ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

チャーリー・ラヴェット【古書奇譚】

2016-03-09 | 集英社

“シェイクスピアは本物か!? それともこの古書が偽物なのか!?
稀代の奇書『パンドスト』と、亡き妻の思い出を胸に抱き、気弱な古書商の冒険がはじまる”
…帯の文章、そのとおりの本でした。

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 古書奇譚

 著者:チャーリー・ラヴェット
 発行:集英社
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あんまりそのとおりだったので、「そうでした」という感想しか残らなかったという、リハビリ本の1冊。
古書商の生きる時代と、古書の生まれた時代、その間を行き来しながら進む物語は読みやすく、するすると進みます。
導入部分が好きでした。
古書商ピーターが、亡き妻アマンダとそっくりの肖像画を古書の中に見つけるというはじまり。
18世紀の古書のページの間に、愛する妻を見つける驚きと不思議に、さて、これから「冒険」という言葉にふさわしい、波瀾万丈な物語が展開するのかと、ワクワクしました。

…ワクワクしすぎたんだと思います。『冒険」という言葉に引きずられて。
もっと普段通りの気持ちで読めばよかったのに。
そうすれば、ピーターとアマンダがどんなふうに愛を育んだのか、奇書『パンドスト』はいかなる来歴の物語を明らかにしていくのかをもっと入り込めたはずなのに、読了直後はなんだか物足りなさを感じてしまいました。
それがしばらく前のこと。
今、書くために改めて思い返してみると、ああ、そうか、といまさらながら思い当たることがあり、記憶より面白い作品だったのかもしれないと思ったりします。

印象に残ったのは「ヘイ・オン・ワイ」の地名が出てきたこと。
アマンダの肖像画を見つけるのが、古書の街ヘイ・オン・ワイの本屋さん。
以前読んだ「古書の聖地」を思い出しました。
こうして、出会った本と本がつながると、なんだかとても嬉しいです。


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