オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

五輪誘致がもたらす災害

2018-08-05 | 社会
多くのマスコミが五輪利権を前に沈黙し、五輪批判がタブー化しているなか、一貫し東京五輪に反対の声を上げてきた久米宏。
TBSラジオの『久米宏 ラジオなんですけど』で、五輪批判を展開した。
 
まず、酷暑問題。「いま2年後のことを考えるとゾッとする。オリンピック真っ最中なんですよね。『日本のこのシーズンは気候温暖でスポーツには最も適している』と言う大ウソで、やることになったんだからひどい。」
そして、リスナーからの東京五輪への賛否のメールやハガキ318通の意見のうち、賛成28通、反対283通だったことが報告され、意見が次々読み上げられた。
 
「復興に人も予算もまわすべき」
「いまだに原発事故収束の目処も立っていない」
「オリンピックに使うお金があったら、学校の給食費を無料にすべき」
「スポーツの大会を開くことよりも、一人でも多くの命を救うことのほうが先決」
「運送屋の観点からも、大反対。期間中の物流が混乱し、零細業者は大損」
「教員はもともと忙しいのに、学校まで五輪の啓発をやらされる」
「イベントが中止になって、売り上げが下がる」
「休日を移動させるって、関東以外は大迷惑」
「海の日を開会式前日に、山の日を閉会式翌日に移動させるって、お盆をなんだと思ってるんだ!」
「神宮球場を資材置き場にするなんて、ヤクルトスワローズをバカにしている!」
「文科省とスポーツ庁の学生ボランティアしやすいようにという通知。学生を過酷な国家行事に動員するなんて」
「人も資材も東京五輪に集中して、北海道のゴミ焼却場の建設費までが膨れあがっている」
「私、東京五輪は反対です。前の五輪の最後の聖火ランナーは、広島の方でした。全世界に原爆から復興したんだ。原子力を平和利用していこうという絶好のコマーシャルにされてしまいました。
今回も福島は復興したんだ、原発事故が起きても大丈夫というアピールに、多くの人が大好きな五輪を利用してやるのだとしか思えません」
 
久米はこうしたリスナーの反対意見にひとつひとつ賛同の意を示し、さらに踏み込んだ自分の意見を述べた。
 
「クーベルタン男爵の意思や思いを一番曲げたのは日本でしょうね。くたばれクーベルタンとね。これだけメダルが好きな国いませんからね。ほんとに五輪とメダルが大大好き」
「だいたいロスの五輪でピーター・ユベロスというやり手がいまして、大黒字を出したんですよ。あのあたりから五輪はビジネスだ、金儲けになるっていうので。今回の東京五輪招致のときにも、実は賄賂を贈った事件があったんですけど、これみんなで揉み潰したんですよ。賄賂をもらった馬鹿な息子が、どこかでとんでもない買い物をしたんですけど。どうも日本の広告代理店から出ているらしい、とんでもない賄賂なんですけど。これあっという間に握り潰されたんですけど。つまり、かなりの賄賂を払って誘致してもプラスになるのが五輪だと。金のなる木になっちゃったんですね。もちろんいちばん儲かるのは広告代理店、ゼネコンのお祭りですから、ゼネコンフェスティバルといわれていますから」
「暑いから反対って方がわりと多いんですけどね、そんなことかって思うんです。僕が言ってるのは、誰が決めたんだって。東京五輪を招致するのを。石原慎太郎氏が思いつきで言っただけで、都民がこれに対して投票したことがあるか、東京都議会が本当に招致しようかどうか議論したことがあるか。東京都民が決めたんじゃないんですよ。勝手に決めたのを上から押し付けていいのかってこと。福島の復興のためだって言ってますけど、福島の人はよろこんでいるのか、東京での五輪を。福島でやるんじゃないんですよ。福島から聖火ランナーがスタートするだけ、福島の人は何も喜んじゃいない。そのことを僕は申し上げていて」
 
