透明人間 その1
多彩に変化する夕暮れの空である。 高台にある二宮沙耶の家から、暮れなずむ街に灯が燈るの...
透明人間 その2
沙耶は一哉がどこかで生きている様な気がする。 それも自分の住処のごく近くに居る様な気が...
透明人間 その3
一哉は、あのクリスマスの夜自動車事故で死んだ。 沙耶と別れた後、彼は暗い夜道を独りで...
透明人間 その4
横山は蒼白な顔で、一哉の身体を車に運ぶ。 気分が悪く吐きそうになった。 ようやっとトラ...
透明人間 その5
それは賃貸マンションの一室だった。 サークル仲間の木村仁が住んでいる。 大学生にしては...
透明人間 その6
30分後、仁は部屋を出た。 透明感のある口笛を吹いている。 その木村仁の身体の中に工藤一...
透明人間 その7
沙耶は先刻からひどく身が軽くなったのを感じている。 一哉の幻や囁きはどこか遠くに消えた...
透明人間 その8
沙耶にとって安全無害な男に過ぎない木下仁が、ひどく気になる存在になった。 一哉の行方...
透明人間 その9
二人の通報によって、捜査が開始され、一哉の白骨化した遺体が見つけられた。 当然、掘削...
透明人間 最終章
11月の終わり、爽やかな秋風の吹く休日、二宮沙耶と木村仁はある地方都市の岬に立っていた...