5月10日(火)AM9:30、私、出雲あきらは、成田空港JALカウンター前にいた、ある大きな物体とともに。それは直径40cm、高さ40cmの円筒形の物体で、重量にして35kg、とにかく重い。カウンターの女性がつくり笑顔とともに言った。「お客様、パリ経由ニースまでですね。そちらのお荷物は貨物室にお預けですね。」私は瞬時に言った「いや、手荷物で席まで持っていきます。」「えっ」カウンターの女性から笑顔が消えた。「あの、中身は何でしょうか?」「映画のフィルムです。これからカンヌ映画祭で上映する映画のフィルムです。とても貴重なものなので、手荷物で持ち込みます。」私はキッパリと言った。そうです、完成したばかりの映画「亡国のイージス」の英語の字幕がついたプリント全7巻をカンヌで上映するために持っていくのです。
空港の手荷物検査場では、もちろん1巻ずつ入念なチェック。検査官は何となく疑いの目で私の顔をじっと見る。やはりエッチな映画のフィルムを持ち込むような顔に見えるのか・・・。
もちろん、JALの機内でもスチュワーデスさんの笑顔の後ろに「何でこいつはこんな物を手荷物で持ち込むんだよ」と心の中で言っている気がした、考えすぎであろうか。でも、パリまではJALの機材は収納スペースもあったので何とかなったが、問題はパリ→ニース。広いシャルルドゴール空港の乗り換えには大変距離がある。しかし、カートに乗せて押せばいいので楽勝。ところが、ニース行きはなんとゲートからバスで飛行機まで移動。皆さん、もうおわかりですね。バスで飛行機までいく場合、バスを降りてからは地上からタラップを上がらなければなりません。そうです。重いプリントをかかえて飛行機のタラップを上がるのです。よし、と気合を入れて持ち上げてタラップを数段上がるものの、何とタラップの途中で渋滞してストップ、なかなか上がれません。「重い、早く進めよ」などと口走りつつなんとか機内へ。ニース行きエアフランスA-300はオールエコノミークラスの実に狭い機内。年配のスチュワーデスに「これはカンヌ映画祭で上映するフィルムなんだけど」と言うと、満面の笑顔で「それはすばらしい」と言うものの真顔に戻って「上の棚に上げて」。まず上の棚まで一人で持ち上げことは不可能な重さ。親切なフランス人のおっさんに手伝ってもらって何とか持ち上げるものの、大きすぎて棚には入るわけない。「入らないよ」とスチュワーデスに言うと、ならこっちへと、飛行機前方の収納スペースに入れてくれた。「オイ!!最初からここに入れさせてくれよ!」と日本語で思わず独り言。到着予定時間より1時間遅れてニースに到着、タクシーに積み、カンヌに着いたのは成田空港のカウンターから17時間が経過していた。
とにかく、映画「亡国のイージス」のフィルムは無事にカンヌに到着したのでした、
つづく。
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