久米が最も反応したのは、ある反対派のリスナーの自己紹介だった。「大変失礼ではありますが、公務員ゆえに匿名でお願いします」
 
「公務員ゆえに匿名って、それどういう意味? 公務員って「反対」って言えないの? 日本はそういう国なのね。これ財務省の役人が書類改ざんするのとほとんど同じですよ。つまり国の方針には忖度を与えなきゃいけない。国が決めたことは絶対反対できない。そうじゃないでしょ。公務員は国民に奉仕する人たちでしょ。五輪に公務員は反対できないなんて、絶対この国は、変です」
 
 
2年前、ローマが2024年オリンピック誘致から手を引いた。「夏季五輪の招致を継続することは無責任。財政難のローマでの開催は困難」と全うで賢明な判断を示した。
確かに、一時的な経済効果はある。しかし、翌年から急激に景気が悪化する。どの国でも起きている現象で、無理をしたツケが回ってくる。
日本は今の段階で予算が3倍近くに膨らんでおり、オリンピックで逆に景気悪化するのは容易に推測できる。オリンピックは新興国で開催すれば大きな経済効果がある。何もない地域に新幹線や空港、高速道路、宿泊施設などができるからだ。しかし、現在の東京は全て出来上がっている。今あるものを壊して、新しいものを作って経済効果が上がるとは考えられない。
 
それに、日本は高齢社会なのでスポーツの祭典には不向きだ。いくら元気な高齢者でも、混雑する交通網を乗り継いで見に行こうなんて言うもの好きは、稀有だろう。
 
オリンピックが儲かるという幻想は、どうやら1984のロサンゼルス大会からはじまったらしい。68年のメキシコシティ大会は政治的抗議の舞台となり、72年のミュンヘン大会は武装ゲリラによるテロ事件が起き、76年のモントリオール大会は多額の負債を抱えた。五輪の立候補地が激減する中、84年の開催地に決定したのがロサンゼルスだった。この大会から、IOCはプロ選手の参加を認め、五輪の商業化は加速していく。商業化路線を進めたのはサマランチ会長だった。しかし、もともとのオリンピックは商業主義とは無縁だった。五輪は都市の再生のためでも経済成長のためでもない。国民に感動と記憶を残すためでさえない。五輪の開催目的とは、オリンピズムへの奉仕であった。五輪は国家間の競争ではなく、個人参加が基本だと五輪憲章には明記されている。五輪が国別対抗戦的になったのは1908年の第四回ロンドン大会からで、ブランデージら、70年代までのIOC会長は五輪がナショナリズム高揚の場となることを懸念していた。したがって今日、国ごとのメダルの数を比較したり、まして日本のように〈政府が自国のメダル獲得数の目標を掲げる〉など言語道断であった。東京五輪は政治家や官僚や大企業が利権の内部調整に終始するだけの巨大イベントになりさがっている。さらに、福島と言う災害を経済活動に利用し、資本主義的な収奪システムを再編し、格差の構造を強化するための、格好の事業でもある。
 
賢いオリンピック期間の過ごし方は日本を脱出して海外のリゾ-ト施設でゆっくり過ごすのがよさそうだ。
そんな元気もお金もない方は、レンタルビデオで大量のDVDを借りて、映画の名作やドラマ、音楽ビデオを見る。短期で習い事を始めたり、趣味に打ち込むのもいい。
テレビを見て、商業主義に侵された感動に酔い、物言わぬ諦めの国民になることだけは避けたいものだ。
 
2018年4月25日付のジャパン・トゥデイ 「2020年のオリンピックは、東京の商工業に災害をもたらす」。
週刊金曜日が、2016年7月15日号の「呪われた東京五輪」に続いて、2018年4月20日号の「東京オリンピックなんて、大っ嫌い! 最後の一人になっても2020年開催に大反対する理由」と題して特集を組み、「反東京オリンピック宣言」を行った。2016年の特集では、東京オリンピックが腐敗の温床になることを警告したのに対して、今回の特集は、経済災害を警告したものになっている。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