我らがロジャー・ディーキンス。美しいショットしか撮らない撮影監督。アカデミー賞ノミネートの常連で、ついにブレードランナーで受賞した神様。このロジャー・ディーキンスがアニメーションの監修をしていることご存知だろうか。ヒックとドラゴンシリーズだ。ようやく3部作完結編を見たのでネタバレしないように感想を書きたい。
ピクサー映画のWALL-Eから
ロジャー・ディーキンスがアニメーションの監修を始めたのはピクサーのウォーリーが最初。ウォーリーのメイキングにもロジャー・ディーキンスは登場する。ウォーリーの最初の地球上でのシーンはロジャー・ディーキンス節でいっぱいだ。
4分40秒から神様が出てくる。
これを見たドリームワークスのチームがロジャー・ディーキンスに監修を依頼。ウォーリーでアニメーションの画作りに興味を持っていたディーキンスも快諾し、以来3部作に渡って彼の名が大きくクレジットされている。
このあたりの記事に経緯が詳しい。
This Way There Be Dragons (NYT)
INTO THE WILD (ICG Magazine)
とにかく美しい

ヒックとドラゴンシリーズを見た瞬間に気づくこと。息を呑むという言葉にふさわしい美しさにあふれている。炎や太陽の使い方。シングルソースの陰影が印象的なライティング。霧や雲の存在感。落ち着いて控えめな色味。
美しさに涙するとはこういうことなのかな、と見るたびに思う。
2010年に発表された1作目ですら、3作目と比べるとCG技術は劣るが、美しさは普遍だ。
年末に公開される完結編!
なぜかこのシリーズは日本では人気が全くなく、ほっておくと公開すらされないという不遇をかこっている。もったいな過ぎる。
2作目は有志の要望が集まりなんとか公開にこぎつけ、3作目も年末に公開されるらしい!
『ヒックとドラゴン3』12・20日本公開決定 ギャガが配給パートナーに
ロジャー・ディーキンスの画作りを見るだけで見る価値あり
もうね、やばいです。全カット泣けます、美しすぎて。ぜひ公開されたら劇場行ってください。
普通のアニメ映画とは全く違う絵。3作目の今回は特にロジャー・ディーキンス、全開です。こんな記事書かれてるくらい。
‘How to Train Your Dragon: The Hidden World’: How Animators Channeled Roger Deakins
今回、Moonrayという新しいレイトレースレンダラを使って、ディーキンスがやりたかった「大きなエリアライト」「バウンスライト」などが実現。照明関係の技術が劇的に向上したそうだ。
Full Circleの物語
1作目で、主人公とドラゴンが心を通わせるシーン。シリーズを通して最も印象的なシーンなのだが、3作目でそこに戻ってくる。
ああ、Full Circleとはこのことだな、と。
トレーラーを見ればわかるので書きますが、今回トゥースレスに白い恋人ができる。この二匹の恋物語は当然ながらセリフがないのだが、なんだろう、見てると泣けてくるんです。

トレーラーよりキャプチャ
それは、トゥースレスが恋すれば恋するほど、だんだんとわかることがあるから。
美しくも泣ける恋。
これ以上はネタバレになるので書けない。。。。。
このシリーズがなぜ日本で人気がないのか、まったく意味不明なんだけどなぜ?少なくともディーキンスの画作りを堪能するためにぜひ見てほしい。

