これがまた、思い悩む主人公で…。
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通訳
著者:ディエゴ・マラーニ
訳者:橋本勝雄
発行:東京創元社
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『ジュネーヴの国際機関で通訳サービスの責任者を務めるフェリックス・ベラミーは部下から報告を受けた。16カ国語を操るひとりの通訳が、同時通訳中に異常をきたすという。問題の通訳は、「全生物が話す普遍言語を発見しかけているのだ」と主張するが解雇され、ベラミーに執拗につきまとったのち失踪を遂げた。彼の狂気は伝染性のものだった。うつされたベラミーは、奇怪な言語療法を受け、通訳が残した謎のリストを携え欧州中を放浪することに―。あらゆるものに隠れて鼓動する創造の恐るべき力。知的遊戯に満ちた、現代イタリア発幻視的物語。』
いろいろな物語でも、言葉で人心を操る能力とその能力者が、物語に登場する回数は少なくありませんし、その程度を「説得力がある」レベルまで引き下げれば、実生活でも思い当たる場面や思い当たる人がいそうです。
どのような言語を使っているかは思考方法が変わるとも言いますし、なにかと影響のあるもの。
それを何種類も駆使する通訳たちを、主人公が不気味に思う気持ちもわからなくありません。
しかも、同時通訳とか。時々、腹話術を連想してしまいます。
突然、問題の通訳をやむなく解雇したベラミーがその後たどることになる道は、何もかもががたがたと狂い始め、しっくりこない奇妙さの連続です。
失調した自分自身を、その奇妙な発音の言語に感染したゆえの病であると判断するベラミー。
彼が入院する病院も奇妙。
医者も奇妙、入院患者も奇妙。
本当に変なのは誰か。
疑って読み進めてはいても、焦りやら絶望やら、諦めやらと、嬉しくも気持ち良くもない感情でいっぱいのベラミーにつきあっていると、やはり麻痺してきます。
騙されるときは騙されきっていたほうがきっと楽。
疑うから疲れるのよ、と、主人公にも自分自身にも言いたい気分になって、ベラミーの暴走もさぞや気持ちよかったろうと思ってしまいます。
でも、これ、どうやって終わるんだろう。
きっと、みんな、少しずつ変で、言語への不信とその滑稽さだけが増幅していくような、これっぽっちもすっきりしない状態、いかにも現代文学的な終わりが来るのだろうなあと思っていたら、意外にすっきりとした結末が待っていました。
すっきりはしたけど、変は変。
正直なところ、私にとっては「えっ、そうなの?」とちょっと可笑しくなってしまう感じの真相です。
なんだか、後になってから、思い出し笑いをしてしまいそうな感じ。
ベラミーたちにはものすごく悪いんだけど。
[読了:2012-04-27]
参加しています。地味に…。
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