前橋の中心市街地の真ん中に古びたビルがあります。１階は改装されていて使うことは可能ですが、テナントはなく空き家です。２階以上は使うことができない状態です。前橋市千代田町２丁目８－１９、旧麻屋呉服店店舗です。所有者は（株）麻屋、今は実業はしていない資産管理会社です。
この建物は、昭和９年に麻屋呉服店の店舗として作られました。北関東最初の「百貨店」の色合いを持ったお店でした。
この建築物は国の登録文化財に登録されています。国の文化財データベースをごらんください。
登録されたのは２００７年５月１５日、３年前のことなんです。
「前橋商業繁栄の歴史を伝える」文化財であり、「国土の歴史的景観に寄与している」として登録されました。
この建物の建築物としての価値は、設計が高堂徳治、施工が木田組というところにあるのです。木田組、木田保蔵という建築請負人が率いた鉄筋コンクリート造の技術者集団がつくった建物なのです。
木田保蔵率いる木田組は、明治末から昭和初期に、鉄筋コンクリート造の商業施設を全国各地につくっています。銀座松屋百貨店が代表作です。木田保蔵のことはコチラを見て下さい。
木田組が手がけた鉄筋コンクリート造の建築物は、残っているのはほんの僅かなんです。
この旧麻屋呉服店店舗が解体されることが決まったという話を聞きました。（株）麻屋がもう維持して行くことができなくなったから取り壊すということのようです。
もとより、一私企業の所有資産ですから、企業経営の必要から取り壊すのであれば、それを止める手立てはほとんどありません。
それに老朽化もかなりです。（株）麻屋は善良な管理者としてちゃんとしたメンテナンスをしてきませんでしたから、これを残してゆくためにはかなりの資金が必要だと思います。
この二つのことを理解していてもなお、ヒゲクマは、二つの疑問を感じています。
一つは、この建物は都市再開発計画の地区の中にあります。そして、（株）麻屋が再開発事業に参加しない場合は、土地は前橋市が買い取る約束ができているはずです。
ですから、建物の取り壊しは、同時にこの建物のたっている土地を前橋市が購入することを意味しています。
前橋市は、全く事業化の見通しの立っていない再開発事業用地として、この土地を購入するのでしょうか。購入するとすれば、それはこのまちの市民の新たな負担になるのです。
八番街の再開発事業の見通しはあるのでしょうか。ないのに、土地購入だけが継続しようとしています。これが第一の疑問です。
もう一つの疑問です。調べてみたら、この建物はまだ登録文化財です。登録を抹消されていません。抹消するのは文化庁の仕事で、文化財審議会に諮ったうえで行わなくてはなりません。
その前に、（株）麻屋が所有者として建物の解体工事をしようとすれば、文化庁に対して登録文化財の「現状変更」の届出が必要です。届出がなされると文化庁は調査の上、届出を「了」とするかしないか、返事をします。文化庁のこの返事はまだないようです。
でもね、こういう手続きを（株）麻屋が一人でできるはずはありません。必ず前橋市がお手伝いをしているはずです。
それに、登録文化財になった建物が、登録後たった３年ちょっとで壊されたという話は、ヒゲクマは聞いたことがありません。恐らく全国でも始めての事例になると思います。
登録文化財に登録するときには、所有者がその建物を利活用しながら維持して行く意思をしっかり持っていて、それが可能であることをきちんと調査したうえで登録されるからなんです。
ヒゲクマがこのことをよく知っているのは、前橋るなぱあくの「もくば館」の登録文化財登録を前橋市にお願いしてやってもらった経験を持っているからなんです。すぐ壊されることが分かっているものを登録するなんてことはありえないんです。
登録後僅か３年ちょっとで、登録をしたた建物を壊し、登録抹消するというようなことがあってよいはずはありません。もしそうであれば、そういう建物は登録すべきでないのです。
穿って言えば、登録すると固定資産税を減免することが可能なので、（株）麻屋の固定資産税負担を軽くするためにだけ登録文化財制度を使ったと思われても仕方がないと思います。
前橋市は、ちゃんとした説明をする責任があります。一つは、八番街の再開発計画とこの建物の取り壊し及び土地の取得について、もう一つは、僅か３年少しで現状変更しなければならないような建物をなぜ登録文化財登録することを許したのかということについてです。
旧麻屋呉服店店舗を登録文化財登録後僅か３年少しで解体してしまうようなことがあれば、前橋市の文化財行政は、今後、全国の多くの人々から信頼されなくなると思います。それでよいのでしょうか？
