11の物語が収められている連作短編集。
1つめのお話には、お菓子を買おうとケーキ屋さんに入る女性が登場します。
その女性の背景にあるものは?
彼女の想いをどう受けとるかは、まさに人ぞれぞれで、著者の作品を好きになれるかどうかの境目になるかも。
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寡黙な死骸 みだらな弔い
著者:小川 洋子
発行:中央公論新社
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ひとつひとつは物語として完結していますが、そこは連作。
次の物語、次の物語と、登場人物のつながりを追っていくのが楽しさがあります。
「さて、これは誰?」と。
1冊読み終えると、細いつながりの線は円となり、静かに閉じられるのです。
グロさもある。狂気もある。少なくとも、常識的とは言えない人々の物語である著者の作品を、読みやすいと思ってしまうのは、題材がその美しさを讃えられるからだろうと思います。
たとえば、拷問の道具を集めた博物館。
拷問自体に美を見出すことはないけれども、道具としての美しさ、目的を遂げるための効率の良さは確かにあるのです。
この世に生み出されたものがそのままの存在を許されているという感覚が、読んでいる時の不思議な静けさにもつながる気がする。癒される気分と言い換えてもいいかもしれません。
「博士の愛した数式」が著者の作品との出会いであったとすると、遡った作品はちょっと毛色が違うように感じると思いますが、それらの作品とのブリッジにちょうどよいかも。