「イトーヨーカドー前橋店閉店を考える」の第二回は、18日に公表された地価公示を見て思ったことです。
地価公示制度では、群馬県内で標準地として選定されている423地点について、毎年1月1日現在の価格を公示します。
これにより、地価の変動が分かり、公示価格は土地の取引価格の指標として使われています。
今年の地価公示では、「4年ぶり、全地点下落」(上毛新聞見出し)というのが特徴です。
標準地のすべてが、前年の公示価格を下回る公示価格になったわけです。
写真は、上毛新聞の記事の一部、県内の公示価格の高い地点とその価格の一覧が表示されています。クリックして、ポップアップ画面で見てください。
この表で、気のつくことをいくつか書いておきます。
その一つは、前橋市と高崎市の最高価格の開きと最高価格を示している場所の違いです。
高崎市の最高価格は、「ハ島町63-1外」(商業地)で409.9千円/㎡です。
この地点は、高崎駅の西口前、ワシントンホテルのあるあたりです。
前橋市の最高価格は、「本町2-2-12」(商業地)で200.0千円/㎡です。
この地点は、本町通りの大気堂の近く、八百屋のあるあたりです。
土地の価格というのは、その利用価値で決まります。
高崎で一番利用価値の高いところは高崎駅前で、前橋の本町通りの倍の地価負担をしても利用価値があるということになります。
ちなみに、前橋駅近くの「表町1-21」(商業地)は86.0千円/㎡で、高崎駅前の1/5ほどでしかありません。前橋の中心商業地の半値にもなりません。
高崎は、高崎駅周辺に土地の利用価値が最も高い地域があり、そこを中心に地価形成されているのです。
これに対し前橋は、前橋駅周辺は土地の利用価値が低く、中心商業地に最も利用価値の高い地点があるのです。
前橋駅の周辺は、住宅地並みの地価しか形成されていないのです。
写真は、前橋の「千代田町4-7」(商業地)スズラン百貨店の近くです。この地点の公示価格は、160.0千円/㎡です。
高崎でこの地点と比較できるのは「連雀町85」(商業地)で、237.0千円/㎡です。
高崎市連雀町と前橋市千代田町4丁目の価格は1.5倍弱です。
高崎駅前と本町通りほどの大きな価格差はないのです。
これは、高崎駅周辺の地価が突出して利用価値が高いことを示しています。
このことからは、次のようなことがいえると思います。
高崎は、高崎駅を中心に町が形成されています。かつては違っていたのですが、新幹線駅ができてから高崎市は計画的に駅中心のまちづくりをすすめてきました。その結果が、地価にもはっきりでています。
前橋は、昔のまま、中心商業地に最高価格の地点があります。今でも、まちの中心は中心商業地にあるのです。前橋駅を第二の商業核にしようとしたけれど失敗していることが地価にもあらわれています。
今度は、住宅地を見て見ましょう。
写真は、前橋の住宅地で一番価格の高かった「大手町1-10」です。価格は、90.8千円/㎡です。
高崎でこの土地に比較できるのは「柳川町147」です。価格は107.0千円/㎡です。
価格差はそんなに大きくありません。価格の変動にも大きな差は見られません。
写真は前橋市「南町4-21」で前橋商業高校の北の地点、価格は83.6千円/㎡です。
これに比較できる高崎の地点は高崎駅東の「岩押町16」で、価格は90.4千円/㎡です。
大きな価格差はありません。
このことからは、次のようなことがいえると思います。
前橋も、高崎も、住宅地の地価に大きな差がないということは、「住む」「暮らす」という点では同じ程度の評価を得ていると考えられます。
ただし、高崎は商業地と住宅地の価格差が大きいのに対して、前橋のそれは小さいです。商業地の評価には大きな差が出ているわけです。
前橋の地価の変動を見て見ましょう。
商業地は、「本町2-2」は前年に比べて6.1%下がっています。「千代田町4-7」は7.5%も下がっています。
これに対して、住宅地は「南町4-21」が2.6%の下落です。
写真の「日吉町2-31」も2.7%の下落、住宅地の下落幅はおおむね3%以下なのです。
商業地の地価の下落幅が大きく、今年もまた商業地と住宅地の価格差が縮まってしまいました。
高崎はというと、商業地と住宅地の下落幅に大きな差はなく、同じような比率で価格が下がっています。
前橋の商業地の価格の下落が目立つのです。
このことから次のようなことがいえると思います。
前橋市の中心商業地に対する施策の効果が出ていないということです。8番街の再開発も進まず、空き店舗対策も前進していません。こういう施策がうまく進んでいないことが地価にも良くあらわれています。
地価公示のデータを見て、ヒゲクマはこんなことを考えています。
前橋のまちは、もともと前橋駅中心のまちではありませんでした。
そして、まちの中から歯の抜けたようにいろいろなものが失われはしましたけれど、今でも中心商業地中心にまちが出来上がっているのです。
そのまち中心に「スズラン百貨店」があります。
前橋のまちは、明らかに「スズラン百貨店」を核にしたまちなのだと思います。
だから、やっぱり中心商業地をしっかりさせ、中心商業地の利用価値高めてゆくことが大切だと思います。
そのことが、地価の低下を防ぐために絶対に必要なことだと思います。
イトーヨーカドー前橋店が消える前橋駅周辺は、住宅地並みの地価形成しかできていないのが事実です。利用価値が低いのです。
このまちに、二つの中心を作ろうとすることは、どちらも殺してしまうことになるような気がします。
「イトーヨーカドーが閉店する前橋を考える」
第1回は3月21日「百貨店の消えた街」、
「第2回は3月24日「前橋の中心はスズラン百貨店」、
第3回は3月28日「大手流通業者に食い荒らされた街」、
第4回は4月9日「たった23年のヨーカドー、まちには50年以上続く店がたくさんあるぞ」、
第5回は4月18日「前橋サティーの閉店」、
第6回は4月27日「熱血店舗開店支援事業をイトーヨーカドーが撤退した曽我のビルに適用するの?」です。
第7回は5月12日「市民を惑わす前橋街づくり協議会の「駅周辺再生」提案」
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