ツレヅレグサ

雑記と愚痴と、時々小説

Red Sparrow(4)

2006-06-13 22:32:58 | 小説
Red Sparrow -AKASUZUME-

第四話『紅い眼の男』

 俺たちは二刀流の青年、紅の後を追うようにして街の中を歩いていた。
「で、どこへ向かうつもりなんだ?」
「どこかというのは言えないが、すぐに着く。とりあえずは俺の家にいたほうがいい」
彼はそう言ったきり黙って歩き続けた。まあ彼の言う事ももっともだ。
おそらく奴らは最初から見張っていたのだろう。そうだとすれば、あの部屋にいるよりは彼と共にいたほうが安全だ。
俺とドネットは彼に導かれるまま、街の細い裏道に入っていった。といってもそこもきちんと整備されている。
しばらく路地裏を歩き続け、彼は一つの背の低い建物の前で止まった。おそらく彼の家なのだろう。
そのニ階建ての住居の屋根には煙突がそびえている。話によれば、彼は刀匠だから当然なのだろうが。
彼は扉の前まで行くと、一般的なセキュリティロックを解除した。次の瞬間、扉は自動的に左右に開いた。
「こっちだ」
紅はひとことだけ言うと、建物の中へと入っていった。俺たちもそれに続いて中に入った。
建物の内部は、かなり和風な造りになっていた。和室や違い棚、床の間などが備わっている。
そしてその奥には、明らかに作業場と思われる広い部屋があった。その中央に巨大な窯が置かれている。
「ここがあの紅さんの家なのか・・・」
ドネットがしみじみ言った。別に有名人だからってそんな言い方しなくてもいいだろ。
それにしても、さすがは二大刀匠と呼ばれるだけはある。この世界はプログラムで構成されているが、
俺たちはその中でも自由に物を作り出す事ができる。その上資源はある意味無限にあるので、いくらでも作れるのだ。
話を戻すと、紅は刀を囲炉裏の近くに置き、そのそばに座った。俺たちもその近くに座った。
「ききたい事はたくさんあるが、まず最初にこれだけきこう。なんで俺たちが戦っていた事がわかった?」
「俺の勘だ。俺は昔から戦い続けている。だから戦いの気配を読める」
戦いの気配か。そんな不安定なものを察知して俺たちのところに現れたという事か。
「・・・とりあえずはここにいた方がいい。ゆっくりしていけとまではいかないが」
紅はそう言いながら囲炉裏に火をつけた。
「そうさせてもらう。ところで、俺に刀を作ってくれないか?」
俺がそう言うと、紅は別にいいが、と答えた。
「小太刀で、何か攻撃的な細工をしてくれるとありがたい」
「数日あればできる。それまでここにいるつもりか?」
「さあな。俺もこれから先はわからない。奴らの動きも見ないといけないし」
俺はそこまで言って話を止めた。それからしばらく木の燃える音だけがしていた。

 そのころ、軍の方では、ギコルが新しい兵器についての書類に目を通していた。
そのとき机の上の電話が鳴り、彼は受話器をとった。話を聞くと、どうやらあの二人が行方不明らしい。
「ドネット少尉とaaa氏の行方がわからない?・・・なんてこった」
ギコルは受話器を手にため息をついていた。任務早々いなくなったとはおそらく何かあったに違いない。
「まああの二人がそう簡単に死ぬ事はないだろうが、一応捜索だけはしておけ」
「了解。ところで」
受話器の向こうの相手は、そう言って話を切り替えた。
「最近BAI社の行動に不明瞭な点があるそうですが、そちらはどうしましょう」
「俺に聞くな。そういう事は諜報部に言ってくれ。俺は技術開発部なんだ」
「・・・了解。通信切断」
通話を終えた彼は、机の上の飲みかけのコーヒーを飲み干し、再び資料に目を通し始めた。
果たしてあいつらは無事なのだろうか。気になりつつも、日々のノルマは達成しなければならない。
まったく。軍人ってのは結構忙しいぜ。まったくもって暇人なaaaがうらやましい。

