に一日分近づける日だったから。


世の中、完全なる健康体で欠けることなき条件を持った人もいるのであろうが、私なども色々と「不具合」を抱え込んだまま家庭を持ち、子どもを持った人間だ。
だから、こんなふうに「不具合」を持った人間の将来への不安や、こんな自分が人並みの結婚や、子どもを持つことを望んではいけないのではないかという思いはよく分かる。


ところが別れて一年過ぎたある日、澪の決断で二人は再会し結婚する。

結論から言ってしまえば、澪は交通事故で記憶を失い、その時に8年後に「ジャンプ」して未来の巧と息子の佑司に出会ってしまう。
それが、物語の前半で巧が幽霊だと思っていた澪なのだ。
そう、澪はすでに一年前に死んでいた。

記憶を失っていた澪は、巧に出会ってまた恋をし、6週間を共に過ごす。
雨の季節にやってきた澪は、雨の季節の終わる二日前に桜色の霞になって元の世界(時代)に戻っていく。

その間に、澪は巧が書いていた「思い出物語」を読んで、自分がすでに死んだ人間であること、自分の過去を知ってしまう。
ということは、澪にとっては自分の未来を知ってしまうということだ。

自分がどうやって巧と再会し、結婚し、やがて佑司を生み死んでいくかを。

澪は、もっと生きたいと思えば巧と再会しない道を選ぶこともできた。
佑司を生まないという選択もできた。
でもそうしなかった。


「8/15
時間になりました。
もう行かなくちゃ。
湖の駅で、きっとあの人は私を待っています。
私の素敵な未来を携えて。
待っていてくださいね 私の坊やたち。


いま、会いにゆきます。」


「私は生涯でただ一度の恋をするように神様からつくられてしまったんです。」
「そう、いつかまた、何処かで。そのときもまたきみの隣にいさせてよ。すごくいごこちがいいんだ。」


人は必ず誰でも死によって別れのときを迎えます。
その時を「幸せな未来」と呼んで、巧に会いにいった澪は幸せな人生を送ったといえるでしょう。