不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Caccia al dipinto perduto leonardiano

2007-10-30 07:25:26 | アート・文化

長年のミステリーが本格的に解決される日は近いのか。

フィレンツェのPalazzo Vecchio(ヴェッキオ宮殿)
Sala di Cinquecento(500人広間)の
南東側の壁に隠されているとされる
レオナルドの失われた傑作
「アンギアーリの闘い(Battaglia d'Anghiari)」。

長年この絵画の存在を巡って議論が続けられていますが
その解明のための本格的な探索計画が
2007年10月22日に公表され予備調査が始まりました。
早ければ2008年7月頃には絵画の存在有無が判明し、
2009年春までに最終的な結論が出される予定。

レオナルドが新技術を導入して製作をし、
実際には何年か500人広間を飾っていたといわれる幻の絵画。
ラファエロやルーベンスなど
後世の画家たちの複写が残っていることから
その絵画が実在したことは確かですが
コジモ一世の時代の大改築時に喪失。
ヴァザーリがその絵画を保存したまま上描きしているのか、
はたまた絵画自体を破壊しているのか
というのが論点となっています。

長年に亘り何度も繰り返された調査の度に、
ヴァザーリの絵画の下に
何かがあるのではということは言われています。
21世紀の最新技術を駆使してそのなぞが明らかになりそうです。

1975年から「アンギアーリの闘い」の調査を続けている
Maurizio Seracini(マウリツゥオ・セラチーニ)を
中心に組まれた調査隊。
サン・ディエゴ大学の協力を得て原子核を利用した機材で
ヴァザーリの絵画の向こうを探ることになります。
レオナルドのメモや材料を購入した際の覚書などが残っているため
実際に彼が絵画作成に使った染料などの詳細は
我々の時代まで伝わっています。
たとえば白色に加えた鉛、朱色に加えた水銀、錫や白鉛などは
ヴァザーリが使用していない原材料であるため、
壁からその元素が探出できれば
レオナルドの絵画の存在が確証されます。

現在予備調査としてヴァザーリが絵画作成に使用した
化学物質の分析が進められています。
その分析結果をベースに各種設定を完了した機材は
2008年5月にフィレンツェに到着予定。
そこから約3ヶ月かけて
壁全体の化学物質の分析調査が行われます。

1440年にフィレンツェ軍が勝利を挙げたアンギアーリの闘い。
軍馬の入り乱れる豪快な構図で
レオナルドが描いた作品は17メートル×7メートル。
1504年8月30日に着手された作品は従来のフレスコ画法ではなく
焼付け画法を取り入れたため、実際は火力の微妙な調整ができず
一部染料が溶けすぎて失敗しているとも言われています。
6人の弟子を使って約1年かけて完成された作品は、
その後ヴァザーリが手がけた大改築で姿を消しますが
多くの研究家が
当時既に名声を得ていたレオナルドのそれだけの大作を
ヴァザーリ自身が破壊できたはずがないと考え、
レオナルドの絵画の上に薄い層を作って覆い
その上に自分の作品を描いているというのが定説となっています。

実際この幻の絵画が見つかったら
ヴァザーリの絵画を取り外して復元するつもりなのか、
果たして完全な形で見つかるのか、約1年で答えが出そうです。

でもレオナルドの作品が見つかったからといって
自分の作品が取り除かれたらヴァザーリは悲しむだろうねぇ。