オータムリーフの部屋

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国民聴取会やパブリックコメントは政府のアリバイ工作

2012-09-01 | 原発

「膨大な数でした。国民の原発問題への関心の高さを、甘く見すぎていたかもしれない。」(内閣府中堅職員)
 約9万件。内閣府が7月2日から募集した「〈エネルギー・環境に関する選択肢〉に対する御意見」、いわゆる「原発依存度についてのパブリックコメント」に投稿された意見の総数である。
 今回のパブリックコメントは、2030年時点での日本のエネルギー政策について、「原発依存度をゼロにするか(ゼロシナリオ)、15%にするか(15シナリオ)、それとも20~25%にするか(20~25シナリオ)」、どれが一番ふさわしいと思うかを国民に問うものだった。
 内閣府は過去にもパブリックコメントを募集してきたが、「集まってくるのは多いときでもせいぜい1000件程度だった」(同・中堅職員)というから、9万件という数字がどれだけ大きなものであるかお分かりいただけるだろう。
7月14日より日本各地で開催された「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」でも、前出の3つの選択肢のなかからどれを選ぶべきか、意見の交換が行われたが、意見を表明した人の約7割がゼロシナリオを支持している。国民の多数が「将来的には原発ゼロ」を望んでいることは明々白々。しかし、この国民の声に対して露骨な嫌悪感を示し、総力を挙げてゼロシナリオもしくは15シナリオを阻止しようとする勢力が存在する。電力会社の面々である。
 管内に島根原発と建設中の上関原発を抱える中国電力は、原発の必要性を分かりやすく解説した資料と、社員に対してパブリックコメントに意見を提出するよう、暗に求める文書を作成していたのだ。「社内限り」の印が押され、各部署の長のみにしか配られなかったというこの内部文書が流出することなど、中国電力側は考えもしなかったのだろう。本誌は中国電力の関係者の協力を得てこの文書を入手したが、ここには合計50ページにもわたって、電力会社のホンネと、社員への要請が記されている。

〈政府のエネルギー・環境会議は、「エネルギー・環境に関する選択肢」を決定し提示しました。政府は、この選択肢に基づき国民的議論を展開し、国民各層の意向を総合的に把握した上で、今後のエネルギー・環境政策を8月中に決定するとしています。当社としても、電力の安定供給という責任を担う当事者として、自らの意見を表明していくことが重要と考えています〉
 と現状を説明した後で、原発の比率を下げれば下げるほど、電力会社の経営が窮地に陥っていくことが丁寧に説明され、「ゼロシナリオ、15シナリオ」が選ばれた場合、電力会社も国民も厳しい規制と負担に直面するとして、
〈今回の選択肢のうち、「ゼロシナリオ」は、エネルギーの多様性確保、実現可能性、およびエネルギーコストの抑制といった観点から、選択肢たり得ないと考えます。提示された選択肢の中から、あえて一つを選ぶとすれば、原子力の安全確保を大前提に、「20~25シナリオ」は選択肢となり得ると考えます〉と結論付けている。
 
 さらに同文書には、〈政府は国民全体での議論を呼びかけており、社員が自分の意思で意見聴取会への応募やパブリックコメントへの意見提出等を行うことは自由です。各人の選択肢に対する考えについて、意見提出等をしていただければと考えています〉と言う記述があり、社員に「原発賛成の意見を送るように」と指示している。
 
 この文書が中国電力幹部に配られたのは7月12日のこと。7月16日には中部電力社員が意見聴取会に出席して世間の批判を浴びたが、その直後にはこんなドタバタがあった、と中国電力の社員が明かす。「さすがに『あの内部文書には問題がある』と思ったのでしょうか。7月19日には新しい文書が配られました。そこには『意見聴取会やパブリックコメントの募集において、会社として社員に対し応募や提出を促すことは、これまで同様一切行いません』との一文が記されていた。万が一内部告発などが起こった場合を想定して、急遽作成したのでしょうが、『あれで〝提出を促さなかった〟はないよな』との声が社内でも上がりました」
 それだけではない。中国電力は幹部社員に対して、次のようにも要請している。
〈各所において日頃からお付き合のある社外のオピニオンリーダーのうち、電力に理解のある方々を対象に、(中略)選択肢の内容および当社の考えを説明してください〉
 オピニオンリーダーとは、大学教授や地元政治家らを指しているようだが、彼らにも「原発は必要」という意見と主張を広めることに一役買ってもらおうとしているのだ。
「文書を作成した経営企画部門と広報部門は、実際にオピニオンリーダーに説明したかを報告するように幹部らに求めました。社員が説明した相手には、パブリックコメントに親原発の意見を送ることを期待していたようです」(同・中国電力社員)
 
