オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

結婚の経済学(森川友義)

2013-03-07 | 社会

 離婚確率は1/3、熟年離婚も少なくない。経済的理由で子供は作れず、子はかすがいと言う言葉も死語になりつつある。結婚しなければ幸せかと言うと、そう言うことでもない。人生最大の賭けである結婚をしてしまったら、それをうまく長続きさせるのは人間の知恵だろう。今日取り上げる結婚の経済学はその辺の知恵がわかりやすく、述べられ、なるほどと感心してしまった。我が意を得たりと言う部分も少なからずあるので、これからも幸せを継続させる心のスタンスを維持できるよう努力していきたいものだ。特に結婚も子育ても自分を磨くための重要なファクターであることは間違いないので、それを経験しないで人生を終わるのはもったいないと思う。
 しかし、夫婦分業の今までの家庭像を維持するのはもう不可能なので、21世紀型の家庭を模索していかなければならない時期に来ている。共働きしながら、子育てをする。家政婦を雇っても働き続け、ビジネススキルを維持する。この新しい家庭像は個人にも、社会にもメリットは大きい。長生きしている親の世代もこの21世紀型家族を支援し、積極的に協力すべきだろう。この家庭の変革がない限り、日本の再生はありえない・・・・・

 最初はパートナーが「大好き」だったはずだし、結婚生活にも満足だし、お互い浮気せず、加齢臭もなく、寝るときもずっと一緒、離婚だなんて絶対に考えなかったはずです。ところが、相手を過大評価する「恋愛バブル」がはじけて、「ハネムーン時代」が終焉し、子供が生まれ、夫婦という家族単位が子供中心の生活に変容するにつれて、愛情は冷め、結婚生活がルーティン化し、相手の欠点が見えて、相手の体臭をクサイと感じるようになり、期待感は絶望感へ、さらには倦怠感、焦燥感、厭世感が生じるに及んで、相手の存在を「空気」のようだと定義し、場合によっては「空気と同じで何も感じないもの」、別の場合には「空気と同じで不可欠なもの」と使い分ける、このような夫婦関係になっていったはずです。そもそも一夫一婦制度とは、30歳前後で結婚して、80歳前後で死ぬまで50年間、ずっと1人の相手を愛しなさいという社会制度です。人間の平均寿命が30年とか40年とか50年だったら問題ありませんが、現在のように80歳を超えてしまうと夫婦関係を維持するのは非常に困難です。「幸せな結婚」は理論的には不可能です。結婚生活を劇的に良い方向に変える魔法のような万能薬はないし、もし普遍的な解決策を見つけ出したら、ノーベル平和賞ものです。ただ、結婚生活を長持ちさせる理論的な処方箋ともいうべきものは存在します。
 
(1)結婚に対して過度の期待をしない。自分を過小評価するか、相手を過大評価すること、またはその両方。

(2)お互いが飽きがこないものをどれだけ創出できるかで、結婚生活の充実度が決定される。

幸福感は線香花火のようにはかない生命であります。ある人生の時点で幸福と感じても、幸福に慣れて、いずれ幸福感はゼロになるからです。幸福感は「消費財」なので、経済学の「限界効用逓減の法則」があてはまります。「限界効用逓減の法則」は、消費財は消費すればするほど満足度が逓減していくということです。

「恋愛バブル」は1年半~2年で消滅してしまいますが、恋愛バブルがなくても、相手を過度に高く評価したり、自分を過度に過小評価したりすれば、幸せな結婚を継続できます。朝起きたら、相手への期待をリセット。ゼロにしましょう。
 そうすれば、「幸せな結婚」は長持ちします。恋愛に陥りがちな「減点制度」から、結婚後は「加点制度」へ変換することが重要なのです。例えば、夫にとっては、妻が朝ごはんを作ってくれたら加点になります。加点ですから、すんなりと「ありがとう」のことばも出てきます。その反対に「自分は働きに出るのだから、朝ごはんを作るのは当然」と思えば、加点ゼロ。おいしくないものを作ったときには減点になってしまいます。妻にとっては、残業をしてまで稼いでくれる夫には、加点です。残業して夜遅く帰ってくるから減点では、一生懸命働く夫が可哀そうです。残業してまで稼いで経済的資源を供給しようとする男は、仕事の疲れと妻からの減点のダブルパンチで立ち直ることができません。

