三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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サイコパス系1

2005-04-02 01:23:04 | モンスター映画
 ついに誘惑に負けたというか規制緩和というか、「サイコパスもの」もモンスター映画類にお迎えすることに。考えてみればすでに「フリークス系」がかなり早くにエントリーしているわけで。精神的フリークスというべきサイコパスをモンスターから除外する必要もなし……、という次第にて……

 ■アイデンディティー■ 一転また一転。いったい何回サプライズが済めば解放してくれるんだ。いい意味で呆れたよ。超ォー興奮できるよこれ。大雨の中孤立したモーテルってだけで閉鎖空間もの特有の戦慄の期待たっぷりなのに、偶然集まった11人の誕生日がなぜか同じとか、死体が一つ残らず消えるとか、ありえない出来事が見事ありえてしまった秘密がなんと例のあれだとはな~。あれがメインテーマじゃ負けましたよ。あんな手、伏線が見事だから成功したんだな。似て非なる『マトリックス』なんかまっつぁお、いや細かいとこうまく行き届いてたよ、「あれっ、なに?」ってシーンがさりげなく点在、ほら警官の背中になぜか血がついてるシーンとかさ、あれ結局ああいう経緯だったと判明してみれば、ほれあの囚人、そもそも脱走する必要なかったんじゃねーのッてことになるんだけど、しかしあのオチならやはり脱走も十分ありかと。しかもラストが護送車シーン二度目とくれば(まさかまた同じことが……?)思いっきりいやな予感がするわけで、そしたらああ来ちゃったものなあ。表向きの真犯人である囚人とは全然かけ離れた、まさに一番「こいつが真犯人だったら怖すぎるぞー」的人物でしたってわけで。まことにサイコ中のサイコにふさわしい人選でしたわい。終わってみればひとりずつ殺されてく目的も明確すぎるほど明確だったし(いわば神の意思っつうか棋士の指し手が働いてたってわけだ)、一番自覚度の高かったヒーロー格の元警官、あいつによる限りなく自殺気味の「準真犯人」退治もああいう背景ならごくごく納得だし、ううーむ、ヤラレタってばよ。人間の生理がよくわかってる大傑作でしたね(キャラクターの生理も観客の生理もね。あえて心理とは言うまい)。
 ■セブン■ 定年間近で達観しまくった刑事と血気盛んな新任刑事というコンビには「アーまたその通俗路線か……」とげんなりしかけたさ。けれど暗~い重~い雰囲気にはついつい引き込まれずにはおれなかったね。大食にしても高慢にしても殺し方が抜群に凝りまくってて猟奇サイコのエキス滲んでて面白れーし、しかしまあ、よく考えりゃ御都合主義もいいとこではあるんだよね。大体ラストあんなふうに容疑者の要求どおり車走らせるなんてあるわきゃないし、そもそも自首の当日に即あれが実行されなきゃ犯人の計画通りにいかなかったわけでしょ。ま、見てる間はさほど気にならなかったからいいけど。つまり映画作りが巧みだったと。あと世間で噂の〈あのラスト〉ですねー。「爆弾か?」とフツーに緊張させる盛り上げ方にゃ脱帽。ってよりなにより護送車の後ろに乗るやつが行きと帰りで違ってるってのがなんともブラックで笑っちまったけど、あと憤怒の殺人だけ加害者被害者が入れ替わってるのが大笑いだったけど(あ、嫉妬もそうだったっけか。嫉妬の殺人どーもわかりづらかったというか、苦しい意味付けだったかな)、てかむろん笑い事じゃないわけで。『光る眼』や『スピーシーズ・リターン/種の終焉』のとこでも言ったけど妊娠が関係した悲劇ってのは気分悪くていけねえ。つーか俺なら、たとえ逆上してても犯人の望み通りひと思いに殺してやるよりか、高慢の殺人見習ってあいつの鼻だけ銃弾でブッ飛ばしとくけどな。そのほうがはるかに苦しいでしょ。それだと映画になんないけどさ。
