花咲く丘の高校生

平成時代の高校の授業風景を紹介したり、演歌の歌詞などを英語にしてみたり。

初恋、一声、戸隠の山

2023-01-06 | 思い出
sakurako62(さこ)さんが発掘してくれた読者0人だった過去ログです。

初恋、一声、戸隠の山

 今から70年近く前のお話です。
 高校2年生の夏、学校登山で信州の戸隠山に登った。男女共学になってまだ三年目の我が高校は(ちなみに、このときの校長先生は、雅子皇后さまの尊祖父、小和田毅夫おわだたけお氏である)、2年生300名のうち女子はたった25名だった。
 私は同級生の和枝に淡い恋心を抱いていたが、当時は異性と話すことなど皆無(ご法度)だった。

 戸隠山の最難所『蟻の塔渡り』に出る『胸突き岩』の岩壁を、4~5名ずつのパーティーで鎖を頼りに登っていく。
 女子のパーティーの最後尾に和枝がいた。彼女は岩場の真下にいる私の10メートルほど上をのろのろ登っていた。
 「お~い、早く登れよ!」思いとは逆に、乱暴な口調になった。
 「ゆ~くんこそ、ぐずぐず言ってないで、早くおいでよ~」
  ・・・確かに和枝の声だった。
 嬉しかった。僕の名前を知っていてくれたこと。声をかけてくれたこと。
  ・・・しかも、あの甲高い声。
 ただそれだけだった。そんな時代だった。
そして、次に彼女と声を交わしたのは、30年後の同期会の席だった。

コメント (10)
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