オータムリーフの部屋

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超格差社会の行方

2013-11-12 | 政治

11月1日から、米政府の貧困救済策(食料配給券制度)であるフードスタンプ(補助栄養支援事業、SNAP)の予算を削減した。削減は、フードスタンプの予算総額764億ドルのうち7%弱にあたる50億ドル。米国では近年、実質的な失業者の急増が続き、フードスタンプの利用者が、リーマン危機直後の08年の3千万人から、今は5千万人弱まで増えた。フードスタンプの減額で足りなくなった食料を補おうとする人が、民間の貧困救済所に早朝から長蛇の列をなす事態になっている。

 民間の救済所は、企業などからの寄付金で運営されているところが多い。リーマンショック以来、寄付の余裕がない企業が多く、救済所も財政が悪化している。毎週土曜日に食糧支援を行うニューヨークの救済所では、午前2時から人々が並びはじめ、数百人の行列になるという。同救済所の行列に並ぶ人々は、パートの仕事しかなく収入が足りない勤労者、高齢者、シングルマザーなどさまざまで、リーマン危機以来、生活が悪化し続けている人が多く、昨今の米国の景気回復の恩恵をほとんど受けていない。
 フードスタンプ事業を縮小させようと画策する米国の共和党系マスコミは、フードスタンプを受給した人が現金に替えたり酒を買ったりする不正を報じている。しかし、減額後の民間救済所への殺到ぶりはフードスタンプがないと飢餓に直面する人が多いことを示している。

 米政府の財政削減策を「財政の崖」と呼ぶのをもじって、フードスタンプの減額は「飢餓の崖」(ハンガークリフ)と呼ばれている。世界最強・最裕福な、紙幣を刷るだけで巨万の富を創造できる米国で、飢餓が急拡大していることは、対米従属一辺倒に慣らされた日本人にとって信じがたいことだ。だが現実の米国では、フードスタンプ受給者は10年で倍増している。
 共和党は、「小さな政府」作りの一環として、フードスタンプなど福祉予算の削減をこれからも続けていく。

 米当局が発表する統計上の失業率は横ばいだが、毎月あらたに失業する人の数は、今年7-9月期が前年同期比25%増となっており、実質的な失業者数が急増している。統計上、失業率が増えないのは、職探しをあきらめて統計上の「失業者」の枠から外れていくからだ。米国で貧困水準以下の所得しかない人の数は4970万人、国民の16%に当たる。失業し、中産階級から貧困層に転落する米国民にとって、フードスタンプと並ぶ重要な救済策が、失業保険だ。失業保険金も、来年から支給対象が縮小する。米議会は、失業保険の拡大策の延長を検討していたが、小さな政府を求める共和党の反対で実現しなかった。

 長期化する失業増、フードスタンプと失業保険金の減額などが重なって「悪夢の連鎖反応」が起こり、貧困層に転落した人々の絶望感が増し、いずれ全米各地で暴動が起きるという警告が、民間の貧困救済所運営者の間から発せられている。