「男の年収と女のみかけは均衡する」、また「結婚とは男の将来性を買い、女の最高を買う」のが基本です。
 しかし、このような考え方では、長期的には、男女が釣り合わなくなってしまうことは必定です。
 何しろ、女の見かけは日に日に衰えていくのに比べて、男の年収の方は、50歳前後まで徐々に上昇していくことになるので、人生のいつかの時点では資産価値の逆転が生じます。男性の見かけについても全く同じ。顔や体型といったものが「消費財」である以上、満足度が低下して飽きてしまうことは、避けられないのです。
 良い意味で、飽きない・相手を飽きさせないものは非常に少ない・・・。でもないわけではない。
●「知性・教養」
 芸能の話でも、スポーツの話でも、ペットの話でも、深く知識があると楽しいものです。
 ただし、お互いがお互いの知性や教養のレベルのバランスが取れることが必要ですので、双方向でなければならないところが、難点です。
●価値観の一致
 「価値観が一致する」とは、男女間の資源配分の比率が近いことを意味しています。「資源」とは、自分が持っているお金、時間、エネルギーの3つを指します。自分があるお金の使い方と時間の使い方とエネルギーの使い方が、相手の使い方と同じかどうか、同じでないにしても限りなく近似値であることが「価値観の一致」につながります。
 夫が夏休みは「家でゴロゴロ」と主張し、妻は「ハワイに行きたい」といったような資源配分では、お互いを遠ざけてしまう要因になります。妻は気の合った奥さん同士でハワイに行き、夫は不倫相手と温泉旅行といった事態が容易に想像できるのです。
●料理の腕
 料理自体は消費財ですから、満足度は下がっていきますが、料理という種類には何千、何万といった数がありますので、同じ料理、例えば、肉じゃがとかハンバーグとかを毎日出さない限り、料理の腕前は、無限の可能性を与えてくれます。相手を飽きさせない最大の財産と言うことができます。通常は専業主婦が行いますが、男性が料理を作ると新鮮です。男の奥行きの深さを提供できるという意味で夫の料理は重要なスキルです。
●お金
 夫婦が稼ぐお金です。お金によって、様々な幸せを買うことができます。夫のみならず、妻がお金を稼いでもいいです。専業主婦だった妻が想定外に稼いでくれたものを、夫婦2人に投資して、いままで買えなかったものを買うことによって新鮮さを生みだすということも、夫婦の「幸せな結婚」には重要です。
●子供の成長
 夫婦の間には子供が2人程度いるというのが典型となっています。子供が生まれて、最初の数カ月間の子育ては大変ですが、その成長過程で、夫婦間に倦怠が生じたとしても、夫婦共通の飽きない資産を形成していくことになります。その意味で「子はかすがい」です。ただ子供の成長には山あり谷あり、一律に幸せの連続ではなく、幸せと不幸が断続的に押し寄せてくる点が厄介ではありますが・・・。
 このように、もし夫婦生活を円満に過ごしたいと思うのでしたら、限界効用が逓減しない分野をいくつ増やせるのかにかかってくると結論することができます。

(3)喧嘩も不可避だが、テクニックは如何に円満に早く仲直りするかである。
 謝るが勝ち。賢い方が先に謝ってしまうのが鉄則です。

(4)「共通の敵」理論
 中国や韓国が反日教育をして、内政上の問題を隠そうとするのに似ていますが、共通の敵をつくるのも結構効果があるものです。この「共通の敵」理論は、恋愛にも結婚生活にも応用可能です。
 恋愛の場面では、「自己肯定戦略」(人間には相手から認められたいという強い欲求があるために、褒められたり、うなずかれたり、肯定されると、その人に好意を抱くという心理を使って相手の歓心を買う戦略)と組み合わせると効果抜群です。 例えば、職場で好きな人がいるとします。その人が上司にこっぴどくしかられて、その晩一緒に飲んだとします。その人が「ほんと、嫌な上司」と言ったら、あなたは即座に同調すべきです。

 「共通の敵」とは、結婚生活に応用可能な戦略ですが、上手に運用していただくためには、心理学者フリッツ・ハイダーが提唱した「認知的バランス理論」を理解してもらわなくてはなりません。
 「認知的バランス理論」とは、心理的齟齬が生じているとストレスになることから、その齟齬を解消しようとする行為を指します。 つまり、夫婦円満のためには、相手が好きなものに好きと言うように心がけることが、大切ということです。
 最高のバランス戦略は、お互いを好きということです。日本人はとかく自分の感情を相手に伝えません。でも、一方が「大好きだよ」と言い、他方が「私も(だ)よ」と言えば、お互いに同調して恋愛感情が育まれるのです。
 愛情には互恵性が不可欠です。一方的に好きだとアンバランスが生じてストレスとなりますから、相手の愛情度に合わせていきます。ですから、好きな気持ちを言葉で確かめ合うことはとても重要なこととして理解してください。

