『夜市』で、異界の市に迷い込んだ兄弟を描き、日本ホラー小説大賞を受賞した著者の第2作。
雷の季節の終わりに
著者:恒川光太郎
発行:角川書店
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地図にない土地「おん」。「おん」は「穏」です。
通常の日本を含む世界は空間的にずれたところにあり、穏からみれば隔絶された外の世界として認識されています。
くっきりと引かれた内と外の境界線。
穏には、穏だけの風土、風習や掟が色濃く残っています。
冬の終わりに雷鳴とどろく季節があり、風葬が行われている土地。
物語は、雷の季節に家の中でじっと息を潜める幼い男の子の描写から。
海からやってくる雷雲が頭上にとどまり続ける間、家に籠もる穏の風習。
雷の季節は鬼の来る季節、吹きすさぶ風は人に憑くといわれ、風の魔物は「風わいわい」と呼ばれています。
その雷の季節を穏の人々は耐えて春を迎え、幼い子供も少年になる頃、事件は起こります。
岩山で隔てられた先は墓町と呼ばれる廃墟。
穏の門を守る槍を持った男。
彷徨い来る死人の魂。
人に憑く黒い巨鳥。
魔獣の棲む平原。
とにかく、雰囲気のある設定です。
いつの時代からか、世界から自らを切り離した穏という土地は、日本でありながら日本ではない、別の流れに進んだ日本の小さな都市。
よく読むと、曖昧な部分も多いのですが、読まされてしまいます。
知らないうちに、たりないところを勝手にイメージして読んでしまっているというか。最後は収まりすぎるほど収まっています。
私の読書の原点はやはり学校の図書館。
そこからそのまま延長した線の上にあるような物語です。
今、この場所から、少しずれたところで起こる出来事。
もし、小学生の頃にこの本を読んでいたら、本当にどきどきしただろうと思います。
明るい物語ではないので、わくわくはできませんし、少年少女向けというわけではありませんが。
『夜市(よいち)』や、『夜市』に収録されている『風の古道』と地続きの物語のような気もします。
価値のあるもの、ないもの、あらゆるものが売買されている夜市には、きっと穏で創られたものもあったでしょうし、いつもとは違う場所へ続く古道を知っている人たちが穏を訪れる商人たちなのかもしれません。
夜市
著者:恒川光太郎
発行:角川書店
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◇日本ホラー小説大賞受賞作です。直木賞候補にもなったとか。
>私の読書の原点はやはり学校の図書館。
この間、中学校の国語の授業を参観しました。
内容は・・
それぞれの生徒が自分が図書館で読んだ本3冊と似たような本と読んでいた人同士でグループを組み、自分たちの読書傾向を一言で表すような言葉を決める。
そして、その言葉をキーワードに、グループごとにお勧めの本を発表する・・・というもの。
名前が上がる本は、自分が中学の頃に読んだ古いものと、新しいものも含めて自分のしらない本が半々ぐらい・・・でも、新しい本でも、あらすじを聞くと、どこか懐かしいものを感じました。
私の原点も、やはり、学校の図書館ということなのでしょうか・・・
ぜひ、どうぞ~。楽しんでいただけると思います、たぶん。
>中学校の国語の授業
へぇ、参観日だとおもしろいことをしてくれるのですね。
学校の図書館は大事ですよね。やっぱり。無理強いはいけないにしても、本で知ることってとても多かったと私自身思います。
すずめの生態とか…。(小学校時代の愛読書)
>すずめの生態とか…。(小学校時代の愛読書)
私、ウミウシとアメフラシの写真が満載の図鑑がお気に入りでした♪
図鑑は楽しいですよね~。図書館には最近ご無沙汰ですが、以前通っていた頃は貸出禁止の図鑑や工芸品の全集とかばかりみていました。
綺麗で楽しいし、何より、なかなか手元に置けませんものね~。