 ■ソウ SAW■ スゲー迫力だったなあ、前半は。汚ったねえバスタブでプハーーッと蘇生する出だしから、コリャ並みの映画じゃないゾ!て緊迫感がひしひしと。二人の関係とウラが次第にわかってくるプロセスも手に汗ものでした。互いに信用してるんだか協力する気あんだか微妙路線がキテる。重ね重ねきったねえ部屋のムードったら超不条理シチュエーションにぴったりだし。サイコ風味たっぷりのオトボケ風マスクも怖ろしげだし。けど……あ~あ、後半の荒唐無稽ぶりで一挙台無しにしちまって。惜しかったどころじゃないな。『アイデンティティー』みたいな「ナルホド、それならありうる」的現実離れってわけじゃない、フツーの肉体的現実離れだからこりゃいかんワ。刑事の暴走もなんかあれだし、だいたい自分の脚ほんとに切断しなさんなよぉノコギリで~。今さら切ってどうなるって勝算もねえでしょうがよ。それに真犯人のあまりにとってつけた動機がねえ。ホントに重病人だったのかよって。二転三転させたいのはわかるけどいくらゲーム感覚ッたって凝りすぎだよ、超悪い意味で。ありえませんよ。ただ瞬間瞬間を面白く引っ張ってきゃOKって、いかにも映画的刹那的なセオリーでしたかね。残念きわまりない。まあ正直楽しめはしましたが終わってみりゃ〈あーあやっぱ映画って四流芸術だな……〉的虚脱感を強いられるたぐいの代物でしたワ……。(ちなみに、感じた人多いでしょうが、最後に携帯電話取ろうとする例の問題場面ね、なにも脚なんぞ切らずに、箱を相棒に投げればよかったのにね。むこうから箱滑らせてぶつけて携帯押しやれば楽勝じゃん。そういう簡単なテが見えてただけに脚切りにはシラケたですよォォ……)
 ■羊たちの沈黙■ これ、ねえ……。俺ゃこういうの意外とダメだわ、普通の荒唐無稽を生真面目に演られちゃうと。しっかしマーやたら評判いい映画ですよね。ほんとにそんな傑作なのかよ? どーもこうまでありえねーオハナシだと俺的にゃ許容範囲越えるね。ヒロイン相手の二重プロファイリングも思わせぶりすぎてさ。だいたいレクターが真犯人を知ってるって何でみんな決めつけてんだよ。根拠あんのかよ。しかもVIP扱い、だいたい娘が誘拐されたくらいで上院議員にあんな権限あるわけねえでしょうが。レクターの脱走ぶりってば超常的すぎるし(『ジェイソンX』じゃないでしょって)、強いていえばバッファロー・ビルを模倣して警官の顔の皮剥いで変装したところがエンタテイメントとしちゃ気が利いてたわな。しかしいくらなんでも、ですよねえ。そいつをシリアスにやるなよって。大団円もお定まりどおりヒロインが単独で乗り込んでめでたく解決と。(しかし何でひとりになっちゃったんだっけ。そこんとこ映画ン中でちゃんと説明されてた?)……あ~あ、こういう背伸び映画が褒めそやされるのってなんか微妙に苛つくわな。わるいけど世間の大衆様のレベルってやっぱ相当低いのかなと。あ、蛾はよかったよ、もちろん。セスジスズメのサナギね、小学生の頃よく下校途中で拾ったよ。お尻いじるとピクピク動いて可愛いんだぜ。
 ■タブー■ 『セブン』とのごくごく表層のモチーフ的類似ゆえ一応言及しとくけど。あー典型的トホホ映画だわ、と。緊張感ゼロ。六つの罪はいいけど、同性愛や3Pまで罪とされたんじゃたまったもんじゃないよな。しかもそれをタネに恐喝が成立するかや? まあ日本じゃありえねーことなんで観ててリアリティゼロでした。いやアメリカだって。同性愛否定されちゃっちゃこれまでの公民権運動差別撤廃運動はなんなのと。にしてもつくづく近親相姦をからめるの強引すぎてるってばさ、凝りすぎとかじゃなくて無理筋っての、そういうのは。最後のあわただしい〈連続殺人アンコール〉も理由薄弱すぎ。あ~あ条件いい密室ものであんなクッダラナイオハナシになるなんてねえ。