ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

シネマ歌舞伎『二人藤娘』と『日本振袖始』と、『Devil's Knot』。

2015-02-10 | 観るものにまつわる日々のあれこれ

先日、久しぶりに映画をみてきました。
いや、この前「シネマ歌舞伎」を観たのでした。
書いてなかったけど。
玉三郎さんが相変わらず綺麗でした。あごのたるみは年齢でいたしかたないとしても、それでもやっぱり綺麗。
演目は『二人藤娘』と『日本振袖始』。
藤娘は中村七之助さんと、『日本振袖始』は中村勘九郎さんとの共演でした。
『日本振袖始』では玉三郎さんには珍しい青い隈取がみられます。
ヤマタノオロチだから。
もちろん、ヤマタノオロチなので8人チームで登場。初めて観たのでちょっとびっくり。おもしろかったです。
でも、良かったのは我が身を嘆く(…と思われる)いわながひめのところでした。
隈取をした後って、舞台を降りた後白い布に顔を押し付けて、まるで版画のように、化粧を写しとったものをごひいきの方へ差し上げたりするのだそうです。
1回の舞台で1枚きり。
すごいなぁ。

さて、実際に観てきたばかりなのは、『Devil's Knot』。
悪魔の結び目…ですかね?

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 Devil's Knot

 監督:アトム・エゴヤン
 出演:コリン・ファース
    リース・ウィザースプーン


米国史上最悪の冤罪ともいわれる未解決猟奇殺人事件をもとにつくられた映画、でした。
素が未解決じゃあ、最後までみてもはっきりとした結末はないよねぇ、と、後から思ったのですが、観る前はどんな映画かよく内容を知らなかったのですよね。
コリン・ファースだからというので観に行っただけでしたから。
でも、そんな気分で観に行ってはいけない作品でした。ほんとはね。

素となったのは、93年初夏、米アーカンソー州ウェスト・メンフィスで起こった「ウェスト・メンフィス3事件」。3人の少年が無惨な死体となって発見されたこの事件は、猟奇殺人事件として注目を集め、警察は若者3人を犯人として逮捕しますが、裁判が進むうちに至るところにその捜査に不自然さが表れてきて…という筋。
未解決事件を描いているとはいえ、冤罪による逮捕だという立場を貫くコリン・ファース演じるところのロン・ラックスがいて、真犯人を示唆する終わりになっています。

何より怖いのは人間、というあれです。
事件が起こった時、人は何を恐れるのか。
その恐れを解消するために、どういうことが起こっていくのか。
真実も理由も明かされないまま、状況だけが刻々と先へ進んでいきます。
その表面しか見えないところが怖い。

うーん。
がっつり見入ってしまって、あれこれ考えてしまったことに間違いはなく、そうさせる作品ではあったのですが、捜査に不審を抱き、弁護側について独自の調査を進めていくコリン・ファース演じるところのロン・ラックスが、これほどまでにこの事件に入れ込む理由が最後までわからなかった…。
正義感には違いないのでしょうけれど、加熱していく周囲の狂気をはねのけるその強い想いを生んだものは何だったのか。
もちろん、ロンを描くための作品ではないのですけれどね。
だって、ニュースでみた被害者のひとりである少年の母親の姿が目に焼き付いてしまったからって…ねえ。
どうして行動を起こさせるほどの衝撃を彼女から受けたのかが知りたかったと。
何かきっかけがあったはずなのになぁ。



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