映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はクリムトやエゴンシーレなどのウイーン世紀末美術にスポットをあてたドキュメンタリー。「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」です。
今回の作品は、昨年に東京都美術館で開催された「クリムト展 ウィーンと日本 1900」の特別タイアップ企画で、クリムトとエゴンシーレのみならず、当時のウイーンの芸術全般にスポットをあてた美術ドキュメンタリーで、この種のドキュメンタリーとしては、かなり異色な作品であり、とてもおもしろい作品でした。
エロスと退廃的な芸術作品を生み出したクリムトとシーレ。その作品からも彼らのテーマ性は明確ですが、今回の作品で二人の芸術家の人間像をかなり具体的な解き明かしています。その分析は当時の生活や風俗、さらに女性関係や性愛などの画家の性癖にまで切り込んでいます。
例えば、クリムトは多数の女性をモデルとして描き、上流階級の女性と肉体関係を持ちながら彼女らをパトロンとして制作の資金の糧とするなど、物心両面で彼の作品を支えてきた事実やシーレの作品の大半をなすスケッチのような作品は、エロスの追及する上で欠かすことのない芸術手法であり、そうした行為が誤解をまねき早世していった事実、さらにヨーロッパの芸術文化取り入れて発展していったウイーンにおいて、世紀末のい芸術家は、エロスをキーワードに新しい芸術運動を興していったことなどが、評論家や研究者の証言を通じて紹介されています。
ともすると作品と言うフィルターでしか芸術を観ていない側面がある絵画芸術の世界。今回の作品は芸術家の人生や当時の文化風習など詳細に調査分析することで、当時のウイーン世紀末芸術がどのような芸術であったかが理解でき魅力的なものに感じられました。
様々な芸術ドキュメンタリー作品を観てきましたが、今回に作品は上位に位置する作品で美術ファンには必見のドキュメンタリー作品です。