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シリア空爆はイスラエルの要請

2013-09-05 | 政治

【エルサレム=山尾有紀恵】オバマ米大統領がシリア攻撃に議会承認を求めたことに対し、米国と事実上の同盟関係にあるイスラエルが不満を募らせている。米国の優柔不断な姿勢が、シリアの背後にいる宿敵イランを勢いづかせると見るからだ。

 オバマ氏の8月31日の声明発表を受け、極右政党出身のベネット経済貿易相は、自身のフェイスブックで「国際社会のシリアに対するためらいは、イスラエルが自身しか頼りにできないと改めて証明した」と批判。他の閣僚からもオバマ氏への批判が出た。
 米軍がシリア攻撃に踏み切れば、イスラエルへの報復攻撃が予想される。一方、化学兵器を使ったとされるシリアに「懲罰」を与えなければ、中東での米国の影響力が弱まり、シリアと連携するイランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどへの抑止力が低下。敵対するイスラエルが危機にさらされる。
 

[エルサレム 2013年5月5日 ロイター] イスラエルが3日と5日にシリアの首都ダマスカス近郊で行った空爆は、他でもないイランを見据えたものだった。イスラエルにとっての「レッドライン(越えてはならない一線)」が侵された場合、単独でも軍事行動に踏み切る用意があることを見せ付けた攻撃だと言える。

 イスラエルや西側の情報筋によると、3日と5日の空爆では、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに輸送される予定だったイラン製ミサイルが攻撃された。
こうした武器は、将来紛争が起きた場合、イスラエルにとっては大きな脅威となる。ヒズボラは他にも約6万発のロケット弾を保有するとみられている。
ヒズボラがいつでも攻撃を仕掛けてくる可能性はあるが、イスラエルの当局者が特に懸念するのは、同国がこれまで示唆しているイランの核施設への攻撃を行った場合、ヒズボラが代理報復として大規模なミサイル攻撃を行うことだ。イスラエル連立政権の一翼を担う中道政党「イエシュ・アティド(未来がある)」のOfer Shelah氏は、「われわれには明確なガイドラインがある。形勢を一変させる武器はヒズボラの手に渡らせない。それを阻止するために必要なことは何でもやる」と強調した。
 イスラエルはイランの核兵器開発を阻止するために単独攻撃も辞さないとされている。
イスラエル軍の元情報部長アモス・ヤドリン氏は、今回のシリア空爆はイランに対して、ネタニヤフ首相が虚勢を張っているわけではないという強いメッセージになったと指摘した。
オバマ大統領は4日、スペイン語ネットワーク、テレムンドとのインタビューで、イスラエルは高性能兵器がヒズボラに譲渡されることから自国を当然守る必要があるとコメントした。
 ヒズボラの封じ込めは、イスラエルにとって党派の垣根を越えて国民を結束させるコンセンサスだ。イスラエルの占領地であるゴラン高原では、シリア内戦の流れ弾が着弾することもあるが、ネタニヤフ首相はこれまで、シリアに軍事介入する考えを示していない。シリア問題で一方に肩入れすることには問題も多い。イスラエルは、反体制派メンバーの10人に1人が「ジハーディスト(イスラム聖戦士)」だとし、アサド政権崩壊後は自分たちに銃を向けるとみている。イスラエルの目的はシリアの混沌の中で、ヒズボラの力が強まるのを確実に阻止することだ。(ロイター日本語サービス 原文:Jeffrey Heller、翻訳:橋本俊樹、編集:伊藤典子)