4K UHD、値打ちあります
勿論知っていましたよ!NHKの『スーパープレゼンテーション』で"WALL-E"のスタッフが出演した時この話は出なかったのでとても残念。『どん底』の黒澤明が古今亭志ん生を招いたとか、宝塚歌劇団が『ベルサイユのばら』の演出、所作含む演技指導に長谷川一夫を招いたエピソードに似ていると思いました。
メイキングにはデニス・ミューレンも出て来ます。『ヒックとドラゴン』に直接関係無いけれど、『ドラゴンスレイヤー』という『ヒックと~』の可愛らしいドラゴンの比ではない怖~い竜が大暴れするという、昭和の恐竜マニアが泣いて喜びそうなトクサツをやったのがミューレンとフィル・ティペットです。
こうしたリアリスティックな見え方をとことん研究した秀作が世に出ると、競合社も負けじとハイクオリティなものを作るという良い競争が、発展を促しました。『トイ・ストーリー』の最新作なんて随分見え方が変わったなーと思いましたが、ディーキンスが導いた映像の延長上にあるわけですね。
CGアニメとディーキンスと云えば『ランゴ』についても熱く語っていただかねばなりません。
いつもいろいろおもしろいこと教えていただいてありがとうございます!
なるほど。
How to train your dragonがアニメの画作りに与えた影響、とは考えたことはなかったです。
でもディーキンスがやってる、ということでピクサーやディズニーの監督やアニメーターも注目しているでしょうね。
アニメだけどリアルなライティングというのがおもしろいですよね。
本文に挙げたウォーリーのメイキングでもディーキンスが「レンズメーカーが何十年もかけて無くそうと頑張ってるレンズの欠陥であるブレをCGで再現するって本末転倒すぎておかしいよね!(笑」って話してますが、ストーリーテリングにおける説得力ってこういうところにあるんだなあと改めて実感します。
トイ・ストーリー4はレンダリング時間がべらぼうらしいですね。Dragon 3もMoonrayというレンダラで、ディーキンス節をより忠実に再現できるようになったらしいですから、今後、撮影監督の仕事が増えるかもしれません。
日本ではDragonシリーズは全く話題になりませんが、日本のアニメーターや監督さんたちはきっと見てるに違いない!!
また対極的なヴィットリオ・ストラーロをコンサルタントに(以下略)
楽しい妄想です。デヴィッド・リンチは映画を作り続けて興収が振るわず低迷していましたが、デジタル撮影と配信サーヴィスで復活。デジタルのツールが味方するアーティストの多さを窺わせる事例になりました。
コンジに関して『パニック・ルーム』であまりの手間の掛け過ぎ、拘り過ぎによって解雇させられたという話を聞いています。実写では捻出に手間の掛かるような映像もCGを使えば高品質に手早く出来ますよ、と誰か売り込んでいないでしょうか。
日本のアニメーターとCGIの関係については、伝説的なアニメーターの金田伊功さんがゲーム作品「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」で絵コンテを担当。腕利きのアニメーターが高報酬でリクルートされたり、キャリアアップを目指し自ら外国に出て行く人も居たでしょう。『ヒックとドラゴン』シリーズのスタッフリストを覗いてみてもそのような絵が易々と想像出来ます。日本では身動き取れなくて海外に逃れてノーベル賞を獲った研究者も居ますが、似たような事例はどの業界にもある事かも知れません。言葉の壁さえクリアできれば。
下記の"ONCE"の投稿で3RD EYEさんが書き込まれた一文がずっと刻まれています。
“映画に1000万円出資してくれる公的機関”は似た趣旨の半官半民の会社が、税金で運営されていた事があります。ANEW株式会社というのですが、日本の映像コンテンツや映画の原作になりそうな作品を海外に売り込むと謳って、税金22憶を使いながら一作さえモノにならないまま民間に払い下げられ有耶無耶にされました。
世界的に尊敬されていたアニメスタジオを放火から守る事も出来ないのに、ブラックお笑い企業に100億円、アイドルに500憶円税金を投じてろくな成果が上がらず不正の温床になるとか…目の前真っ暗になります。
遅レスすみません!!実はちょっと入院してまして、、、
おもろい!
セブンのような絵柄のアニメ。いやすでに影響を受けてるアニメあるでしょうが、3DCGアニメで本人が本格的に監修するとどうなるか見てみたいですね。
コンジといえばそういえば、ネットフリックス映画のポンジュノ監督オクジャを撮ってましたね。かなり話題の映画で見てみたいと思ってるのですが、なにぶんネットフリックス未加入で。。
おっしゃってるような挑戦的な映画はもしかしたらネットフリックスから出てくるかもですね。
そういえば、ディーキンス映画の1本であるMendes監督のJarheadがまたアマゾンプライムでタダで見られたので改めて見たのですが、あの砂漠のシーンの極端なウォッシュアウトされた画作り、今見るとメチャクチャ大胆だなーと。アマゾンプライムだとかなり画質が落ちるので絶対こんな環境で見てほしくないとディーキンスは思ってるだろうと思いました。ちゃんとした4K HDR環境で見てみないと!
京アニの件ですが、めちゃくちゃ悲しいですよね。僕は、日本のアニメはほとんど詳しくないのですが、それでも名前は知ってるほどのスタジオです。
実は事件があった場所が、うちの奥さんの実家のすぐ近くで、奥さんが昔勤めていた病院に怪我された方が送られているようでした。
僕が事件が起きてから思ったのが、やっぱりピクサーを始め米国のスタジオのように、しっかりとした仕事環境を整えられるような状況にならないとほんとうの意味でクールジャパンじゃないよな、ということです。
放送局や配給会社だけじゃなく、制作会社であるスタジオがきちんと儲けられる仕組みを作らないと。。
最近、To Pixar and Beyondという本を読んだんですが、スティーブ・ジョブズが「アニメ制作会社がリスクなく儲けて成長していくにはどうすればいいか」ということを考え、賭けたり引いたりしながらPixarの舵取りをしていたのがすごく面白かったです。
日本のアニメ制作会社にももっともっと儲けてほしいです。
大変でしたね。お大事に。
ありがとうございます!
腎臓の病気を長年患ってまして、その治療の一環で短期間の入院でした。
おかげでいっぱい映画見られました!! Jarheadを見られたのも入院のおかげです(笑
日曜夜にBS日テレで『ブレードランナー2049』を放送していました。4K放送開始記念だそうです。制作はSONYで4K対応製品をアピールしたいし、今オールスター映画となったリメイク版"DUNE"のポスプロ中というヴィルヌーヴも意識の片隅に置くなど、相当センデン臭い。デヴィッド・リンチの『砂の惑星』もNHKでやってましたっけ。
リドリー・スコット絡みで展開されるストーリーは基本的に苦痛に満ちて血まみれ、死体の山、過酷さと救いの無さはデスソースを傷口に掛けられる思いがするし、レイチェルを世界トップクラスのハイテクでデッチあげ、あっさり殺してしまうとは…
そんな中でもディーキンスの仕事は見事で、色彩と陰影のコントロールが芸術的で、4Kではなく地デジ並みの解像度に潰れた画でも、汚れっぽさを強調しないところは気持ち良かった。
クオリティが圧倒的に高いのは監督や脚本家の手腕も助けているとはいえ、絵がこれだけ美しいと内容の残酷さを一瞬忘れてしまう?(苦笑)