 米国で福祉が縮小し、中産階級が貧困層に転落して、大多数の米国民の生活苦がひどくなるのは、共和党のせいにされることが多い。だが実際のところ、民主党のオバマ政権も、福祉の混乱や経済の疲弊に拍車をかけることをやっている。国民皆保険をめざして新設された官制健康保険制度「オバマケア」の申し込みシステムの混乱もその例だ。現在5万人未満が登録したが、目標は60万人だと言う。現在加入している保険が条件を満たさないとして、保険会社から解約通知を受ける例も相次いでいる。オバマ大統領はこれまで、オバマケアの下でも、加入済みの保険は継続できると約束していた。保険の解約に直面しているのは主に自営業者で、個人で保険に加入している国民。現在加入している保険がオバマケアで規定されている予防医療やメンタルヘルスなど「必須の」サービスをカバーしていない場合、解約を迫られる恐れがあるという。
 オバマケアの開始後、米企業は、続々と従業員用の健康保険制度を縮小している。経費がかかる自社専用の健康保険制度をやめて、社員がオバマケアに入るよううながしている。
「無保険者を減らし、国民皆保険を実現する」と銘打って開始されたオバマケアが、無保険者を増やす方向に事態を動かしている。
 保険料が割高で、若者の多くも加入したがらない。健康保険制度は、病気になりにくい若い人が多く入ってくれないと、保険料がさらに割高になり、ますます若い人が入りたがらなくなる。ギャロップの世論調査によると、無保険の人々も、加入希望者は22%だと言う。オバマケアは国民皆保険制度なので、他の健康保険に入っていない米国民は全員オバマケアに入る義務がある。しかし条件が悪いので若者や無保険者が加入を希望しない。もっと条件の良い企業の健康保険に入っている人々は、オバマケアができたことで企業の健康保険廃止が増え、条件の悪いオバマケアへの移行を余儀なくされる。オバマケアに対する米国民の不満は今後さらに増えそうだ。オバマケアは看板と裏腹に米国民の福祉を悪化させている。

米国でも格差社会が拡大し、社会不安が増大、暴動が発生してもおかしくない状況だ。日本の生活保護バッシングと同じように困窮者から生活の糧を奪う政治家はどこの国にもいる。

日本では大きく報道されないが、中国各地でも暴動が多発している。急激な経済成長が社会的な矛盾を生み、都市と農村、富裕層と貧困層の格差が拡大している。また、共産党官僚の腐敗・横暴が深刻化し、多くの汚職事件が摘発されている。2000年代には、中国政府の発表で、毎年5万件ほどの「集団事件」と呼ばれる官民衝突や集団抗議等が発生した。平成17年(2005)には年間8万7000件、発生したと発表された。その後、政府は暴動件数を発表しなくなった。これは発生件数が一層増加しており、都合の悪い数字は出さないものと見られる。2008年リーマン・ショック、欧州債務危機等による世界経済危機の影響で、中国では失業や賃金不払い等により生活を破壊された国民が多くなった。 中国共産党は、政権を維持するには、どうしても成長率8%を維持しなければならない。年8%以上の経済成長率を維持していたときでさえ、年間数万件の暴動が発生していた。成長率が8%を切ると、1億人以上の労働者に仕事を与えられなくなると言う。 胡錦濤政権の末期となった平成23年(2011)には、暴動・騒動事件の発生件数が18万件を超えたという。これは毎日全国どこかで約500件が発生している計算になる。胡政権最後の年には国家予算に計上された「治安維持費」は国防費を上回ったと言う。

 人民日報系の雑誌「人民論壇」が24年10月に実施した意識調査で、回答者の70%が「特権階級の腐敗は深刻」とし、87%が特権乱用に対して「恨み」の感情を抱いていると回答した。生活に困窮し、恨みの感情を強めた民衆は暴動に走る。それは共産党の政権基盤が危うくなることを意味する。
 それを防ぐ手っ取り早い方法は、対外的な強硬政策を推し進めることだ。国民の目を外に向かわせることで、不満感情をそらす。尖閣問題に対する強硬な姿勢を見れば、意図は明らかである。中国は、平成元年(1989)から猛烈な軍拡を続けている。また共産党政府は、平成5年(1993)以後、江沢民のもと反日愛国主義の教育を行なった。国民は、統制の中で、日本への憎悪と敵愾心をたきつけられている。それが、過激な反日的行動となって現われている。

 社会不安は国民の経済的格差により醸成される。そして小さなきっかけで意図的に統治者による侵略戦争への道を歩むことになる。日本でも中国の反日教育に対抗する形で法整備を整え、戦える国家を樹立、道徳教育により愛国心を育て、某国と戦う国民を育成することを着々と進めているようだ。そして戦争は当事国は疲弊するが、自ら戦わず支援する国は富んで超大国となる。その甘い汁を吸おうと画策しているのはどこの国だろうか?

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