オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

アンチエイジングのリスク

2014-04-06 | 健康

日本人の寿命はどんどん延びており、世界で最も長寿の国になっている。しかし、単に長生きすることではなく、「ぴんぴんころり」というように、健康で長生きし、最期は苦しむことなくころりと死にたいというのが願望である。
 その為には、「老いを遅らせ、体をできるだけ若い状態に保つ」ようにしなければならない。その若返りを求める願望に応えようというのが、アンチエイジング(坑老化)医学で、盛んなのはアメリカだ。歴史的には、欧米では20~30年前から行われるようになり、最初に行われたのは女性ホルモンを大量に投与することだ。更年期障害のひどい女性を治療するという方法だが、若返りの薬としても使われるようになった。男性についても同様で、男性ホルモンを投与すると体が若返るだけでなく、精神的にも意欲が増し元気になる。
 しかし、女性ホルモンを大量に投与すると乳癌や子宮癌、男性ホルモンは前立腺癌になる危険性が高くなる。そこまでは周知の事実なので、日本ではよほど更年期障害がひどくならないとホルモンは投与されない。

 
 しかし、アメリカの医療制度は日本と違い、ホルモン剤が一般に売られている。アメリカで使われている女性ホルモンの量は、1人当たり日本の2百倍とも言われている。そして昨今話題になっているのが脳下垂体から出る成長ホルモンだ。以前は、子供が成長の際、大事なホルモンであって大人になれば、あまり大切な役割はしないと思われてきた。ところが、この10数年で、成長ホルモンが大人になっても大切な役割を果たしていることが分かってきた。脳下垂体に癌ができた時には、脳下垂体を手術で取るか、放射線で潰してしまう。この施術を受けると、50才の人が1年もしないうちに頭髪は抜け、目は白内障になり、歯はボロボロになり、老化が進んでしまう。そうしたことから、成長ホルモンは老化を防ぐホルモンだということが分かってきた。
 
 そして、この成長ホルモンは、遺伝子工学で試験管の中で大量に作ることが出来、その成長ホルモンを70才以上の男性に注射して、生理的変化を調べると、筋力が若い時の状態に戻り、体の生理学的状態が若返ってくる。それだけでなく、脳のβ-エンドルフィンの分泌が盛んになり、幸福感をもたらし、気分も明るくなる。成長ホルモンは性ホルモンと違って副作用がないということで、アメリカでは多く使われている。日本では認可されていない。
 
 ところがである。この成長ホルモンも寿命を縮める可能性があると言う研究結果が出た。このホルモン値が上がると、病気に対する体の自然免疫機能が低下する恐れがあるというのだ。成長ホルモンはインスリン様成長因子(IGF-1)及び、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を生み出すのだが、90代半ばの被験者184人を11年間調査した結果、血中のIGF-1の値が低い人の方が長生きできる可能性が高かった。1mmあたりのIGF-1の量が1ng減る毎に、人は1週間長生きできるというデータに加え、がんの経験者である場合、その傾向は更に顕著だった。元がん患者で血中のIGF-1の値が低い人が、調査3年目に生存していた確率は75%だったのに対し、IGF-1が平均より高い人は25%と大きな開きがあった。確かに若さを保つにはヒト成長ホルモンは不可欠だが、高齢者にとってヒト成長ホルモンの増加は、加齢に伴う病気に悪影響を与えかねないと言うことだ。
 50歳~65歳の中高年にとっても、IGF-1の値の高い人はがんの進行が4倍速く、18年に及ぶ調査期間中の死亡率が75%も高かった、と言う別の研究結果も発表されており、アンチエイジングホルモン頼みの若返りはもろ刃の剣と言えそうだ。
 
 「もうろくしてシワシワになって長生きするか、心身ともに活動的なまま若くして逝くか…」 究極の選択になりそうだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