私はあちこちで書き散らしているように
Alessandro Alloriの作品が結構好きです。
彼の作品は色彩が豊かで柔らかな筆致のものが多いので、
時に色のない重い作品を見かけると
それはそれで気になったりもします。
12月14日まで東京都美術館で開催されていた
『ウフィツィ美術館展』には
そんな気になる一枚が出展されていました。
たった一枚のAlloriの1581年の作品。
それがMadonna languente con i simboli della Passione di Cristo。
あ、この展覧会の会場で無料配布されていた展示作品リストには
日本語と英語の表記しかなかったので、
個人的には非常に不満だったんです。
イタリア語でないとピンとこない作品というのが
私の中にいくつもあるからという、ただただわがままな理由ですけどね。
それはよいとして、Alloriの作品。
キリストの受難を象徴する品々を前にして
悲嘆にくれる聖母マリアが描かれたこの作品は
茶色というかアースグレーというか、
とにかく色の少ない暗い印象。
画像拝借 Il Sole 24
あまり画質よくなかったなぁ。
この作品を初めて観たのは、
毎年、年末年始にフィレンツェのウフィツィ美術館が行う
企画展「I Mai Visti」でした。
確か2007年のI Mai Vistiだったような気がします。
どこの美術館もそうですが、
通常展示されている作品の何倍にも及ぶ点数の作品が
保管庫に保存されているわけで、
普段は日の目を見ない作品を展示してくれる展覧会がI Mai Visti。
そこに出展されていたわけですから、
このAlloriの悲嘆にくれる聖母も通常展示されていない部類の作品。
今回の東京都美術館での企画展「ウフィツィ美術館展」は
ウフィツィから借り出された
Pallade e il centauro(パラスとケンタウロス)がメインでしたが
アカデミアやパラティーナからの作品も多かったし
メイン以外の作品のほとんどは
通常展示されずに保管庫で眠っている作品だったりもしました。
つまり旅行でウフィツィ美術館に行っても
出会うことができない作品が多かったということです。
だから『ウフィツィ美術館展』という展示会タイトルには
若干違和感を覚えたんです。
通常展示されない貴重な作品を
東京の片隅で観ることができたのはラッキーだと思います。
(前向きに評価した場合)
さて、Alloriの作品。
作品はタイトルそのままなので、わかりやすい。
受難の象徴を前に悲しみにくれる聖母、まさにそれ。
そんな作品で気になるのは絵画中に書かれたこの一言。
"Non vi si pensa quanto sangue costa"
ダンテの神曲『天国編』の一節の引用。
この引用はAlloriのオリジナルではなくて、
ミケランジェロもVittoria Colonnaのために制作した
Pietaのデッサンに引用していて、
そちらの方が年代的には古いかな。
画像拝借 Wikipedia