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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

[ 憂鬱 / 銅 / 戦車(チャリオット) ]より・三番目の彼氏、或いは青春の役立たず

2015-06-05 21:16:54 | 三題ランダムキーワード
 女の子が一人、男の子が三人。

 幼なじみの四人はいつも一緒に遊んでいた仲良しだったが、大きくなるにつれて男三人は同じ部活で競い合うようになった。
 やがて二人は伸び悩む一人を置き去りにますます部活に打ち込み、取り残された一人は万年三位となった。

 そして引退の日、部活のマネージャーをやっていた幼なじみに次々と告白した三人の内でOKを貰えたのは、何と万年の三番目だった。己の才能に疑問と限界を感じつつ、それでも地道にトレーニングに励み続けた堅実な態度を、彼女もまた好ましいものとして見守ってきたのだそうだ。
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[ 吐く / 季節行事 / 美(ティファレト) ] より・これくらいのお弁当箱に

2015-06-04 19:55:15 | 三題ランダムキーワード
 友だち数人で行った春の行楽地で、お弁当は任せてと断言した一人が皆の前で開けてみせた料理は確かに見事な出来だった。

 だし巻き卵の鮮やかな黄色、菜の花の辛子和えの爽やかな緑、プチトマトの食欲をそそる赤、唐揚げの落ち着いた茶色、スマイルオレンジの活動的な橙色。

 周囲が感嘆の声を上げる中、いち早く違和感の正体を突き止めた私は手づかみで唐揚げを1つ取り上げてから言った。
「コレ粘土製だよ」
 色とりどりの料理は全てがフェイクで、主に数種類の樹脂粘土とレジンが原材料らしかった。

 湧き上がる疑念が、やがて深刻な不信感を伴った糾弾の声に変わっていく中。違うの!コレは何かの間違いなの!妹の作品と間違えたの!などと叫ぶ彼女を殊更に見ないようにしながら、私は無言のままスマホ片手に昼食を摂れそうな店がないかと検索を始めた。
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[ 休む / 金魚鉢 / 戦車(チャリオット) ]より・黒出目紅変化

2015-06-03 19:22:58 | 三題ランダムキーワード
 うちの水槽で一番活きが良かった黒出目金の『チャリオット』が、気が付いたら赤くなっていた。驚いて調べてみると交配を重ねた金魚には良くある先祖がえりらしい。茫然とする僕の隣で一緒に金魚を眺めていた妹が、カクレクマノミなんか性別まで変わるじゃないのと突っ込んてきたので、これ以上はイロイロと考えるのをやめる事にした。

 ちなみに呼び名は妹によって『ラーレ(チューリップ)』に強制変換された。
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[ 笑う / 惑星 / 運命の輪(ホイールオブフォーチュン) ] より・船長かく語りき

2015-06-02 18:25:41 | 三題ランダムキーワード
 宇宙飛行士になった理由?実は真剣に考えたことはないんだ。

 何と言うのか、自分の中ではずっと昔から疑問の余地なく決まっていた事で、私の人生とは常にその確信を深めていくステップだったと思う。だから今も、何故宇宙に出るのかではなく、宇宙に出て何処まで行けるのかが私のテーマであり、恐らくは運命だと思っている。
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[ 食べる / 杏 / 王国(マルクト) ]より・大きな森の小さな家

2015-06-01 18:57:21 | 三題ランダムキーワード
 森の別荘で台所に現れた小さな妖精(推定)に頼まれ、砂糖や塩を少し分けてやったら、お礼がしたいと豆粒程の果実を食べるように促され、彼らと同じサイズになって村に案内された。
 イメージとしてはまだテレビが普及していない頃の北米の田舎を思わせる、なかなか文化的な暮らしぶりに感心しながらお茶や菓子を頂き、帰る頃に何か欲しいものはないかと聞かれたので小さなティーセットをもらった。
 その後もちょくちょく現れて小麦後や辛子、それに釘や花火といったものまでお願いされ、目的のものを渡すと代わりに彼らが使っている家具をくれた。

 ある日、現れた妖精が一緒に付いて来てくれと言うので言うとおりにしたら、なんとそこには小振りの宇宙船と思しきモノが有った。ようやく修理が終わったので故郷に帰れると喜ぶ妖精(多分)一家は、今まで世話になった礼に、ここで暮らしていた時に住んでいた家は家具も含めて全部差し上げると告げてから去って行った。

 彼らを見送った僕は早速空き家になった彼らの家を、家具も含めて丁寧に梱包してから自宅に戻り……そんなわけで我が家の応接間には驚くほどに精密なドールハウスが飾られることになった。
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