優緋のブログ

HN変えましたので、ブログ名も変えました。

あの日から 序章その3 「ジュンサンの言いたかったこと」

2006-11-14 15:22:24 | あの日から
「好きだった。 ありがとう、もう 会えないが
          僕は忘れない 君は忘れて」

「なぜなの」と きっと君を 泣かすから
         何も告げずに ミトン返そう

「ユジナア」と 呼ぶ声君に 届かない
          やはり君とは もう会えないか 


ユジンの家でその写真を見たとき、僕は愕然とした。
ポケットからあの写真を取り出し、その写真と比べてみる。

〈同じだ…。焼け落ちた部分は、ユジンのお父さんだったんだ。
しかも母さんはユジンのお父さんと腕を組んで微笑んでいる…。
いったいこれはどういうことなんだ…〉

僕はジャンパーを掴むと、何も告げずにユジンの家を出た。
〈キム教授に会って確かめなければ…〉

寒さで凍った道路を滑りそうになりながら僕は大学に向かって走った。
僕は怖かった。
間違いであって欲しい…。
そう願いながら、それでも確かめずにはいられなかった。


「カン・ミヒさんとユジンのお父さんは恋人同士だったんですか?」
「…、そうだな、ヒョンスが結婚すると、ミヒはすぐにこの地を去ったからな。」
「それで、教授とミヒさんとは…」
「私の片思いだったよ。…みんな昔のことだ…」
教授は遠い目をして言った。

そうじゃない。
昔のことなんかじゃないんだ。
僕にとって、僕達にとって…。


ユジン、ごめんよ。
もう君と会うことは出来ない。
僕はアメリカへ行く、君に黙って。
こんなことになるなんて…
春川になんて来るんじゃなかった…


12月31日。
僕は君との約束を破ってこの春川を去ろうとしている。
君はきっと待っていることだろう。
ごめん。でもこうするしかないんだ。

車に乗り込む。
街を抜け、車はどんどん春川から遠ざかってゆく。
その時、ジャンパーのポケットの中にあるミトンに手が触れた。

〈ユジンに今日これを返すはずだった…
このまま行ってしまって本当にいいのか…
ユジンはこれがないと手が寒いだろうに…〉

もう、理由はどうでもよかった。
気がついたときは母の制止を振り切って、無理やり車を降り、タクシーに乗っていた。

大晦日の道路は混んでいた。
街に入るとタクシーは遅々として進まない。
僕はいらいらとして、タクシーを降り街を走った。

〈ユジンごめんよ。
きっとずっとあの場所で待っているんだろう。
今行くからね。〉

〈でも、ユジンになんと言おう〉
走りながら僕は考えた。

〈本当のことなど言えやしない。
ただ、ミトンをありがとう。
母の仕事の都合で急にアメリカへ行くことになった。
もう韓国には帰らない、会うことはない、と。

ユジンのこと好きだったけれど、僕の事は忘れて。
あぁ、そうだ、サンヒョクに僕が謝っていたと伝えてもらおう。
ユジンと仲の良い、優しいお父さんがいるサンヒョクが妬ましくて嫌がらせをしたこと。
サンヒョクは本当にいい奴だ。僕もわかっていたんだ。
でも素直になれなかった。

だから、僕がいなくなったら、元どおりサンヒョクと仲直りしてほしい、と〉


あぁ、もう少しだ。
もう少しで約束の場所に着く。
もう少しだけ、ユジン待っていて。
そして僕の言うことを泣かずに信じて聞いてくれますように。

僕はあせって、大通りを横切ろうとした。
その時…

「ユジナァ…」
〈ごめん、やっぱり君にはもう会えないみたいだ…、許して…〉