不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

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2013-01-23 18:05:25 | Tweet Log



Coronamento della lanterna

2013-01-23 07:30:00 | アート・文化

私の中ではミケランジェロは
画家でも建築家でもなく、
やはり彫刻家なのですが、
当時の芸術家としては
いろいろやらないと生きていけなかったのは彼も同じで、
色々やっています。

レオ10世の命でミケランジェロが手がけた
フィレンツェのサン・ロレンツォ教会新聖具室。
一般にメディチ家礼拝堂と呼ばれるところですが、
この屋根の上に取り付けられているランタン装飾も
同じくミケランジェロの手によるものです。
これまで、これも彼の発明だと思われていたのですが、
ライバルであったレオナルド・ダ・ヴィンチのアイデアから
インスピレーションしたものではないか
という説が上がってきています。

教会の天辺には
よく「世界」を象徴する球体がつけられていますが、
新聖具室の屋根の上に取り付けられているものは
単純な球体ではなく多面体と十字架、
そしてライオンの頭やローリエの葉っぱの装飾つき。
多面体は60の三角形を組み合わせ
5底辺のピラミッドを繋ぎ合わせたような12面体。
作品は金箔を施した銅製で
実際に制作したのはミケランジェロの協力者でもあった
金細工士のGiovanni di Baldassarre
(ジョヴァンニ・ダ・バルダッサッレ)。

この幾何学的な作品が
ミケランジェロのオリジナルではなくて、
レオナルドのデザインから
インスピレーションを受けたものではないかといわれるのは
彼らと同世代に生きた
Luca Pacioli(ルカ・パチョーリ)の手稿本に
レオナルド作のデザインも60点ほど記載されており、
その中にこの多面体も描かれているからですが、
こういう一つ一つのものを
根気よく研究している研究者がいるわけですね。

デザインはレオナルドから拝借し、
制作はバルダッサッレがしたのなら
ミケランジェロの作品とはいえないのでは?
と思ったりもしますが、
当時は工房の弟子が手がけても監修が親方であれば
作品にはメインの親方の名前がついたわけですし。
そしてなにより、
それまでは教会の屋根の上に乗せるのは
球体と相場が決まっていたのを
あえて球体ではないものにしようとしたその発想自体が
ミケランジェロらしさなのかもしれません。

歴史的には、
この多面体も含め
ミケランジェロに新聖具室に関わる
一連の依頼をしたのは
メディチ家から初めて教皇となったレオ10世ですが、
実現はメディチ家二代目の
教皇クレメンテ7世の時代(1523年)、
そして多面体装飾の完成は1525年。

レオナルドのデザインにある多面体が
正三角形の組み合わせであるのに対し
ミケランジェロが実現したものは
二等辺三角形の組み合わせで
それによって各ピラミッドの高さが低くなり、
表面に受ける光をより広い範囲に
拡散するようなものになっています。

依頼主がレオ10世であったことや、
フィレンツェのシンボルMarzoccoに由来して
装飾にライオンが用いられているのも、
興味深い点かもしれません。

2012年末に新聖具室の一部修復のために
この多面体も取り外され、
現在は精密に作られたコピーが
屋根の上に乗せられています。
オリジナルは修復を経て、1月17日より
メディチ礼拝堂の地下礼拝堂で展示されています。

2013年3月から10月には
「輝けるメディチ家の時代-教皇レオ10世とフィレンツェ」という
特別展のなかでも展示される予定。

Coronamento della lanterna della cupola
della Sagrestia Nuova della Basilica di San Lorenzo
会場: Museo delle Cappelle Medicee(メディチ家礼拝堂)
会期: 2013年1月17日から
写真はこちら