勝手にお喋りーSanctuaryー

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シューン・ブライドより先に

2009-04-20 | 映画のお喋り
まだ小さかった頃、ディズニーのシンデレラが怖かった。
日本のアニメに慣れ過ぎていたから、あの顔が意地悪オバさんにしか見えなかった。
お陰で私は、シンデレラ・コンプレックスを免れることに…。

その後もいつか王子様が現れるより、もっといいことがあると思う人間に育って行った。
誰かに縛られて生きるより、自分一人の方が気楽だと、ついつい思ってしまってきた。
ま、その話は置いておいて。

幸せな花嫁になれると言う「ジューン・ブライド」の語源は、ローマ神話から来ている。
ジュピターの正妻ジュノーは結婚・出産の神で、英語の6月の元になっているからだ。
その女神の名をもらった一人の少女。
彼女の魅力に、すっかりやられた。

JUNO/ジュノ
2007年 アメリカ
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン

ちょうど「奇跡のシンフォニー」のサントラを聞きまくっている時、またしても音楽が素敵な映画に出会ってしまった。
もうサントラを買う余裕はないので、しばらくお預けか…。

16歳で妊娠してしまったジュノ。
ドラッグストアの店員にからかわれ、言い返すあっけらかんとした態度に惚れる。
こんなテーマなのに重くならず、かと言って無責任でもないジュノは魅力的だが、さらに台詞が全部魅力的。

アメリカでは未成年が産んだ子供を養子に出すことは、かなり当たり前の選択らしい。
子供を養子に欲しい夫婦は行列を作って待っているし、この映画でももらう側の妻が、家中をきれいに掃除してジュノの訪れを待つシーンがある。
気に入ってもらいたい一心、子供が欲しい一心なのだ。
需要が多くて、供給がおっつかないってすごい。
(さすがに薬中や犯罪者の産んだ子供は貰いたくないから、普通の家の娘の子なら養子先は選び放題なんだろうな)

ジュノもいったんは中絶を考えるが、結局生んで養子に出す決断を下す。
その時の周りの反応もビックリ。
さすがに父親と、義理の母の理解ありすぎには?だが、学校だって退学になるでもないし、極力内緒で中絶オンリーの日本人にはある意味羨ましい。

赤ん坊の父親は同級生で、いかにも普通でまじめな男の子。
この子の反応は、そんなもんなんだろうなって感じ。
実感わかないから、君の好きにすればいいよ、なんて言ってしまう。

養子をもらう側の夫婦は、いかにもセレブだが、どこか危うい感じが付きまとう。
TVドラマシリーズ「エイリアス」のシーズン5で、夫ベン・アフレックの子を妊娠しながら、妊婦のスパイ役を演じていたジェニファー・ガーナーが、生真面目で面白みに欠ける妻を演じる。
逆に夫は、ロックバンドで売れる夢を諦めて、CMソングで稼いでいることに不満を待つ大人になりきれないガキ。
こんな夫婦がうまくいくわけないじゃん、と思っていたら案の定…。

ストーリーの進み具合から、想像できる結末がいくつかある。
ジュノが最後に自分で育てる決意をする自立した女への成長物語になる。
養子先の夫婦がうまくいかず、家族ぐるみの子育てをするファミリーものになる。
頼りない彼氏が奮起して、彼女の結論に異議を唱えるラブストーリーになる。

この予想が当たっていないところが、脚本の素晴らしさだ。

さらに、ジュノが選択した結果への伏線がちゃんとできてる。
赤ちゃんを渡す人への手紙。
自分の産んだ子供に対する責任を、感情でなく理性で考えた結果だ。

そして彼氏へのキャンディーの山。
さすがにアメリカの学校でも、ジュノは周りから冷たい視線を浴び続ける。
バカな男なら、彼女とは何の関係もないふりで知らん顔になるだろう。
だけど、彼の彼女に対する態度に変化がない。

変化がないと言うのはある意味凄いことだ。
16歳で、一度だけやっちゃった彼女から、子供出来たって言われたら、変わらないでいられる自信のある男ってどれほどいるだろう。
まず、逃げちゃうね、たぶん。

ジュノもブレーカーも、自分たちの若さを、そして何より無力であることを知っている。
だから大切な命を、ちゃんと面倒を見られる人に託すのだ。
そして二度と同じ過ちを繰り返さないことを自分たちの唯一の贖罪にする。

その決意がラストシーンに表れていた。
あのオールディーズみたいな、朴訥な、単調な、ロマンティックなデュエット。
16歳が本来経験すべき恋愛を、今から始めようとしている二人の歌だ。
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