福島第一原発事故の影響について研究する、福島大学の後藤忍准教授は、この内部文書を一読した上でこう指摘する。
「中国電力は現在山口県に上関原発を建設中ですが、ゼロシナリオや15シナリオが選択されれば、新しい原発を建設する必要がなくなるため、上関原発は無用の長物となる。それでは経営上大きな損害を被るということで、なんとしてでもゼロもしくは15シナリオを阻止したいのでしょう。経済的利益を優先して、事故のリスクなどについてはフタをしてしまうその姿勢は、3・11以前となにも変わっていませんね」 中国電力の呼びかけによって、社員やオピニオンリーダーがパブリックコメントに意見を寄せても、国民の多数が「ゼロシナリオ」を支持しているなら、さほど影響はないのでは---。普通はそう考えるが、後藤准教授は「政府は国民の声とは関係なく、原発を残すシナリオを選択するのではないか」と危惧を示す。

「政府が国民に提示した資料を読むと、原発依存度が低くなった場合の経済的ダメージばかりが強調され、〝原発を維持するにはどれくらいのコストがかかるのか〟〝再び原発事故が起きた場合、日本全土でどれぐらいの被害が想定されるのか〟についての説明がまったくないのです。『原発ゼロだと、国民経済が台無しですよ』と言って、『だから15シナリオにしましょうよ』ともっていきたい思惑が透けて見えるのです。公正な議論をする気など、ハナからなかったのかもしれません」
 たしかに政府は「多数決で決める」とは言っていない。それどころか、〈寄せられた意見をもとに、有識者会議を開いて分析する〉
〈統計学に詳しい専門家を呼んで、寄せられた意見を分析する〉
〈8月中には決められないので、9月まで検討する〉
 などといくつもの要件を「後出し」し、さらには枝野経産大臣が「2030年ではなく、2050年を目標にしてもいいのではないか」とまで言い出す始末である。
 
さまざまな意見を分析した結果、「原発が必要という意見が少なからず存在し」、「有識者にもそう考える人がいるので」、やっぱり原発は必要です、という結論を導きだす可能性は十分にある。原発ポチたちが必死に叫び続けているのは、そうなるのを望んでのことなのだ。
「週刊現代」2012年9月1日号より
 
国民の意見を聞くという体裁だけは整えて、あとはごまかしちゃおうとしたのだろうが、パブリックコメントが9万件とは・・・・・今、政府はどうやって20シナリオに誘導すべきか?頭の痛いところだろう。御用学者を総動員して、原発ゼロなら、産業の空洞化が進み、国民生活が破綻するとこじつけるに違いない。
 
参加者が制限される中で、8月1日、福島テルサで「エネルギー・環境の選択肢に関する福島県民の意見を聴く会」が開かれた。原発を選択する本当の福島県民は一人もいないのに、選択肢云々はピンボケもいいとこである。悪名高かった「意見を聞く会」は、福島は特別とばかり、意見発表者30人へと大幅に改善されたが、参加者(傍聴者)は大幅に制限された。わずか147人。入場に際しては金属探知機が設置され、大勢の警備員が立ち並ぶ中で荷物検査までするものものしさ。発言者の一人は、「被災者の福島県民をまるでテロリスト扱い。あまりにも福島県民を馬鹿にした行為だ」と怒りを爆発させた。また、ある発言者は「国民の生活を維持するため」と称して野田首相が大飯原発を再稼働させたことに対して、「原発事故で普通の生活を奪われた福島県民は国民ではないのか」と怒りを爆発。今の政権は「福島県民の棄民政策だ」と訴えた。
 
確かに、原発で最大の被害を被った福島県民の意見を最優先で尊重すべきだろう・・・・・・・

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