読書の森

松村由利子 『少年少女のための文学全集があったころ』前篇



著者松村由利子さんは歌人である。
新聞社勤めの後フリーのライターになった。

「耳ふたひら 海に流しにゆく月夜
鯨の歌を聞かせんとして」
感性豊かな、爽やかな美貌の人だ。

昨年上梓された『少年少女のための文学全集があったころ』には夥しい数の童話や小説が紹介されている。

馴染み深いところでは『赤毛のアン』『星の王子さま』『ちびくろさんぼ』、『小公女』などである。
買って貰った本を読んでから、著者は虜になって行く。
学校の図書室や借りた本、チャンスがあれば本をゲットして貪り読む。
音楽会の最中に授業中隠れて、凡ゆるところで夢中になって読む。

私も同様の過程を辿ったので、この著者の体験談が非常に懐かしくなる。
おそらく本好きな仲間の殆どは、寝食忘れて読み耽った体験談があると想像する。


読んだ本の記憶で、私はタイムスリップが出来るのだ。

昭和30年代、東急池上線の千鳥町駅前にあった本屋さんに私は飛んで行く。
そこに少年少女世界文学全集(題名は多少違いかも知れない)、少年少女日本文学全集が置いてある。
お小遣いの大半を叩き、月に2冊は買った。

その頃は町の図書館はごく少ない。「学校の図書室ってあったか?」と思う。
手に入れる場所は古本屋、その頃あった貸本屋、それから親が読む雑誌類、読んじゃ不味そうなものまで引っ張りだした。
婦人雑誌の袋綴じ部分を読んでさっぱり実感がわかないのもあった。

著者の読書歴は私より格調高いが、不遜な言い方をすれば、人間の感受性は同じ読書歴を持つことで歴史を超えると思わせた。

その一つに『小公女』の甘パンの話がある。

読んでいただきありがとうございました。

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