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雀庵の「常在戦場/79 イスラム教のキモを知る(中)」

2021-09-04 07:21:05 | 日記
雀庵の「常在戦場/79 イスラム教のキモを知る(中)」
“シーチン”修一 2.0


【Anne G. of Red Gables/363(2021/9/4/土】鈴木紘司著「イスラームの常識がわかる小事典」から。*はネットなどからの引用と小生の補足説明。


☆国家も神の立法を越えてはならない


人間は社会秩序を保つために法律や規則を定めてきた。イスラーム法(シャリーア)は人間が作り出した法ではなく、神から与えられた啓示を基本として定められた。イスラーム法は「アッラーが示した人間が行う正しい道」である。


つまりイスラームでは絶対唯一神の意思だけが「法」であり、人間はその真意をくみ取り、神に忠誠を誓い、義務を果たすべきである。国家すら神の立法を越えてはならない。


こうした考え方は現代社会での「国家至上主義」と真っ向から対立する。しかし国益優先で反国際的な「国家至上主義」は大きな視野を失った動きである。人類の悲劇である国家間の衝突や戦争、紛争を回避し、是正する歯止めとしてイスラーム的な考え方が期待される。


法が存在する意義は「法が遵守される」ことである。日本では「会社に忠誠を尽くすあまりに反社会的な行動に陥る」という行為が珍しくないが、最初から唯一神に従うことを前提にしたイスラム法の実効性は極めて優れており、「神の法を遵守する」という考え方を導入すれば、それらの難問も解決できるであろう、とムスリム(イスラーム教徒)は考えている。


☆日本人の「信教の自由」は「神への冒涜」


イスラームは神の教えでたった一つしかないが、ムスリム(教徒)は人間だから善人、悪人、ピンからキリまでいる。イスラーム信徒がすべて聖人君子ではない。


日本人は「宗教」というと何か特別なものに考えるが、世界の常識では人間すべてが宗教を持っており、「宗教がない人は信用できない」と見る方が一般的であるようだ。


日本人は「自分で宗教を選べる、神様を取捨選択できる」と思いがちだが、思い上がりも甚だしく、それは「神を冒涜する」ことなのに気づいていないのが空恐ろしい。


☆日本は不安定な「T字型」で足元が怪しい


友人のアラブ人ムスリムと会話していた際、「T字型人間」が話題になった。知識を広く持った上で、自分の専門分野を深く掘り下げていく人、と説明した*。


(*T字型人間:T字の横棒が知識・技能の幅広さ、縦棒が専門性を意味する。例えば「機械工学と医療」を合わせた医療工学、「統計学とマーケティング」のビッグデータ処理など、横断的な分野に対応できるマルチ人材)


すると友人曰く「T字型は日本人みたいだ。教養や知識はあるが、思考の根源がT字のように(頭でっかちで基礎、基盤が)不安定な気がする。反対にムスリムは知識こそ少ないかもしれないが、物事に対する考え方の基礎が固く、フラフラしていない」。


現代の日本人は知識があり、一応の専門(知識、技能)を持ちながら、基本的な事柄で思考停止したり、逆転したりしてはいないか。家族内での親子関係が逆転したり、男女間の変化、教育の崩壊などが起きている。アラブでは、健全な社会は愛情ある家庭から形成されると主張し、それを実践している。


☆「イスラーム共同体」を目指す


過去の栄華はあったにせよ、今日のイスラーム諸国では、西欧の技術を導入して振興を図っている。だが、全体的な調和と統一性を重視し、無節操で無軌道な世俗的な科学万能主義は唯一神の叡智に勝ることはあり得ないという信念に立っている。


2001年9月の同時多発テロを境目にして、イスラーム世界はさらに大きな変動の波にもまれている。冷戦期の「文明の衝突論」が再び浮上しているが、現在では国際政治の不安定要因としてメディアではイスラームの名前が随所に踊っている。


しかし、文化圏としてのイスラームは存在するものの、領域国家としてのイスラーム全体の統一が失われてから久しい。イスラーム諸国会議機構*などはあるが、単なる寄り合いの場でしかない。ムスリムが肯定し、満足できる理想のイスラーム共同体は存在せず、状況はますます悪化している。「イスラーム共同体」を目指し、ムスリムが存立価値を確定させることは急務である**。


(*イスラム諸国会議機構:2011年6月に「イスラム協力機構」(Organisation of Islamic Cooperation、OCI)への変更。加盟国はムスリム(イスラム教徒)が国民の多数を占める北・西アフリカ、西・中央・南・東南アジアなどの57か国からなり、世界13億人のムスリムの大部分を代表する。


