■2012年7月17日 日経
薬で発作を抑えにくい難治性てんかんの多くを占める「側頭葉てんかん」は、子供のころに風邪やインフルエンザの発熱で起こるけいれん(熱性けいれん)によって脳に興奮しやすい神経回路が形成されるのが原因だとする研究結果を、東京大のチームが15日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。
これまで、側頭葉てんかんと熱性けいれんの関連は指摘されてきたが、因果関係や仕組みははっきり分かっていなかった。チームは新たなてんかん予防法につながる可能性があるとしている。
チームはネズミの仲間のラットの脳の一部で、海馬と呼ばれる部位を切り取って観察。脳の神経細胞はできた場所から成長に伴って移動するが、生後約10日に熱性けいれんを発症させたラットでは、成長過程の未熟な神経細胞が、できた場所の近くにとどまってしまうことを発見した。こうして残った細胞が興奮しやすい異常な神経回路を作り、てんかん発作を起こしやすくしていた。
さらに、未熟な神経細胞が興奮しなくなる薬と投与すると、てんかん発作を予防できる事をラットの実験で確かめた。
チームの池谷裕准教授によると、乳幼児の熱性けいれんの治療で使われる薬の中には未熟な神経細胞を興奮させる可能性があるものがある。池谷准教授は「未熟な神経細胞が興奮すると、本来とは別の場所に細胞がとどまる原因になり、将来のてんかんの危険性が高まる恐れがある」と指摘している。
*側頭葉てんかん:成人に発症することが多い
☆ポイント
・脳の神経細胞はできた場所から成長に伴って移動する
・熱性けいれんを発症させたラットでは、成長過程の未熟な神経細胞ができた場所近くにとどまってしまう
・とどまってしまった未熟な細胞が興奮しやすい異常な神経回路を作りてんかん発作を起こしやすくしていた
・乳幼児の熱性けいれんの治療で使われる薬の中には未熟な神経細胞を興奮させる可能性があるものがある
・未熟な神経細胞が興奮すると本来とは別の場所に細胞がとどまる原因になり、将来のてんかんの危険性が高まる
・未熟な神経細胞が興奮しなくなる薬を投与すると、てんかん発作を予防できる
☆メモ
熱性けいれんによっててんかん発作の回路が作られるわけですが、難治性てんかんになるかどうかは、乳幼児の熱性けいれんの治療薬の使用の有無が一つの原因だという事なんですね。その薬が何なのかはわかりませんが、乳幼児に熱性けいれんの薬を使用する時には、副作用をしっかり確認する必要がありますね。
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