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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「野菜」「糸」「見えない物語」ジャンル「純愛モノ」より・夏の収穫

2015-01-12 21:37:46 | 三題噺
 爽やかな夏の日、俺と幼なじみは周囲の祝福を受けながら結婚式を挙げて夫婦となった。

 やがて子供も大きくなったある日、知り合った頃から変わらず明るくて気立ての良いままの彼女がどうして俺のような冴えない男の申し出を受けてくれたのかと尋ねたら、小学四年生の夏休みでクラスの野菜畑に水をやりに行った時、赤いトマトに齧り付いた時の幸せそうな顔に運命を感じ、しかし流石に自分からは言い出せないまま歳月ばかりが流れ去っていくうちに俺から告白され、本格的にその気になったのだそうだ。
 どうやら俺たちの運命はトマトの果実のように徐々に赤く熟していき、やがて程好い加減で収穫と相成ったらしい。
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「空気」「タライ」「役に立たないかけら」ジャンル「王道ファンタジー」より・儀式

2015-01-12 03:27:40 | 三題噺
 月夜の晩、水晶鉢に水を張って貴石の欠片を沈めて呪文を唱える。
 ざわり、と音を立てて空気が蠢くと水晶鉢の中の貴石が瞬く間に形を変えて大きくなっていき、人の形を取った直後に砕け散った。
「……失敗か」

 妻を失った魔道士は、己の妻を再び手に入れるため何度でも何度でも同じ儀式を繰り返す。そんな態度こそが彼の元から妻を去らせた元凶であると気付かぬままに。
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