浅田美代子45年ぶりの主演作品で、2017年に投資詐欺によりタイで拘束された山辺節子をモデルにした映画「エリカ38」を観てきました。
今回の作品、当時テレビ報道でも話題となった若作りの女詐欺師が臆することなくタイ警察やマスコミと話す姿が印象的でした。当時のニュース報道を見て興味を抱いたのが樹木希林さんで、親友の浅田美代子に主演を打診したことでこの映画が実現しました。封切り後のラジオ番組で浅田美代子さんがインタビューに答えているのですが、当初は主演には消極的だったそうですが、今回の作品を観ると、浅田さんが完全にはまり役だったことがわかります。
内容は、自称38歳のエリカが同棲中のタイの自宅で逮捕されるところから過去にさかのぼり、スナックのホステスとネットワークビジネスの二足の草鞋の彼女が、謎の女性実業家から投資家の男を紹介され、ビジネスグループを広げながら投資家の男に心酔し、破たんしていく姿を被害者の証言を交えながら進んでいきます。
面白いのは、被害者の大半が彼女に対して被害者意識がないことで、浅田演じるエリカと木内みどり演じる女性実業家に平岳大演じる投資家の三角関係を注視すると、この事件の本質が見えてきます。浅田自身、時間ですよの美代ちゃんのイメージとバラエティー番組での天然キャラもあって悪女のイメージがないのですが、山辺節子の過去の境遇も含め、かなり詳細に描いていることもあって、面倒見がよく男性に対して可愛らしい部分もふくめ、第三者には、どこか憎めない存在で被害者も加害者も人間の欲望によりさらけ出された愚かさや醜さに表出する人間味のあふれる作品に仕上がっています。
僕は客観的に作品を見ていて、希林さんが親友浅田の代表作にしたかったとの思いが伝わり、浅田美代子の演技に呼応するかのように同世代以上のベテラン俳優の演技も秀逸でした。映画館には、いつもと違う同世代の女性が多く見受けられましたが、彼女たちが、どのように感じたか聞いてみたいです。
映画は、日本の犯罪史を題材にした作品が多くあり、秀作も多くあります。今回の作品も女性が犯した犯罪史の中で記憶に残る秀作に数えられると思います。