不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Pala di San Zeno di Mantegna

2008-08-12 07:39:57 | アート・文化

ヴェローナにあるイタリア・ルネッサンスの傑作のひとつ。
約2年に亘りフィレンツェの貴金属博物館付属修復研究所
(Opificio delle Pietre Dure)で修復作業が行われている
マンテーニャ(Mantegna)の
「Pala di San Zeno(サン・ゼノの祭壇画)」が
ヴェローナのサン・ゼノ・マッジョーレ寺院
(Basilica di San Zeno Maggiore)に戻るのは2009年5月21日。
聖人の祝日に当たる5月21日に
作品完成550年の祝福式典となります。

San_zeno_intero
マンテーニャがこの作品を描いてから
北イタリアの絵画の流れは
それまでと大きく変わったといわれるほど
重要な作品として捉えられています。
4,80メートル×4,50メートルの
壮大なモニュメント性の高い作品は
マンテーニャがマントヴァのルドヴィコ・ゴンザガ
(Ludovico Gonzaga)の宮殿へ移る前の
パドヴァ時代に作成した最後の作品になります。

1457年にヴェネツィア人で
ヴェローナのサン・ゼノ寺院の修道院長であった
グレゴリオ・コレール(Gregorio Correr)によって
マンテーニャに依頼されたもので、
1459年に完成、受け渡しとなっています。
マンテーニャの作品の移動可能な作品のほとんどが
オリジナルの場所から美術館などへ移されてしまっているなかで
この作品はフレスコ画などを除いて
唯一彼自身が想定したオリジナルの環境の中で
鑑賞する事ができる作品でもあります。

しかしこの作品もまったく移動されなかったわけではなく
1797年のナポレオン占領下では
パリのルーブルに持ち去られた経緯があります。
当時北東イタリアを統治していたオーストリア国家の努力の結果
1814年に返還に成功していますが、
祭壇下部のプレデッラ3点は依然フランス領内に残っており、
現在イタリアにあるものはパオリーノ・カリアリ
(Paolino Caliari)が手がけた1800年代のコピー。
1973年には左翼の板絵が盗難に遭っており、
当局は一切否定していますが、
身代金(8000000リラ)を払って回収。
不運に見舞われた作品でもあります。

1934年にミラノで行われた修復が失敗に終わり、
そのときに上塗りされたニスなどの
除去作業が中心となっている今回の修復では、
作品は14枚に分解され、段階的に作業が進められ、
既に最終段階に入っており予定通り完了の見込み。
中心となる絵画だけでなく、
やはりマンテーニャが考案したといわれる
金箔装飾の施された木製の額縁も
今回初の修復対象となっています。

Paladisanzenodetail
洗浄が中心となった今回の修復によって
作品のもつ透明度の高さや色彩の鮮明さを
取り戻したといわれています。
壮大な作品でありながら、マンテーニャらしい
病的ともいえる精密さと細かさで描きこまれた細部が
より鮮明になり
明るく軽さの感じられる作品となって
我々の前に戻ってくるまでにあともう少し。

ヴェローナに戻る前に
フィレンツェでお披露目ないのかなぁ。
まぁ、本当ならオリジナルの環境で観るのが
最適の鑑賞方法なのですけどね。