 イスラエルにとってシリアは長年の宿敵だが、アサド政権が倒れれば今度は「反イスラエル勢力」が勢いを増す恐れがある。どっちに転んでもイスラエルは米国を戦争に引きずりこまなければ四面楚歌の厳しい状況だ。
 「危険なのは、秩序ある権力の移譲ができないほどシリアの情勢が悪化することだ」と、イスラエルの情報機関モサドの元長官エフライム・ハレビは言う。「そうなったら、化学兵器を含む大量の武器がヒズボラに渡る危険が生じる」
 もう1つの懸念は、国家としてのシリアが崩壊し、権力の空白をハマスやヒズボラのような「非国家勢力」が埋める可能性があることだ。イスラエルはこれまでに、シリアと3度の全面戦争を経験している。67年にイスラエル軍が占領したシリア領ゴラン高原をめぐっては、今もアサド政権と対立が続いている。シリアは、反イスラエルを掲げるヒズボラに武器供与などの支援を行っているとされる。
 ヒズボラは06年の戦闘で、イスラエルに数千発ものロケット弾を撃ち込んだ。もし化学兵器を手にすればヒズボラの兵力は増大し、新たな戦闘の可能性も高まるだろう。同時に、アメリカがテロ集団と分類する非国家勢力としては初めて、大量破壊兵器を大量に入手することになる。
 大量破壊兵器の保有を認めていないシリアだが、専門家によれば化学兵器を搭載した砲弾とミサイルを大量に保有しているという。欧米の情報機関は兵器の保管場所や状態を把握しておらず、武器の流出を止めるのは難しいと、核兵器問題専門家のレナード・スペクターは言う。「武器庫がどこにあるのか分からない。武器を破壊したり、取り上げたりする確実な方法はない」
 
 取り沙汰されている空爆の理由は「シリア政府軍が化学兵器を使って無実の市民を大量殺害したから」だが、シリア政府軍が化学兵器を使ったという確たる証拠を、米英仏は持っていない。8月21日に市民への化学兵器による攻撃が行われたとされる根拠は、ユーチューブなどに、被害者を撮影したとされる映像が掲載されたり、現場の地域(Ain Tarma、Zamalka、Jobar。いずれも反政府派が強い)の病院に医薬品などを供給している「国境なき医師団」が、現場の病院の医師から、化学兵器の被害を受けたと思われる多数の市民を手当しているとの報告を受けたりしたことだ。
 しかしこれらの証拠は、化学兵器を使ったのが政府軍であるということの証明になっていない。証拠とされるユーチューブの動画の中には、事件の前日の8月20日にアップロードされたものもあり、ユーチューブのサーバーがある米国とシリアとの時差を考えても、動画が事件前にアップされていたという指摘がある。
 また、現場の「国境なき医師団」がシリア政府軍の攻撃であると証言したような報道があるが、実のところ医師団は「化学兵器攻撃の可能性が高いが、誰が攻撃してきたかはわからない」と言っている。

 シリアでは今年3月にも化学兵器による攻撃があり、シリア政府や、同政府を支持するロシアなどは「反政府勢力が化学兵器を使った」と主張している。シリア政府軍は化学兵器を持っているが、反政府勢力は持っていないと、当初思われていた。だがその後、トルコ当局が、トルコ国内のシリア反政府勢力の拠点で、化学兵器の材料を押収するなど、反政府派による犯行の可能性が高まった。8月中旬、国連の調査団がダマスカスに到着した。その数日後の8月20日、調査団が滞在するダマスカスのホテルから15キロしか離れていない地域で、化学兵器による攻撃が起きたとされている。アサド政権が、国連の調査団が到着した直後のタイミングをわざわざ選んで、調査団の滞在場所からすぐ近くで、一般市民を化学兵器で攻撃するとは考えにくい。シリアの内戦は今年に入り、アサドの政府軍が優勢になり、政府軍は、各地の反政府派の拠点を奪還している。空軍を持っている政府軍が、自分らが優勢な時に、非効率的な化学兵器を使うとは考えにくい。反政府派が、これまでも自分らに有利な偏向報道をしてくれてきた米欧のマスコミが「政府軍の仕業だ」と決めつけてくれるとの思惑で、国連調査団の目前で化学兵器を使ったと考える方がわかりやすい。