 「共通の外敵」理論を認知的バランス理論から説明します。
 例えば、お互いが望む「夢をつくる」ことは夫婦円満につながります。「お互い動物が好きだから、アフリカに旅行しようよ」「それ最高だね」「毎月2万円ずつ貯めれば、5年後には達成できるよ」「そうしようか」と言って開始すれば、実現可能な夢になります。 恋愛バブルが弾けそうになっても、素敵な夢の存在が2人を結びつけてくれます。夢が魅力的であればあるほど、2人の愛はその魅力につられて深まっていくので、しっかりとした夢づくりをしておきたいものです。
 逆に、共通の敵が夢ではなく、一時的な病気でも愛が深まります。なぜなら「病気を治す」というのが、共通の夢となるからです。見方を変えれば病気が共通の敵、治癒可能であるならば、共通の敵と見なすことができます。
 このように、愛情の継続は、外敵の存在で可能です。実践可能なテクニックなので、恋愛感情が冷めてきたと感じたら、即実践してみるといいかもしれません。

(5)夫婦生活では、家事の独占は「腐敗」を生み出し商品の劣化を招く。

 男は外に出て経済的資源を安定的に獲得し、女は家庭にとどまり、炊事育児を担当するという時代は終わりました。 しかし、経済的な先行きが不透明な21世紀では、お互いにないスキルを補完し合う仲より、同じような行動をして重複する仲へと移行するのが正解です。

