スペインサラマンカ・あるばの日々

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至宝!カスタネットおばさんに大喝采!

2019-12-30 23:57:21 | スペインがお題のコラム

まずはいいから黙って、このビデオを鑑賞して頂きたい。

 

 

どうですか?!
なんですかこれは?!
どなたですかこの方?!

曲はサルスエラの代表的な作品の一つ「ルイス・アルフォンソの婚礼」の間奏曲。

慎ましく、でも堂々と入場された演奏者が両手に持つのは、ほんの小さなカスタネット。

これがいざ演奏が始まるや否や…

その軽やかな音色、正確なリズムに聴衆はハッとなる。
あれよあれよと彼女の繰り広げる世界に引き込まれ、身を乗り出し、
大きな盛り上がり後に一気にフィナーレを向かえた途端、破裂するように大喝采!

これが現在世界一と言われるカスタネット奏者。

出身地のメキシコ、そして彼女を育んだスペインが
誇りにする至宝級アーティスト。

ルセロ・テナ(Lucero Tena)氏なのである。



●天才少女アーティストからのスタート

1938年(昭和13年)メキシコシティ生まれ。
元よりスペイン系の血を引く家系。
本名はマリア・デ・ラ・ルス・テナ・アルバレス

病気がちの娘を心配した両親が、クラシックバレエの
教室に入れたのが彼女がわずか4歳の時。

バレエだけに留まらず、スペイン民族舞踏、また近代
スペイン作曲家の作品に合わせたダンスなど幅広く学ぶ中、
早々に天才少女としてその頭角を表していたとのこと。

その当時の輝きぶりを知るのが、
世界三大テノールの一人として有名な、かのプラシド・ドミンゴ氏。




幼少時代、サルスエラ劇団を経営する家族とともに
メキシコに移住したばかりのドミンゴ少年、9歳。


現地子供向け番組で大活躍の、当時13歳のテナ氏を見て
「あの時大ファンでした」と随分後に興奮気味に告白したとのこと。

(その際、テナ氏の旦那様に向かい、“私あなたよりずっと以前に
奥様を知ってたんですよ…フフ”と危ない冗談をかまして
相手をたまげさせたらしい…まさにここに昭和の男、プラシド・ドミンゴありw)

●スペイン移住、カスタネットとの出会い

その後間もなく、ルセロ・テナのアーティスト人生は、
一人のフラメンコ・ダンサーとの出会いから、大きく飛躍する
ことになる。

それがカルメン・アマジャ氏(1918 - 1963)



往来のフラメンコ舞踏の形を突き破り、
独自のスタイルを極め、そのカリスマ性の強さから
生誕100年以上経った今も語られる偉人。

海外での数多くの公演は大成功を収め、
30~40年代のアメリカ・ハリウッドでは引っ張りだこ、
現代フラメンコ舞踏の祖といって過言ではない。

(ゆえに、私達外国人が持つフラメンコに対する典型的なイメージ…
“激しいステップ、口にはバラの花”等は恐らくこのアマジャ氏から
生まれたものかもと思う)

海外公演を数多くこなしていた彼女が、
メキシコ公演の際、体調を崩した共演者の妹のかわりに、と
毎日熱心に稽古場の見学に来ていたルセナに白羽の矢を立てた…それが
すべての始まりだった、と本人は語る。

アマジャ氏の公演に同行の後、スペインに渡って長年
マドリッドの超有名老舗タブラオ、「Corral de la Morería 」に籍を置き、
踊り手として爆発的な人気を得るまでそう時間はかからなかった。
かっこえ~!!

以下いくつかその時代の貴重な動画を…


(1966年の年末特番で放映されたらしいミニコンサート。初々しい。)


(実際に前出のタブラオで撮影されたらしい映画のワンシーン)

ご覧頂ければわかるとおり、カスタネットを巧みに使った
情熱的な彼女の踊りは、大変な人気を博したという。

「ルセロ・テナ仕様のカスタネット」なるものまで
販売されたというからすごい。
アンティークサイトで発見w

その後、年齢を重ねて徐々にカスタネット演奏家としての活動を主とし、
様々なジャンルの音楽の演奏に挑戦し、実に世界各国(もちろん日本
も含む。
)での演奏で大成功を収め、今に至る。


(1977年の思わず息を呑む繊細な演奏。この頃はルセナの絶頂期であり、
彼女の婚約披露には世界中の大使からの祝辞があったとか)

●カスタネットの魅力の昇華

「元々はカスタネット=フラメンコ用の楽器ではなかった」

とインタビューできっぱり発言するルセナ。
なんとなくそう思ってたけど…


「起源の古い楽器であるカスタネットは、スペイン全土において
民族音楽の演奏に幅広く使われ、親しまれていたもの。」

「それをフラメンコ音楽に取り入れたのは(師匠方である)カルメン・
アマジャ氏。その導入は比較的近代のものでなのです。」

(カホンと同じく、フラメンコに欠かせないとされる楽器が
意外と最近の導入であった…というのは面白い)

後に師匠アマジャ氏の教えに従い、なおかつ自分で8つの演奏方法
を開発し、その技術の昇華に貢献したのがルセロ・テナ氏であろう。

そもそもカスタネットはスペインの専売特許製品ではない。

古代エジプトにもその起源が見られ、地中海沿岸を中心として
古くからヨーロッパ全体に広がり、親しまれた楽器。
現代においても各国の民族音楽に幅広く使われている。

ポルトガルも含む、ここイベリア半島において
特にこのカスタネットの軽快な音が大いに人気を得たというのは、
まさに土地柄と歴史が導いたとしか言えないが。


●そして今、再びルセロ・テナ

そのアーティスト人生において、世界各国で常に大絶賛を
受けてきた彼女。

アメリカ・ハリウッドに留まらず、各国首相、ローマ法王から
数々の芸術家を魅了して止まぬその演奏活動は、御年80歳を
超えた今でもイキイキと続けられているのだ!

特に本年2019秋には数多くの全国紙にルセロ・テナ氏の
インタビューが掲載された。

これは主に海外ツアーを活動の中心とする彼女が、
バルセロナのリセオ劇場で久々に生出演したため。

もう何周か廻って来た再ブーム、というか、
彼女を知らなかった若い世代が大興奮だったらしい。
(
Youtubeの検索数が数ヶ月で激増)

そんな再ブームにもにっこりと微笑み返し、
「ダンナの次に大切な」と語るマイ・カスタネットを
もって、引き続き世界中を優雅に飛び回るルセナ。

かっこいい…

彼女をおばさん呼ばわりした人、土下座ね!(爆)

参考資料
https://www.abc.es/espana/catalunya/disfruta/abci-lucero-tena-quien-decirme-castanuelas-llevarian-liceo-201911081246_noticia.html
https://www.lavanguardia.com/lacontra/20191119/471741115629/la-castanuela-es-el-verdadero-simbolo-de-espana.html




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