ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

…かっこいい…。 打海 文三【ハルビン・カフェ】

2008-06-17 | 角川書店
 
あまりのかっこよさに悶絶。
好きなのです。
こういう不毛さが。

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 ハルビン・カフェ
 著者:打海 文三
 発行:角川書店
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S・M夫人からお借りした1冊です。
久しくハードボイルドを読んでいなかったので、新鮮でした。

舞台は日本の架空都市「海市」。
蜃気楼と名づけられた都市には、ロシア系、チャイナ系のマフィアが根を張り、日本警察との三つ巴の闘争が展開。
対立が激化する中、あまりの殉職者の多さに報復の意志を固めた下級警官達からなる勢力「P」が登場。
そんな状況が長く続いた後、東京で起きたひとつの殺人事件を発端に、過去の事件にまで至る捜査が開始されます。

関係者達それぞれの視点で描かれる行動の断片。
躊躇なく発動される暴力。
復讐という甘美にして不毛な殺人。
次第に浮かび上がるたった一人の男の姿。

とにかくみっちり、ぎっしり。
読み応えがあります。
明るさの欠片もない作品で、権力への渇望、保身、愛憎、策謀、裏切りやらのてんこ盛り。
こういう世界とは無縁でありたいものだと心底思いますが、小説として読むとなればそれは別の話です。
不毛で、愚かしくて、かっこいい。
ただし、読み終えて、元気が出るとか、すっきりするとか、そんなことはまるでありません。
もちろん、心温まる物語とかがお好きな方にはオススメできない作品。
冷える一方です。
それに、これで、心が熱くなるなどというのもどこかおかしい。
たとえば、磨かれた銃身は道具としての美しさに輝くけれども、併せ持つ禍々しさを無視するわけにはいかないように。
でも、かっこいいです。
あまりにも不毛でかっこいい。
映画の「レオン」が好きな方にはオススメかもしれません。
あれほど甘い雰囲気はありませんけれど。

表紙はカラヴァッジオ「洗礼者ヨハネの斬首」の左側を使ったデザイン。
なんというか、これがしっくりくる読後感でした。




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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
う~~~む (むぎこ)
2008-06-17 08:33:31
かっこいいのですね

かっこいいのかあ・・・・

積んどきます
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かっこいいよね… (S・M夫人)
2008-06-17 12:58:59
きしちゃんも同意してくれて嬉しいですぅ。
私は、俗世にまみれたオッサンをも「ぞくっ」とさせるかっこよさの布施さんはもちろん、女を女とも思わないような小久保さんの水戸ちゃんへの水責めにシビレました。
返信する
むぎこさま (きし)
2008-06-18 00:28:16
ど、どうでしょう。
むぎこさんにかっこいいと思ってもらえるか自信が…
私はもう惚れ惚れするほどかっこいいと思ったのですけど、こう、なんというか、とても乱暴で…。乱暴というのも表現としては、気持ち言葉を選んだ感じで…。怒る方がいてもおかしくないかなぁとも思うような…。
でも、かっこいいので、機会があれば、ぜひ。
返信する
S・M夫人さま (きし)
2008-06-18 00:29:35
水責めにシビレている私たちもどうかと思うけど、「かっこいい」って言葉しか思い浮かばなかったのですよ、もう。「かっ」で1回切って、ためてから続きを言ってしまうくらいに。
躊躇しないからいいんだよね~、きっと。間違っても極楽に行けると思ってなさそうで。
返信する
Unknown (snowy;yukino)
2008-06-20 12:33:59
アタクシにも積ませてくだされ♪

ブリューゲルのバベルの塔も
本の表紙にするのは 反則ワザであると
思ってましたが、、
カラバッジオも、、反則ではなひか、と
思われまする、、

この方の ペンネームは、、
かっこよすぎるのが怪しいかも、、!

xx
返信する
yukinoさま (きし)
2008-06-21 01:10:58
かっこよすぎて怪しいと言われては立つ瀬がありませんな。しかも名前で(笑)
でも、わかる気が…。

この表紙、見た瞬間、勇気があるなぁ、と呟いてしまいました。
気にしなければそれまででしょうけれど、下手すると負けそう。
しかも、ぐぐっと寄っちゃってますし。

お気に召すとよいのですが。
ああ、そういえば、と、記憶も朧になったころ、読んでみてくださいませ~。
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