どうしてそのようなことになったのか、私たち市民にわかりやすく説明をして欲しいと思います。このまちの行政が、このまちの歴史と文化を大事にしているのであれば…
「麻屋百貨店解体問題」に関する記事は昨年の１１月１６日から書いています。まとめて読みたい方はコチラをご覧ください。
おまけにもう一つ…
旧麻屋呉服店店舗の少し東にある「ロッテリア前橋店」、今月で閉店するそうです。ロッテリアが食べられなくなりますから、お急ぎください、今月末までです…
直前に、「前橋の秋が真っ盛りになってやっと撮れた子猫、息子に送る中華おこわづくり…、おまけはまりなちゃんが描いてくれたキキ」もアップしています。よろしくご覧くださいな…
写真は
クリックするとポップアップしますよ
次回の「ヒゲおじさん厨房に入る」（朝日新聞群馬県版）は、１１月２７日掲載予定です。何にしようかな…
直前の記事、キキちゃんに喜んでもらえたようで。。。娘に伝えたいと思います♪お礼も遅れてしまいましたが、ジャムすごく美味しかったです♪
一つ言える事はインドで老朽化したビル崩壊で４０人も死者を出したようにその前に何とか手を打つべき時ではないでしょうか。
その時は「一企業のやることだから」「使い勝手が問題かも」なんて思っていたのは事実ですが、間違ってました。企業の理屈じゃ景観は守れないんですね。
思い立って、麻屋、ロッテリア、ケンタッキーなどの店を見に行ってきました。町中はがらがらで、やってる店を数えた方が早そうです。この町は、町中からお店も、お客も、若者も、学校も、神社も、賑わいも、みんな追放してしまったんでしょうか？
そうですね、特に維持管理費用のかかる建物でつくりだされている景観については公共が積極的に関与するか、「財団」形式で広く資金を集めて維持するかしないと、景観の保持は難しいと思います。
前橋市の景観保護条例でどのような景観が守れるのか考えると、ほとんど守れないという答えしかありません。残念なことです。
おゆきさん
コメントの一部を削除させていただきました。正しいか間違っているかでなく、個人にかかる情報の取り扱いには慎重でありたいものですから。
そうですね、麻屋のビルは建物としてはもうダメが出ていますよね。お金をたっぷりかけられないなら、解体が望ましいとヒゲクマも思います。ただ、誰が、誰のお金で解体し、土地は誰が誰のお金で始末するのかには無関心でいられません。
まりなママさん
ほんとうです。千代田町はどうなっていくのでしょうかね。
合併で人口が３０万人を超えてしまったんで「事業所税」の課税団体に指定されちゃったんですね。「事業所税」をご存じない方は、前橋市のＨＰのしたのアドをご覧ください。
http://www.city.maebashi.gunma.jp/kbn/00600056/00600056.html
都市環境の整備に使う目的税ですけれど、整備するべき都市が失われ筒あるのですから、困ったものですよね
そうそう、大事なこと、まりなちゃんによろしく！
こんばんは。
ヒゲクマさん
ご縁がありまして、私の職場の幼児教室が銀座一丁目の住民となりました。
よろしくお願い致します。
ロッテリアの閉鎖にはビックリしましたし、がっくりしてしまいました。
なぜって、そのお隣に引っ越してきたのですから・・・
最初はニチイの中にありました。
サティに移り２５年、今回サティ閉店により、古巣に戻らせていたさいたと言うことになります。
ケンタッキ－も閉鎖ですか！！（。。；）
でも、心機一転踏ん張れる限り頑張っていきたいと思います。
強い味方のおゆきさんも近くにいますしね。
麻屋さんの中には、アンティ－クなエレベ－タ－があるはずですね。
見たかったですね。
なぜかそれが町のシンボルになるように思っていたのですが・・・
新しいものは作れますが、古いものは壊してしまうともう作れませんものね。
エレベ－タ－見てみたかったです。
新しい教室がオープンしたのは気づいていました。まちなかをにぎやかにしていただいてうれしいです。
麻屋の建物が前橋の町のシンボルになれるかどうかは、このまちの人たちがそう思い、愛着をもって、後世に伝える努力をすることなしにはありえません。ひとり（株）麻屋まかせでは無理なことなのです。この建物の去就が、一部の人たちの相談だけで決まってしまったことに、ヒゲクマは不信を抱いています。
もっと早くに、問題を明らかにして、みんなで知恵を出し合い、行動を起こしてそれでもダメであったのならば仕方のないことなのですが…、残念です。
前橋市の市政に詳しい方に聞いてみました。『穿った見方』が事実のようですね。その方は『金の流れ』に憤りを持っていましたが（当然ですし、私もそう思いますが）、私は『前橋市の品格』を下げることに深く悲しみを覚えます。品格は金じゃ買えないですから・・・・・。