イスラム諸国の政治的協力、連帯を強化すること、イスラム諸国に対する抑圧に反対し、解放運動を支援することを目的とする。


採決は世界人口の5分の1を占めるイスラム世界全体の共通の意向として国際社会に対する影響力をもつ。ただし、会議における決定は加盟国の多数決によらないため、重大な案件に対しては全加盟国の承認できる程度の穏健で折衷的な決定を下す傾向がある。このため、加盟国同士の紛争やアメリカの対中東政策のように加盟国間の利害が一致せず対応が大きく分かれる問題に関して、しばしば国際機構として有効に対処できないことが欠点となっている)


(**イスラーム共同体:ウンマ・イスラーミーヤの訳で「イスラーム国家」とほぼ同義。「ウンマ」とはアラビア語で「母」と同義の言葉であり、現代では民族・国民・共同体などを意味する。


イスラーム国家は支配者の定義する「イスラーム的価値観」への絶対的服従を要求するイデオロギー国家である。よってイスラーム国家に於いてはシャリーア(イスラーム法)が国法でありクルアーン(コーラン)が憲法である。


シャリーアに基づきムスリム(イスラーム教徒)の指導者が統治を行い、ムスリムの同胞としての緊密な結合とすべての政治や社会秩序はイスラームに基づくという理念により、アッラーの祝福が永久に約束されるとする。


従って、ムスリムが多数を占める「イスラーム教国」であっても、トルコ共和国、インドネシア、マレーシアの様に「世俗主義」( 政治や個人の行動の規範が特定の宗教の影響から独立していなければならないとする主張)を標榜し、シャリーア(イスラーム法)を廃止している国家はイスラーム国家とは言われない。


イスラーム国家では国民の身分はムスリムか非ムスリムかで明確に分かれており、イスラーム法に基づき後者には厳しい差別が行われる。そのためイスラーム国家は非ムスリムにとっては一種のディストピア(反理想郷・暗黒世界)である。


一方、イスラーム国家はムスリムにとっては「イスラームの良き価値観」とそれに基づく規律によって社会が統制されるため(現実はともかく)少なくとも目指すべき体制としてはユートピアとなる。


現在イスラーム世界で「原理主義」(聖書、経典の無謬性を主張する思想や運動)が勃興しているのも、腐敗した王政や独裁制にかわってこのようなイスラーム国家を樹立することがムスリムの幸福へとつながるという希望が一定程度存在しているためであるとされている)


☆人口爆発とIT革命がイスラーム諸国を揺さぶっている


現在のイスラーム諸国が抱える共通の問題は顕著な人口増加であろう。石油資源に恵まれた国が多く、生活レベルが向上して死亡率が低下したことによる自然増である。さらに国外から大量の労働者を受け入れたことで爆発的な人口急増になった。


1970年代初めに人口600万人のサウジは現在(2003年)2200万人、2025年には4000万人と予測されている。イラン(2000年6600万)が1億人に達するのは時間の問題とされている。


これに伴い様々な問題が噴出してきた。一つは、先進国での高齢化とは対照的に「若齢化」が進んだことである。教育インフラの拡充と雇用の受け皿の整備という対策が上手くいかないと、将来の社会不安の要因となる。「大学を出ても職がない」という状況になれば反体制運動の伏線となるし、流血革命などの動きに飛び火しかねない。


人口増加は都市人口の大幅な伸びとなっていく。生活の向上で大量の水と電力が消費され、インフラ不足に直面する。これまでの公共事業方式ではもう間に合わないだろう。民間企業の活力を引き出すために民営化が推進され、国外からの投資を誘致するために政策方針の変更が打ち出される。


日本のモノヅクリの生産拠点が中国へシフトし、今や中国が世界の工場として生産力を伸ばしているように、イスラーム諸国でも社会経済構造の変化が始まった。また過去の革命などの意識の他に新しい世代の社会意識が目覚めようとしている。グローバルなIT情報革命も大きな影響を与えている。メディアの開放や携帯電話の普及が若年層にどう左右していくか、その中でイスラームがどんな位置を占めるのか、注目すべき課題である。


イスラームの強みは、物事を判断するときの識別能力を高めさせる力にある。唯一神を中心に置き、毎日の生活の中で現世と来世の位置関係を教えてくれるように、映像による視覚世界と現実社会の重みの差を明確に区別して現実の人生に対処する能力を与え続けるだろう。
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鈴木紘司氏の教えの紹介は以上で終わり。


イスラム協力機構(OCI)でさえ利害錯綜で団結できないし、2015年12月、サウジはOCIの条約を根拠にイラン、シリアなどを除くイスラム圏34カ国と対テロ連合「イスラム軍事同盟」を発足させたが休眠状態のよう。結束して獅子身中の害虫であるイスラム過激派さえ駆除できないのだから「イスラーム共同体」は永遠の夢のまた夢でしかないだろう。


次回はイスラム過激派、原理主義勢力について考えていきたい。
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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