岐阜県美術館でディアスポラ・ナウ!〜故郷をめぐる現代美術が開催中です。ディアスポラとは、古代ギリシャ語に由来する「まき散らされたもの」を意味し、第二次大戦後はユダヤ人の民族離散を、現在においては中東情勢などにみられる避難民による離散などを意味しています。
今回の展覧会は、中東出身の5人の現代美術家による作品を紹介しています。作家たちは、故郷を追われヨーロッパで各地に拠点を置きながら、自らの故郷への思いを絵画や彫刻、オブジェ、映像などを通じて自らの立場を主張しながら表現しています。
そこには、現代美術の持つ社会性が色濃くあり、どの表現も明快なメッセージ性を持ち誰もが理解しやすい作品です。
5人の作家は、政治色が強くあり相反する権力へ抵抗をアートで主張していますが、加えて日本人アーティストの現代美術ユニット、キュンチョメも東日本大震災の被災地を通じてディアスポラを表現し(正確には類似性ですが)決して遠く離れた世界ではない問題であることを示唆しています。
今、現代美術がもてはやされている状況下で、現代美術の表現を決して表面的な面白さだけにとどめることなく、こうしたテーマ性の強い展覧会で、作家が意図するものや表現の中にある観る者の深い思索として楽しめるのではないかと感じました。