ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

『未来のミライ』を観てきました。

2018-07-27 | 観るものにまつわる日々のあれこれ

『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の細田守監督の最新作。
今年の夏、話題の作品です。

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 未来のミライ

 監督:細田守
 公式サイトで詳細をみる

とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。
ある日、甘えん坊の“くんちゃん”に、生まれたばかりの妹がやってきます。
両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うばかり。
そんな時、“くんちゃん”はその庭で自分のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、
不思議な少女“ミライちゃん”と出会います。
“ミライちゃん”に導かれ、時をこえた家族の物語へと旅立つ“くんちゃん”。
それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした。
それは過去から未来へつながる、家族と命の物語。
(公式サイトより)

観終えた後、今この時、自分がいるところまで続いてきた時間、この先どこかへ続いていくだろう時間について、誰もが何かを思うであろう作品。
夏休みに親子で観るのにぴったりという感じです。
妹や弟がいて、新しくやってきた小さな家族に、くんちゃんと同じ思いをしたことがあるならば、共感もひとしおかもしれません。
あるいは、懐かしさもあるでしょうか。
くんちゃんに同じような時期の自分の子の姿を重ねるようであれば、
大人のちょっとひそやかな笑い声だけが聞こえた時もありました。
あいにく私はどちらも当てはまらないのですこしせつない気持ちで観ましたが、この物語のように、命のつながりをを感じて生きていくことができるなら、それはほんとうに幸せなことのひとつだなと思います。

で、主人公のくんちゃんのお家は「とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家」。
上空から徐々に寄って、やがて見えてくる主人公の家の敷地は、近隣のお家に比べると確かに狭いのですが、ちょっと面白いお家でした。
ちょっと「建物探訪」の気分です。
くんちゃんのお父さんの職業は建築家という設定。
傾斜地に建てられているのか、その家は母屋と離れが階段でつながれて斜めに伸び、その間に中庭があります。
母屋の内部は壁が少なく、階段で段差をつけることで空間に区切りを持たせているつくりで、中庭に面した部分の全部が窓になっていて、とても明るい印象です。
離れの方は、いずれ、子どもたちの部屋になるのか、今はからんとしていて、くんちゃんの遊び場。客間にもなるのでしょうね。きっと。
通りに面した玄関から母屋に向かって縦長の敷地を上から見ると、屋根で蓋をされた中、お庭の部分だけが空に向けて開いています。
不思議なことが起こるのは、いつもその庭からでした。
そこには何かはわかりませんでしたが、木が1本。
「ああ、これがくんちゃんのファミリー・ツリー」かと、観ながら思います。
まだ若い木ですが、くんちゃんの過去へも未来へもつながっている木。
予告やポスターなどからは「妹にお父さんとお母さんをとられてすねちゃったけれども、冒険の末、ちゃんと愛されていることを実感する」というお話かと思っていましたが、観てみると、もっと力強くて、愛されていることを知るというより、もっと能動的に、くんちゃん自身がこの家族の一員であると自覚する物語でした。

個人的なおすすめポイントは、異世界の東京駅です。
現在の印象を残しながら、幻想的で、未来的。
いかにも早そうな新幹線が行き来するホームや、長い長いエスカレータ、高く美しい天井は、様々な人が行き交う分岐点のイメージそのもの。
あそこだけはもう一回観たいと思いました。
この場面も、くんちゃんのお家も、きっちりデザインされていて、なんだか作品全体より、細かいところをじっくり観たいを思わせる作品でした。
機会があればぜひ。


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