 数時間の後。俺は少しばかり仮眠をとることにした。いつでも応戦できるように拳銃を手元に置き、壁にもたれかかった。
眼をつぶり今日一日の出来事を反芻した。その中でも引っかかるのはあの仮面の殺し屋だった。
あいつらのことは決して好きにはなれないだろう。敵なのだから当然とも言えるのだが、今までの敵とは違った。
銃弾を食らってもびくともしない連中だ。おそらく奴ら自身も特殊な能力があるのだろう。
これからどうするか・・・。俺はその事を考えると居眠りなんてしてる場合じゃないと思ったが、
俺も長旅でかなり疲れていたので、そのうち深い眠りに落ちていった。
 ・・・夢の中で、俺は泉の傍に佇んでいた。どこの泉かはわからない。俺の記憶が勝手に作り上げたものだろうか。
俺のいる位置からちょうど反対に、誰かがいた。そいつは俺とまったく同じ声と口調で俺に話しかけた。
「よう。また迷ってるみたいだな」
「・・・迷ってなんかいない。お前は何者だ?」
ヤツは軽く笑いながら答えた。
「お前自身もうわかってんだろ。それより最近油断してるだろ?」
「油断なんかしてないさ。いつ攻撃を仕掛けられても」
そこで俺はしゃべるのをやめた。ヤツがいきなり斬りかかってきたからだ。
俺はいつの間にか手にしていた刀でそれを受ける。鍔迫り合いの状態でヤツは話し続けた。
「一瞬動きが鈍ったぞ。昔のお前はもっと速かったはずだ」
「お前なんかに何がわかる?」
「わかるさ。俺はおまえ自身で、お前は俺自身だからな。お前は以前より人を信じすぎてるぜ」
「それがどうした」
「仲間がいつでも信頼できるとは限らない。今は仲間でも次の瞬間には敵ってのもあるんだぜ。
 それがどんな理由だろうと、裏切りに違いはない。絶対気を抜くな。抜いた瞬間がお前の死ぬときだ」
ヤツはそう言うと鍔迫り合いをやめ、剣を消した。いつの間にか俺の持っていた刀も消えていた。
「頼むぜ。お前が死んだら俺も消えるんだ」
「わかってる」
そのとき俺はヤツの顔をしっかりと見た。それは俺自身だった。
「・・・それにしても俺が簡単に出現できる状態じゃ、緩みっぱなしだぜ。気ぃ引き締めろよ・・・」
その声が消えたときには、ヤツの姿は既になかった。またか・・・。
そのうち俺の意識は暗闇の中に落ちていった。

 俺が眠っていた頃、二人の刺客は街の中心部に位置する時計台の上にいた。
「なかなか厄介な事になってきたようだ。腕を切り落とされるなどここ数年はなかったが・・・」
「しかし我々はどのような傷であれ、すぐに癒えます」
「それはそうだ。だが神経組織はすぐに治るわけではない。まだ、再びまともに戦える程までは癒えていないのだ」
「・・・」
もう一人が口をつぐんだ。しばらく静寂が流れた。腕を切られたほうの刺客はもう一人に写真を手渡した。
「『あの方』よりこの人物を抹殺せよとの命令が出ている。お前一人で遂行しろ」
「了解」
そう言った次の瞬間には、刺客の姿はなかった。腕を切られたほうの刺客は再生したその腕を見つめた。
「腕を切り落とした奴め。必ずこの俺が殺してやる・・・」
そして拳を硬く握り締めた。

