おかえりのすけBOOK

bookbar4のメインキャラクター、おかえりのすけのページ

清宮質文のまなざし

2004-10-11 | ギャラリー
高崎市美術館「せいみやなおぶみのまなざし」展(~10/31)。清宮(1917-1991)の、淡い色合いながら輪郭を描く線がくっきりと浮かぶ木版画が好き。版木の展示もあって、凹版で構図と輪郭を摺り、凸版で色を入れていく方法がよくわかった。ラインをはっきり出すためにずいぶん力が必要だったようで、毎日腕立て伏せを欠かさず、アトリエには鉄アレイが残されていたとのこと。
描かれるものは蝶やガラス、小さい動物、ランプ、月、トンネル、屋根、塀……。とくに好きなのは、水面から海坊主のような顔を出す《泳ぐ人》の水面下の手足のライン、の~の~鳥の兄貴のような《夕日のとり》、それから《さまよう蝶》など。右上図版は《夏の終り》。
雑記帳、と称されてあった大小の帳面は、すべて作家自らが洋紙や和紙、ノートを断裁したものなどを揃えて綴じたという。制作についてのメモのほか、囲碁、料理、スポーツメモも。アトリエの本棚には、昭文社の、日本と世界のミニミニ地図帳があった。
図録は1500円。編集:住田常生(同美術館) 寄稿:新井昭彦、三浦誠 翻訳:森元ルミ子、住田常生 制作:立川潔(空想図鑑)。作品資料はくわしくまとめられているが、「内省する魂の版画家 清宮質文展」(2000、小田急美術館)の図版と比べると、作品の色合いや質感がよく出ていなくて残念。(参考:ギャラリーときの忘れもの通販ショップ
清宮作品は本の装丁にもよく用いられている。堀江敏幸『雪沼とその周辺』の表紙カバー挿画に《野の果てに》、原田康子『蝋涙』カバー挿画に《キリコ》、扉に《コップの中の蝶》、吉田健一『新編 酒に呑まれた頭』ちくま文庫カバー挿画に《壜の中の魚》など。

最新の画像もっと見る