(承前)
パート3 Great Rewiring、子供がスマホを使う時代
第5章 4つの害悪(社会的孤立、睡眠不足、注意散漫、スマホ浸け)
- 2010年代初めにこの4つの子供に対する害が急激に出始め、子供のメンタルヘルスに悪影響が出た、スマホに耽ることによる機会損失は多大である
- スマホ過剰利用により子供同士が顔を合わせて遊ぶ時間が激減した
- スマホ過剰利用により子供の睡眠時間が激減し、質も低下し、不安に襲われる子供が増えた
- スマホの通知機能により子供は一つのことに集中力を保つことができなくなった
- スマホ過剰利用はアプリ開発においてアプリから離れられなくなるように設計したせいだ、ギャンブル依存症やドラッグ依存症と同じスマホ依存症になった
- これらの害悪が急激に来た子供のメンタルは非常に悪化した
第6章 なぜSNSは少年より少女により害をもたらしたか
- SNSを3週間使用しないとメンタルヘルスは改善したとの報告がある
- 女子は男子よりSNSを利用している、特にビジュアル系メディアであるインスタやTik-Tok
- 2つの大きな動機としてagency(目立ちたい、影響を与えたい)とcommunion(繋がっていたい、帰属したい)がある、男子はagency activityに、女子はcommunion activityに惹かれる、その結果、フラストレーションがたまった
- 女子が男子より悪影響受ける4つの理由、第1に女子は見た目を気にするのでインスタなどで比較されると落ち込む、第2に女子はSNSを使って他の女子を攻撃しがち、第3に女子はSNSで他の女子と不安を共有する、第4に男はSNSを使って女子を利用する、例えば言い寄ってヌード写真を遅らせてそれを拡散するなど
- 以上の結果、女子は男子より実世界の交流よりバーチャル世界の薄い繋がりが多くなりメンタルをやられた
第7章 男子には何が起こっているか
- 2010年以降、男子は女子より大きなリスクにさらされた、スマホにより、引きこもりが劇的に増えた、レールから外れたと感じる人が増えた
- 男子が女子よりそうなった理由は、スマホによりポルノサイトへのアクセスが容易になったことがある
- 更にビデオゲーム中毒を多く出したのが男子だった
- 女子はスマホを通じて外の世界と接触したが男子は逆になった、現実世界と乖離し、規範ある生活ができなくなった、ゲームには社会的価値観の教育的効果はないからだ
第8章 霊的高揚と、堕落
- 現実世界では宗教儀式など共同行動をとり、神聖な気持ちになるがバーチャルワールドではそのような効果は得られないどころか神を冒涜する
- 現実世界では人々が集まって行動する機会が多い、一緒に食事をするなど、バーチャル世界ではこれがない
- 現実世界の宗教儀式などは静謐である、気持ちを落ち着かせることができるがバーチャル世界は反対で常に通知が届き、瞑想などを邪魔する
- 精神世界の特徴は自己超越があるがSNSは自己中心である
- 宗教世界は他人を批判しないがネット世界はそれが盛んである
- 自然の偉大さや自然への畏敬はネット世界ではむりである
- 現実世界では考えること、繋がること、精神的に昇華することへの憧れがあるがネット世界ではない
パート4 健全な子供にするための共同作業
第9章 共同行動の準備
第10章 政府とハイテク会社はいま何ができるか
- 政府、地方政府はwebのリスクにさらされている子供を守るルールを作るべき、例えば年齢制限など
- テック会社も子供の年齢認証などの利用制限をハードやソフトに組み込むべき
- 現実世界での親の子供に対する育児放棄の罰則が拡大解釈され厳しすぎるのを修正し、親の監視のないもとで子供どうしが遊べる環境を作るべき、学校の前の通りを登校下校時に一時的に通行止めするなど
第11章 今学校ができることは
- スマホ禁止と遊ぶ時間を増やすことが学校に求められる、コストはかからない
- スマホ禁止は学校にいる間のすべての時間とする
- 遊びの時間の増加は放課後の一定の時間を自由に学校で遊ばせることだ、もちろんスマホは禁止、親や先生の監視は最低限で
- これらを実施するには地域全体で合意して全員で取り組むべき
- 男子のメンタルの悪化に対しては男性教師の増加、技能科目の増加などを実施
第12章 親ができること
- 現実世界で子供を適切に育てるには、子供にある程度の自由と責任を与えることが大事、バーチャル世界では子供にスマホを与える時期を遅らせることが大事
- バーチャル世界ではまずガラケーを与えることで他の親と共同歩調をとれ
- 子供に現実世界の楽しさを教える機会は多くある、第3者が運営するキャンプなど、子供がもっと大きくなればバイトさせるなど、その際、子供を信用することだ
- スマホを使い始めるときは使用リミットを設定すべき、他の親と共同歩調できればよい
結論 良き子供時代を取り戻す
もっとも基本的な対策
- ハイスクールまではスマホを与えない
- 16才まではSNSをやらせない
- 学校でスマホ使用禁止
- 親の監視がより少ない自由な子供同士の自由な遊び時間の確保
これらが地域共同でできれば2年以内に子供のメンタルヘルス悪化は改善する、声を上げよう
スマホベースの子供時代がおかしいと感じたら声を上げよう、そうすれば事態は変わるだろう、そして親、学校、先生など共同して改善のアクションを取ろう
以上がこの本の紹介だが、なかなか事態は深刻だと思った、アメリカのネットニュースを見たら、最近、確かカリフォルニア州で学校でのスマホの使用禁止の条例ができたと報じていた、著者らの提案が徐々にでも浸透を開始したのであろう。良いことではないか。
会社や電車などでスマホ画面をひたすら見ている人は周囲との会話や接触を拒絶しているように見える、あるいは会話する積極性や能力に自信がないのでひたすらスマホに逃げているようにも見える。
また、この本を読んで初めて知ったのだが、日本語の「引きこもり」やスマホの「絵文字」という言葉がそのまま英語になっている。そして、引きこもりについてはかなりの量を割いてその発生の背景、特徴などを書いており、長らく日本特有の現象と考えられていたが、最近ではアメリカや他の国の若者でも発生しているとの著者の見解を披露している
いろいろ考えさせられる著者の分析や改善提案であった、著者の見解には同意できる部分が多かったが、本書ではアジア、日本の状況がどうなっているのかほとんど取り上げていない、そこが日本人としては不満が残った、ただ、これは日本やアジアの研究者がやるべきでしょう、日本学術会議の教授らが存在意義を示すいい機会ではないか
(終わり)
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