フィレンツェのバルジェッロ美術館所蔵の作品で
修復が終了して再展示となっているのが
Jacopo Sansovino(ヤコポ・サンソヴィーノ)のカルタペスタ。
いわゆる張り子の技術を使った作品で、題材は「聖母子像」。
今回の修復の結果、
長いこと失われていたオリジナルの多色装飾の再現に成功。
日本ほど張り子の技術が普及しなかったイタリアで
非常に珍しい作品のひとつです。
特にその耐久性などから考えても
現存する作品が少ないので貴重な一点。
サンソヴィーノが同一の型を使って作成した聖母子像は
それぞれが異なる彩色、装飾になっています。
バルジェッロ美術館が所蔵する修復が完了したものの他には
ヨーロッパやアメリカの美術館に
計13点残っているといわれています。
La Madonna al Bargello(バルジェッロの聖母)のほか
ルーヴル美術館(Museo del Louvre di Parigi)所蔵のもの1点、
チェデネーゼ美術館
(Museo del Cenedese di Vittorio Veneto)所蔵のもの1点、
アクトンコレクション
(collezione Acton della Villa la Pietra di Firenze)からは2点が
それぞれ出展されていて全部で5点。
同一型から出来上がった張り子作品の
対比ができる展示となっています。
ゆったりと座った聖母の膝の上に乗り、
聖母の両手で支えられる幼子キリスト。
ルネッサンスの彫刻家らしい安定性のある構図で、
しかも柔らかなまなざしと布地の表現が
サンソヴィーノらしいと評価される作品。
ミケランジェロとほぼ同時期を生きた
フィレンツェの建築家・彫刻家であるヤコポ・サンソヴィーノは
偉大な同時代人と常に比較されています。
ミケランジェロ作
バルジェッロ美術館に所蔵されるバッカスは
雄大で自信に満ちたミケランジェロのそれに比べて
一回り小さく穏やかで繊細な印象を受けます。
常に比較対象であったことに抗って
あえて別の方向性を見出している作品でもあります。
そして明らかに大理石の質が異なるのも
二人の当時の力の差の表れ。
サンソヴィーノ作
ジョヴァンニ・バルトリーニ(Giovanni Bartolini)の依頼で
作成されたこの作品を
後にコジモ一世はこよなく愛したともいわれています。
ミケランジェロよりも布地の表現が上手で
ドレープの柔らかさでは劣らないといわれるサンソヴィーノ。
その彼が手がけた張り子の聖母子像は
確かにミケランジェロにはない柔らかさに満ちています。
La Madonna in Cartapesta del Bargello
会場:Museo Nazionale del Bargello
Via del Proconsolo 4 Firenze
会期:2007年9月29日から2008年1月7日まで
開館時間:8:15-13:50
休館日:第1・第3・第5土曜日、第2・第4月曜日
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