風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

夢草子 伍の巻

2010-06-11 22:41:56 | 大人の童話其の弐

四小が生まれて一年がたちました。もうすっかり、この世界に慣れた四小は、

自分の所に通って来る子どもたちが、自分に気づくかどうか、試しに声をかけて

みていました。でも、子どもたちは誰も自分に気づいてくれません。四小は、

がっかりしてしまいました。

『あ~あ、生まれてから一年、ずーっと毎日、こうして子どもたちに声かけてるのに、

だーれも気づいてくれないの。つまんないの。だれか気づいてくれないかな。』

四小はそんなことを思いながら、それでも毎日あきらめずに、一所懸命

子どもたちに声をかけ続けていました。そんなある日、二小がやって来て、四小に

訊きました。

「四小、毎日、一所懸命何やってるの?」

「あ、姉さん、うん、あのね、子どもたちに声かけてるの。」

四小は、二小の方を向いて、ちょっとはにかみながら答えました。

「まあ、何で?」

二小は、意外だ、というような感じで、さらに四小に訊ねました。


夢草子 四の巻

2010-06-10 22:20:16 | 大人の童話其の弐

四小は、一小と二小の方を向くと、ニコッと笑いました。そして、

「ふぁ~、ここがこれからわたしのいる世界なの?わたしの姉さんたち?

はじめまして、これからよろしく。」

と、上品にあいさつしました。二小は、

「わぁー、かわいい声。うれしいな、妹がもう一人増えて。これからずっといっしょに

いられるね。これからずっとよろしくね。」

と、ニコッと笑って四小に言いました。四小は二小に向かって、かわいらしく笑って

「はい、二小姉さん。」

と、お行儀よく返事しました。二小は、もうたまらない、という感じで、

「わ、ホント、か~わいい!ウフッ、うれしいな。こんなかわいい子が妹になって

くれて。」

と、満面の笑顔で言いました。二小の喜びようは、それはもう、大変なものでした。

生まれたばかりの四小の周りを、ピョンピョンはねまわって、体全体で喜びを表して

いました。


夢草子 参の巻

2010-06-10 11:31:04 | 大人の童話其の弐

やがて、四小に光が射し始めました。そう、精霊の生まれる瞬間です。二小は

「わぁーっ」と言い、四小の光を覗きこんでいました。光は、どんどん大きくなって

いきます。やがて、光が校舎全体を包み込むと、パァーッと一気に金色の光線が

走り、周囲は金色の光でいっぱいになりました。そして、光の中から、かわいい

精霊の顔が覘きました。そう、四小です。四小は、まぶしそうに目を細めながら、

不思議そうに辺りをキョロキョロ見まわしています。二小は、すかさず、

「はじめまして、四小。この世界へようこそ。わたしは、あなたの姉になる二小よ。

これからよろしくね。」

と、生まれたばかりの四小にあいさつしました。続いて一小も、

「はじめまして、これからよろしくね、四小。わたしが、一番上の姉の一小よ。まあ、

なんてかわいらしいきれいな子だこと。」

と、あいさつしました。

 


夢草子 弐の巻

2010-06-08 21:20:03 | 大人の童話其の弐

二小は、朝からそわそわしていました。

「四小、早く生まれてこないかな。四小が生まれたら、わたし、うんとかわいがって

あげるんだ。」

二小は、そんなことを言いながらうれしそうに、姉である一小のまわりを、

ピョンピョンとはねまわっていました。

「これ、二小。少し、静かにしていなさい。あんまり騒いでいると、四小が生まれて

これないわよ。」

うれしさで落ち着かない二小を、一小が姉らしくたしなめます。それでも二小は、

今度は、四小の精霊が入る校舎の周りを、ピョンピョンとはねまわっていました。


夢草子 壱の巻

2010-06-07 20:58:18 | 大人の童話其の弐

東京のはずれに位置する、とある町に、一人の小学校の精霊がいました。精霊は

昭和三十五年生まれ、名を第二小学校といいました。二小のいる所は、周りに

田んぼや畑が広がり、近くには川も流れている、そんなのどかな風景のなかでした。

昭和三十八年六月のある朝、二小は目覚めると、大きくのびをして辺りを

見まわしました。そして、頷くとにっこり笑いました。実は、今日は、二小にとって、

とてもすばらしいことがおきる日なのです。それは何かというと、二小にとっては

二番目の妹となる精霊、四小の生まれる日だからです。この頃、町の人口は

増え続け、小学校も次々と建って増えて来ていました。四小も、 そんななか造られ、

精霊が生まれることになったのです。