不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Dolci colline di sangue

2006-05-23 00:46:53 | うんちく・小ネタ

シリアルキラーというのはいつの時代のどこの国にもいるものです。
フィレンツェ連続殺人事件とは
1968年から1985年までの間にフィレンツェ近郊の
Scandicci(スカンディッチ)からMugello(ムジェッロ)辺りで起こった
カップルばかりを狙った殺人事件。
8組のカップルが襲われて16人が殺害されています。

1981年の殺人事件の際に、犯行に使われたピストルが
それ以前(1968年と1974年)の
二つの殺人事件で使われたピストルと
同じものであることが確証され、
それ以降連続殺人事件として取り扱われるようになります。

数多くの容疑者の名が挙げられ、
調査が続けられているにもかかわらず
未だに真犯人は捕まっていないので、謎が多く未解決なこの事件。

最重要容疑者として殺人の容疑をかけられたPietro Pacciani
(ピエトロ・パッチャーニ)は田舎の農夫。
3回目の公判を待っているときに容疑をかけられたまま自宅で死亡。
この死にも様々な疑惑が残り、いまだ未解決。

とにかくなにから何まで迷宮入りしそうな雰囲気の殺人事件。

この殺人事件を地方紙の新聞記者という立場から
長年追跡・調査をしているのがMario Spezi(マリオ・スペーツィ)。
そしてThe New YorkerやNational Geographicのリポーターである
アメリカ人のDouglas Preston(ダグラス・プレストン)との共著で
先日発売されたのが「Dolci colline di sangue」という本。

Dolcicollinedisangue


もちろんこの二人がライフワークのようにかかわってきた
フィレンツェ連続殺人事件がテーマ。
二人の見解ではシリアルキラーは幼いころに母親に捨てられ
父親に育てられた孤独な男性。
十分な教育を受けていないけれど明晰で狡猾、
そして手先が非常に器用。
更に実の父から性的虐待を受けているため
性的に問題を抱えているとされ
それが殺人事件の引き金になっているというのが大筋。
そして母親嫌悪が女性嫌悪となりその嫌悪感の強さが
殺害後の女性の遺体の一部を切り取るなどの
残虐な行為に繋がっているとも。
1985年以降犯罪が起きていないのは
彼が年上の女性との生活を始め、私生活が安定し
人生に満足しているからだという、もっともらしい見解も。

この作品を映画化するという話がにわかに盛り上がっています。
既にハリウッドの配給元二軒との掛け合いが始まっていて
うまくいけば夏前には契約、そして製作に入るとも言われています。
Prestonのなかには既にオープニングシーンの構想もあり
希望キャストもほぼ決まっているとか。
シリアルキラーにはSean Penn(ショーン・ペン)、
マリオ・スペーツィ役には
Giancarlo Giannini(ジャンカルロ・ジャンニーニ)
プレストン役にはBrad Pitt(ブラッド・ピット)。
実現したら面白い映画になりそう。

この事件に関わる人には
様々な困難と災難が降りかかるといわれていて
実際にMario Speziは証言捏造・誣告罪などの疑いで
23日間の拘留生活を強いられたばかり。

また彼らとはまったく別の見解をもち
「Il mostro, anatomia di un'indagine」の著者であり
この事件の捜査に関わった元警察官である
Michele Giuttari(ミケーレ・ジュッターリ)も
誣告罪で追求されています。
彼の見解では犯人は単独犯ではなく
背後に各界著名人・権力者がいるとされています。
それがサタン崇拝の一派で、
悪魔的ミサのための儀式としての
連続殺人であるというのが彼の説。
これは現実味に欠けるけれど、決して完全に否定もできない。

いずれにしてもまだまだ謎が多く、
真犯人も捕まっていない状態で
本当に映画化なんかできるのか気になるところです。

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