 ・・・。俺が眼を覚ますと、もう夜が明けていた。仮眠のつもりがぐっすり寝てしまったようだ。
「ちょっと寝すぎたか・・・」
そのとき、ドネットが扉を開けて入ってきた。どうやらどこかへ出かけていたらしい。
「おはようございます。aaaさん気持ちよく寝てましたね」
「ほっとけ。で、どこをほっつき歩いてたんだ?」
「別に遊んでたわけじゃないですよ。軍から僕の武器が届いたんで、受け取りに行ってたんです」
彼はそう言って武器を見せた。それは片刃剣にリボルバーを組み合わせたような武器だった。
「・・・これがお前の武器か」
「ええ。『ガンブレード』って言って、最近技術開発部が作ったんですよ」
へぇ。でもそれじゃあどっかのゲームの登場人物みたいだな。まったく最近の技術開発部は何考えてんだか。
俺はそんな事を考えながらその異様な剣を眺めた。
 そのとき、紅が部屋に入ってきた。どうやら顔を洗ってきたらしい。
「・・・ほう、変わった剣だな」
彼はそう言いながら剣を手に取った。その片目には眼帯をつけていなかった。
そのいつも眼帯をつけている方は、普通に目を閉じていた。
「紅さん、その片目どうしてつぶってるんですか?」
ドネットが不思議そうにきくと、紅は剣を彼に返しつつ答えた。
「昔いろいろとあってな。今じゃこの目は開かないんだ」
「ふーん・・・」
ドネットは少しがっかりしたように言った。赤い眼でもあると思ったのだろうか。
「ところでaaa。お前たちの追っている敵についてだが」
と彼は突然話を変えた。昨日の続きか。
「何か知ってるのか?」
「2,3の事柄だけだが。一つ目に、奴らは『死の仮面』と名乗っている。そしてはっきり言うが、奴らは特殊だ」
「特殊?それについて詳しく教えてくれないか?」
「奴らには自動的にキズを修復するプログラムが組み込まれているらしい」
キズを修復だと。なるほど、それなら昨日の疑問も解決する。あいつらは撃たれた次の瞬間には傷が治っていたのだ。
そうだとすると、昨日の切り落とされた腕も既に回復しているだろう。なかなか厄介な敵だ。
「他の事は俺にもわからない。だが何か巨大な存在が背後にいる気がする」
「巨大な存在か・・・」
果たしてそんな奴がどこにいるのだろうか。軍の高官を殺して利益を得るような人間なんているのか?
そう思ったとき、俺の携帯端末~着メロが流れてきた。曲は「Southern Cross」だ。
「なんだ?・・・なに!?また軍の高官が殺されただと!?」
俺は思わず叫んでいた。これで五人の軍人が謎の殺人鬼に殺されたというわけか。
チクショウ。一体何のためにそこまでするんだ・・・。
「これで五人目ですね・・・」
ドネットは静かに言うと、軽く目を閉じ、その軍人の冥福を祈った。
「・・・とにかく俺は現場に行ってくる」
「僕も行きます!」
ドネットはそう言って立ち上がろうとしたが、俺はそれを制した。
「いや、俺一人だけでいい。それよりお前にはやって欲しい事がある」

 次回予告
aaaさんに頼まれて行った先で、僕は彼女に会った。
それはまるで、翼を傷めた小鳥のような人だった・・・。
次回『運命の出会い』
あれ、この人にどこかで会ったような・・・?

 作者のつぶやき
第四話書き終わりました。もうすぐ折り返しですね。
今後はドネット×aaaの最強(?)タッグ対『死の仮面』が中心に。
そしてこれから加速する展開、そして明かされる紅の秘密。
後半にも乞うご期待!(ソンナコトイッテイイノカ?

・・・あの、よかったら押してください。
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誕生日過ぎました。akkiyです。

2006-06-13 16:53:46 | 日記
いつの間にか俺の誕生日過ぎちゃってたんですね。
まあ一応チャットでは騒いだが。
それにしてもチャットって面白いな。
何しろ別の地方にいる人と普通にしゃべってるんだから。
さすがマルチメディア社会!
でも皆さん荒らし行為はやめておきましょう。
さすがに不愉快だし叩かれるし最近は無視されるから。
別に俺は荒らしてるわけじゃないからなっ。

と、前置きがテラナガス。
言いたいことはこれだけだったりする。
「みんな!俺のHPでイラスト大会やってるよ!」
何じゃそりゃと思った人はブックマークの「akkiyの小説広場」をクリック。
そこから俺のHPに行けます。

ではでは。