ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

ゲキ×シネ『シレンとラギ』を観てきました。

2013-10-08 | 観るものにまつわる日々のあれこれ

毎回楽しみにしているゲキ×シネ。
最近は生の舞台にすっかりご無沙汰なので、気合も入ります。公開後、即行です。

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 シレンとラギ

 脚本:中島かずき
 演出:いのうえひでのり
 客演:藤原竜也/永作博美/高橋克実/三宅弘城/北村有起哉


主要キャストに客演を迎えるいつものスタイル。
主演の藤原竜也さんは苦悩する青年にぴったり、その彼に愛される暗殺者シレン、20年も経っても変わらないと言われる女性に永作博美さん。これまたぴったり。変わらないもんなー。
下の画像の中央が主演のふたりで、シレンの隣がゴダイ役の高橋克実さん、ラギの隣がキョウゴク役の古田新太さんです。

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ゴダイ役の高橋克実さんがみせる意外なほどの渋さと凄みに、ほーっと思いながら見入り、それよりなにより、卑怯なことこの上ない悪役キョウゴクを演じる古田新太さんの相変わらずのかっこよさ!
スリムさなどかけらもないのに、立ち回りの決まり具合はいつ見ても惚れ惚れします。
古田さんをみると、もう藤原竜也の立ち回りはまだまだ、まーだまだです。
うわっ、今、ものすごくかっこよかった!という瞬間や、流れとしてかっこいいとか、そういうことがないのが残念。
逆にそれがあるのが古田さん。後は、堤真一だな。古田さんの立ち回りも堤真一の立ち回りもとても好き。

と、それはさておき『シレンとラギ』。

20年前、暗殺者シレンは北の国の武将キョウゴクの命により、北に敵対する南の国の教祖にして王であるゴダイを死に至らしめたはずだったが、そのゴダイが実は死んでいなかったと知らされ、再度、ゴダイの命を奪うため、再び南の国へ赴く。
それに同行するのはキョウゴクの息子であるラギ。
幼いころからシレンに憧れをいだいていたラギは、暗殺者としての業に苦しむシレンに惹かれていく。
キョウゴクの命令をかたくなに遂行しようとするシレンは耳を貸そうとしないが、相争う北と南と、渦巻く人々の思惑は二人を過酷に追い詰め、やがて…という物語。

近親相姦に親殺しと、そのままギリシャ悲劇のようです。
そういうものをやりたい気分だったのでしょうか。
でも、新感線は新感線。悲劇でもがっつり笑いは入れてきます。どぎついほどに。
立ち回りも多くて観応えアリ。
他の作品の様な痛快さはなく、ある程度先が読める物語であり、教祖を囲む場面などはどうしても他の作品と似たような見た目の印象になってしまうということもありますが、それでもそれを飽きさせずみせようとするあの手この手を満喫できる3時間でした。
とはいえ、映像を多用する演出などはなく、わりあい、オーソドックスな雰囲気。
エンタテインメントでありながら、悲劇と絶望の後にこそ見出すことのできる救いと希望を描く直球な作品であるということでしょうか。
シンプルで大きいセットを使った舞台も好みです。
ラストシーンで、シレンに名を呼ばれ、それは母としてか、女としてかと問うラギに、「人として」と答えるシレン。
血を表わす紙吹雪が高く舞い上がり、そして降りしきる中での幕切れはいかにも演劇的で、その言わんとするところとともに、鮮やかな印象を残します。

生で観たかったという気持ちを捨てることはできないどころか、むしろ、あれは生の舞台上ではどう転換されていたのか気になる!と、かえって舞台がみたくなってしまいますが、大画面、大音響で観られるゲキ×シネはやっぱり嬉しい。
次は『五右衛門Rock』。
来年の春が楽しみです。
五右衛門の古田さんは絶品ですからねぇ。
でも、今回のキョウゴクも、かっこよさげに出てきておいて、笑わせ、それでいて、己の欲望の赴くまま、ものすごく卑怯に身を翻し、人としての道をどこまでも踏み外していくことで次第に自分を解放し、やがて破滅していくような、見どころの多い役どころで、脇に置くのはもったいない、キョウゴク主役バージョンの『シレンとラギ』でがっつりと観せてほしいと思うくらいの役。
重苦しい筋なので何度も観るのはつらいけれども、古田さんのキョウゴクめあてに、もう一度くらい大画面で、と思ってしまいます。
古田さんは確かに太巻さんだけど、それだけじゃないのよと言いたい。
でも、あんまりTVではかっこいい見せどころがなくてねぇ。
ダイワハウスのCMくらい…?
うわ、さびしいなぁ。
ご本人はさびしいとも思ってないでしょうけど。






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