「20世紀型夫婦像」のメリット・デメリット
 夫に経済的資源の安定供給を担当させ、妻に家庭内労働を担当させるといった「20世紀型夫婦像」には確かに大きなメリットがありました。まず夫側。戦後から20世紀末までは、年功序列、終身雇用に裏打ちされて、60歳定年までは、給料は年齢とともに上昇し、定年まではよほどのことがない限り解雇されることもありませんでした。
 低リターンではありますが、低リスクの雇用制度だったと言えます。先が見えて将来設計が容易な分、子供2人、郊外一戸建てといった「平凡な家庭」を望む女性にとっては、結婚とは安定であり、将来に不安のない永久就職だったのです。 ところが、1980年代後半にバブルが弾け、グローバル化(米国化)が促進された21世紀に入ると、年功序列、終身雇用といった日本の伝統的雇用体系が崩れて、会社に勤めることが必ずしも低リスクではなくなりました。若者の間で顕著になっている非正規雇用者の大量生産(2012年6月現在、日本には正規雇用者3370万人に対して非正規は1775万人もいます)という状況になるに及んで、20世紀的な平凡な家庭が構築しにくくなってきました。夫の収入に頼って家族が生きる・・・。これほどリスクが大きいことはありません。20世紀に比べたら、明らかに高リスク低リターンです。他方、妻の家庭内労働の独占も問題があります。確かに、家庭内の仕事は多岐にわたりたいへんです。家庭内で行われている仕事に専門的な名称をつけるとするならば、妻の役割は、ファイナンシャルアドバイザー(CFO)、心理カウンセラー、コールガール、シェフ、バトラー、教師、レジャーコーディネーター、保育士、家政婦、おかかえ運転手、秘書、メンテナンススタッフ・・・、場合によってはCEOにもなったりしています。 このように家庭内で多岐にわたり、独占的な企業経営となると、すべてに精通した万能選手でない限り、徐々に労働のレベルが劣化していくことは必定です。カスタマーサービスをしようとしても、カスタマーが無反応で「ありがとう」も言ってくれないし・・・。
 最終的にどうなるかと言うと、良い意味でも悪い意味でも「補完」し合う関係となり、お互いを必要とする関係です。 悪い意味ではビジネススキルを失った妻と、「妻がいないと何もできない、料理したくてもコンロの使い方も知らない」夫・・・。 両者の関係は20世紀だったら、1つの理想的関係を構築していたことになります。何しろ、お互いは独占的に所有し合い補完し合う仲なので、自分にはできないものを提供し合う間柄だからです。しかし、21世紀の日本社会では、その補完関係もデフレスパイラルと同じように負の連鎖になっています。デフレで給料が減り、給料が減った分、家庭内労働の質量も悪くなる・・・。さらに、やっとの思いで購入した一戸建ての「うさぎ小屋」も、人口減を背景に不動産価格が下落してローンの残債が売却金額より多くて売るに売れず、夫は減収か左遷か解雇かのじり貧人生・・・。 他方、夫との関係が希薄になった妻は、愛情の向かう先が子供に集中して子供べったりとなる・・・。また両親ともに子供にリスクを取らせないから大志を忘れて小さくまとまり、挙句の果てに結婚せず、親の遺伝子は途絶えてしまう、という事態になっているのです。 21世紀において「幸せな結婚」を継続するためには、万が一に備えて、「重複」しておくことです。経済的資源の獲得を重複させておけば、激動の時代のリスクヘッジになります。一方が倒れても他方で生き延びることが可能になるのです。そのためにも、まず、女性は結婚したとしてもビジネススキルを手放さないことです。つまり、仕事を継続する。21世紀は、子供をつくりつつ、男女ともに共働きする時代です。夫は仕事だけに専念し、妻は仕事と家事の両方をこなすという男にとって都合のいいふうにはいきません。共働きを前提で夫婦像を探ろうとすると、結婚の新しい形が見えてきます。まず、妻が継続して経済的資源を獲得しようとするわけですから、当然、夫もそれなりの家事を行わなければなりません。フィフティ・フィフティの関係です。これができるかどうかは、両者の仕事の軽重によるのでしょうが、子供がいなければ可能なはずです。
というわけで、子供問題。共働きをしているからといって子供をつくらないというのは小物、前時代的考え。キャリアと子供の両方を取ってこその21世紀型夫婦像です。 出産・子育ては大変ですので、現実的には家事の一部を外注せざるを得ません。家政婦を雇うか、あるいは妻の母に育児を手伝ってもらうかとなります。
 テレビドラマ「家政婦のミタ」以降、家政婦を供給する民間システムが加速しているようなので朗報です。仮に妻の給料をすべて家政婦に投入しても、ビジネススキルはずっと継続しているわけですから、子供に手がかからなくなった後に、その点が生きてきます。
 妻の母に育児を手伝ってもらう場合には、新居は妻の実家の近くにするのが効率的です。夫婦間のリスクヘッジのほかにも、夫婦共働きのメリットはいくつかあります。
 第1に、女性の労働力が日本を救います。いままでの専業主婦方式では、女性が長い間培ってきたビジネススキルを放棄することを意味していました。 例えば、女性が、中学受験、高校受験、大学受験して、多額の教育を支払い高い学歴を獲得して、大企業に入り、ビジネスに精通しても、結婚して家庭に収まると、それまで獲得した知識やスキルのほとんどが無駄になってしまうといった事態を招いていたのです。
 第2に、夫と妻の結婚偏差値の上昇を意味します。離婚しても「セカンド市場」での商品価値が高くなります。仕事と家事の両方に精通した夫、妻。仮にバツイチになっても、夫はモテるでしょうし、妻の方も、見かけ的魅力は落ちてもほかの部分での価値が上昇しているわけですから、永久就職してビジネススキルを持たない女性よりも、再婚の可能性が高いはずです。 夫婦ともに結婚偏差値がアップすると、「じり貧の中での補完」から、「高いレベルの補完」へとなります。誰でもできる仕事の給料は低いですが、難しい仕事の給料は高いです。それと同じで交換するものの程度が高いと代替が利かなくなります。 代替が利かない補完、いつでも離婚できるように自分の価値を高めることが、逆に夫婦の離婚をしづらくしていくのです。

 離婚は将来予測が入るとなかなか踏み切れない。 夫にとっては、妻だけでなく子供を失うことも多いし、孤独にもなり、料理ができないとその日の食事にも困ることになる。 他方、専業主婦だった妻の方は、ビジネススキルが不足していて、自活することがまず難しい。 結婚前に、どれほど学歴が高かろうが、どれほどビジネススキルを持っていようが、子育てに費やした期間にビジネススキルの大半は失われてしまう。 また、より良い条件での再婚の可能性も非常に低い。セカンド市場に参入してくるバツイチ男は、より若い女を獲得しようとする。資産のある男には今流行の年の差婚も可能だが、バツイチ女のセカンド市場は厳しい。 60歳以上の独身男を再婚相手にすることは可能だが、男の余命や介護の可能性を考えると、結婚をあきらめるのも賢い選択だ。離婚後のリスクをヘッジするためにも、セカンド市場で自分を高く売るためにも、女性は専業主婦になることなく、会社にとどまり、夫婦で働くことがこれからは求められる。 一度しかない人生、その中で最も高い買い物は、海外旅行でも、一軒家でもなく、結婚である。その結婚で子供がはぐくまれ、社会が継続していく。子育てもできない状況で女性に子供を産ませようとするのではなく、この新しい家庭像が定着するように支援していくのが、政治の姿だろう・・・・・・


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