そもそも始まったのはDOFアダプタ。もう10年以上前のmini35digitalである。被写界深度の原理を知った時の興奮を今も忘れられない。あまりに単純であまりに身もふたもない原理。会社中を走り回って「これを買ってくれ!」とお願いしたがシカトされた古き良き思い出。。ほんとはキヤノンがこういうの出すべき、、とこのブログでも書いた。そしたら出てきたよ衝撃の5D Mark II。世界中が驚き動画撮影の歴史が変わった名機中の名機だ。少なくとも今後10年は語られ継がれることは間違いない。デジタル一眼史上、いやもしかしたらカメラ史上も残っていくかもしれない。
僕が5Dの初代機について書いたエントリ。当時はまさかほんとに動画が撮れる二代目が出るとは思わなかった。。。
ピントが合わないカメラが欲しい (2006年12月01日)
5D Mark II&一緒に買ったシグマの50mm。ウチの5D2傷だらけ。ウチの子にあげるつもり。いらないか(笑
だけど最初はフルオートだった
が、同時に動画カメラとしては完璧に欠陥品だった。そもそも最初はフルオートでしか撮れなかった。だから、あの絵の素晴らしさは1フレ見ただけで分かったけど、僕は最初の1年は買わなかった。だってフルオートでは仕事で使えないから。みんなニコンレンズをつけてなんとか絞りをマニュアル化しようとしたりいろいろやってたが、半年後の春にファームウェアが更新されマニュアル対応になった。そこからだ、僕的には5D、仕事でもイケるかもと思ったのは。
H.264 MOVで死んだ。
実際に運用してみて困ったのが編集だ。MOVのH.264をまともに再生できる編集ソフトなんてなかった。しかもVegasは生のまま取り込めるけど10カットくらい入れると落ちてしまう。初めて5D2を使ったとき、ロケ後2日後くらいに試写だったんだが落ちまくって編集できなくてほんと泣きそうになりながら1カットごとにAEに取りこんで変換。。。
Canon 5D Mark II撮影素材を本格編集してみた (2009年09月20日)
そんなことも知らなかったのかよ!といわれそうだけど、そんなこんなでやっとのことで試写は乗り越えた。そのあとすぐにいろいろ調べて、今となってはGoProに買収されてしまったCineFormコーデックを導入。収録素材をCineForm AVIの444にコーデック変換して編集するということを始めてようやくワークフローが完成した。
カメラ単体だと手振れが酷い!
で、1回仕事で使って使えるぞ!と分かったら速攻でポチって5D2お買い上げ。レンズを一緒にワサワサ買ってお独り撮影仕事で使い始めたんだが、どうもおかしい。。普通にしっかり撮ってるつもりがやっぱ手振れが酷いんだねえ。
Z5Jのようなハンディも肩のせカメラと比べると手振れが気になるので相当注意しないといけなかったのだが、5D2はその比ではないくらい酷い。オレがへたくそなのではないと気づいたのは、世界中で同じことを考えている人がいたからだ。で、調べてみたらZacutoとかいう奇妙な会社があることを知った。それからがリグ地獄である。。究極の答えがない、永遠に悩み続ける世界。。
ハイビジョン1眼ムービー用キットのいろいろ (2009年11月10日)
最近リグオフ会と称して飲み会をたまにやってるけど次から次へといろんなリグが出て、いつ集まっても酒がうまいんだなこれが。
音はどうすんだよ!?
次に誰もが陥る大問題が音。。これは弊ブログでもなんども書いたんだが、やっぱ初期の頃は失敗の連続だった。この問題を一度も失敗せずに乗り切れた人はいたのだろうか?
DSLR撮影、最強の録音体制=DSLR用音声入力ボックス自作への道のり Part4 (2012年03月08日)
音声は別ファイル別カードになるから扱いも2倍気を使うし、とにかくこの音問題を確実に解決するまでずいぶん時間がかかった。。今は音声をオンで撮る必要があるときはやっぱ二人で現場に行くほうが最終的なコストは安いということに落ち着いて、そうすることにしてる。音声を誰かに任せれば1人で複数のカメラも回せるし。
HDMIしね
そしてHDMI問題。。。。。 ようやく現場で落ちついてセッティングができるようになったのはスループットのあるZacuto EVFを買ってから。。分配器を使ってたときは、クライアントモニタに絵がこねえ、なんてことが何度あったか。HD-SDIの変換とモニタを買えばよかったんだが、スループットで問題がかなり軽減されたので今ではそれでなんとかなってる。
外部モニタとライヴビューが両立できない不便さ (2011年06月28日)
ただしいつイカれてもいいようにケーブルは4、5本用意してるし、クライアントモニタも2台、分配器やブースターやコネクタも何個も現場に用意してる。ま、あたりまえっちゃ当たり前だけど。。
そういえば5D Mark II1台じゃ不安だから7Dをすぐにサブ機でと買ったけど7DのHDMIコネクタがロケ初日で壊れたってこともあったなあ。。。HDMIってなんとかなんないのかな。。
軽くて小さいから特機がいっぱい使えるぞ!
僕が一番最初に自分で買った特機はGlidecam HD4000なんだけど、なんせZ5Jだと重すぎて全然使えねー。が5Dだといい感じで使えるじゃん!
と、思ってたらスライダーやらジブやらスケータードリーやらタイヤドリーやら、山のようにそろえてしまった。やっぱ、軽くて小さいって善だよなあ。。と、軽くて小さいせいで陥っているリグ地獄のことは忘れたかのように今は思う。。
機材がもたらす表現力の幅 (2011年06月20日)
とまあそんなこんなで、ロケ現場から撮影機材から編集から何から何まで、5D2の前と後では、ほんと変わってしまった。ビデオカメラってほんと便利だよな~、何も考えなくても良かったもんな~~~と5D2と苦闘しながら思ってたけど、逆に言うと、こいつのおかげでいろんなことを学べたし(いっぱい失敗もしたけど)、映像制作者として相当鍛えられたと思う。
レンズもいっぱい買って、スチールさんなら当然持っているはずのレンズのミリ数の感覚もおかげで身体に染み付いたし(ただしこれはフィルム=活動写真の感覚と違う)、ビデオカメラでのほほんと撮ってたら学ばなかっただろうなあことばかり。
5D2以降の世界的な映像業界の動きとかは僕が書くことじゃないので他のかたがたの記事を見ていただくとして、映像制作者として僕個人が5D2の前後で何を学び何を感じたかを思い出話的に書いてみた。
5D Mark IIはほんとうにすごいカメラだった。こんな素晴らしいカメラを作ってくれたキヤノンの皆さんには心から感謝したい。ありがとうございました。
このブログ記事は実は5D3が出た頃に書いてたんだけど、昨日twitterで教えていただいたmono-logueさんのこちらの記事を見て僕も続きを書こう、、と思ってエントリしました。