WBA・WBC世界ミニマム級王座統一選、井岡一翔対八重樫東 健闘をたたえ合う八重樫東と井岡一翔=ボディメーカーコロシアム
視界が遮られるほどに両目を腫らした敗者に涙はなかった。「なかなかひどい顔ですね。試合後の両方の顔を見れば、(勝敗は)わかる」。壮打ち合いに敗れた八重樫はあまりにも潔かった。
力のこもった左フックが井岡の顔面をとらえ、何度もぐらつかせた。8回終了時の判定でリードされていることを知り、「(前に)出なきゃしようがない」と攻めの姿勢はさらに勢いを増す。井岡の地元である大阪の観客からの「かずと」コールは、いつしか「あきら」コールへと変わっていた。
だが、井岡のパンチで1回に左目、3回に右目を腫らし、回を増すごとに相手との距離感がつかめなくなった。左ジャブの連打を何度も浴び、ポイントは伸びない。激戦後、目の腫れがなければと問われた八重樫は「そういうことは言っちゃだめ。たらればはない。それが勝負」と言い切った。
井岡優勢の声が多かった中、統一戦を受けたのは強い相手を倒すことに自らのボクシング人生を懸けているからだ。だからこそ悔いがない。「ベルトはなくなったが、それでもいいと思って、勝負をかけていた。またイチからやり直せばいい」-。(産経新聞)