 事件後、米英マスコミの多くは、政府軍の仕業と決めつけて報道し、化学兵器による死者の数を「60人」「600人」「1400人」と、つり上げて報道した。事件直後は米国政府(国務省報道官)も「誰が化学兵器を使ったかまだわからない」と慎重姿勢だったが、ユダヤ人が牛耳っているアメリカのマスコミは政府軍の犯行と決めつけていた。03年の米軍イラク侵攻の直前、米英マスコミが、実は存在していないだろうと最初からわかっていたイラクの大量破壊兵器の脅威をでっち上げ、競って報じていたのとまったく同じだ。

 FT紙は「イラクへの侵攻は、イラクの体制を転覆する意図で行われたが、シリアへの侵攻は、独裁のアサド政権を倒そうとするシリア人の民主的勢力を支援するものだ。イラクとシリアはまったく意味が違う」という趣旨の記事を載せている。 今のシリア反政府勢力の参加者のほとんどは、シリア国民でない。他のアラブ諸国やパキスタン、欧州などから流れてきたアルカイダ系の勢力で、トルコやヨルダンの基地などで米欧軍などから軍事訓練を受け、カタールなどから資金をもらっており、事実上の「傭兵団」だ。外国勢力が傭兵団を使ってシリアに侵攻している。「シリア市民の決起」とはまったく違う。シリアの一般の国民の多くは、アサド続投で良いから、早く安定が戻ってほしいと考えているのではないか。

 シリア反政府勢力が良くない存在であることは、米軍のデンプシー参謀長も明確に認めている。デンプシーは「シリアの反政府勢力は過激なアルカイダが多く、彼らを支援して政権をとらせることは、米国の国益にならない」と断言している。
 
[アンマン/ロンドン 2013年6月16日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は16日、欧米諸国によるシリア反体制派への軍事支援について、「人間の内臓を食べるような兵士に武器を供与してはならない」と批判した。米国は先週、シリア政府軍が神経ガスを使用し「レッドライン(越えてはならない一線)」を越えたとし、反体制派への武器供与を決定。
 プーチン大統領はキャメロン英首相との会談後、「敵を殺害するだけでなく、カメラの前で遺体を切開し内臓を食べるような集団を支援する必要はない」と指摘。反体制派への武器供与は「数百年にわたり欧州で伝えられてきた人道的価値観とは無関係だろう」と述べた。内戦が続くシリアでは先月、反体制派の司令官が敵対する兵士の遺体から内臓を取り出して口にする映像が公開されており、プーチン大統領はこの映像に言及したとみられる。
 

 化学兵器を使ったのは反政府勢力だったのかもしれない。それが国際的に暴露されると、米英が支援してきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまう。反政府勢力の犯行を隠すため、米国は空爆を開始し、真相をうやむやにしつつ、シリアの空軍力を壊滅させ、混乱のうちに反政府派を反攻させ、アサド政権を倒すまで持っていきたいという見方もできる。

 空爆は使用禁止の化学兵器を使った懲罰の行使だとアメリカ政府は述べている。だが真の目的は、シリア空軍の戦闘機を、空爆によって破壊し、反政府軍に対するシリア軍の優勢を壊すことだろう。政府軍の戦闘機やヘリのほとんどを破壊すれば、内戦は地上軍どうしの戦いになる。米英などは最近、シリアの南隣のヨルダンの基地を使って、シリア反政府派を軍事訓練し、シリアに戻すことに力を入れているらしい。アサド政権を倒しても、またエジプトの二の舞である。その混乱に乗じてイスラエルはシリア侵攻を画策しているのではないだろうか?そうでも考えなければ、シリア空爆の意義は皆目見当がつかない・・・・・
 
 シリア空爆は化学兵器使用に対する懲罰だなどと言う嘘に惑わされてはならない。中東でのアメリカの行動の背後には常にイスラエルが存在する。国際法に基づく人道的軍事介入などそもそもあり得ない話なのだ。
 
 悪事を一緒にやった者同士は悪事が大きいほど、強い運命共同体を形成する。イスラエルが裏にいて米英を動かす。英国が悪の運命共同体から脱落した。米国は新たな悪の相棒を求めている。日本がその相棒になる日も近いのかもしれない・・・・・

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