受法寺本堂建築誌

伝統木造工法により建築中です

受法寺本堂設計のコンセプト①

2005年11月22日 | Weblog
寺報6号を発行することが出来ました。
上田堯世設計士さんより、「受法寺本堂設計のコンセプト①」の記事を頂きました。
 
―ピカッと・キチッと・ドシッとした建築づくり―
 この号から3回にわたって、建築の設計・監理をお願いした上田建築事務所の上田堯世氏の寄稿を掲載します。表題の「コンセプト」は「概念、全体を貫く観点、基本的な考え方」と解釈すればよいでしょう。文中、住職としては少し面はゆいところもありますが―。

この度受法寺本堂建立工事の設計・監理者として参加させていただきます栄誉に感謝いたします。
 思い返しますと、設計に関する打ち合わせだけでも約10年がかりの大プロジェクトです。仏具商の小堀さんからの建築と関連のある提案書は、平成2年7月27日付となっています。僕の古い手帳の確かな打ち合わせ記録でも8年10月18日となっています。第1回打ち合わせはまだまだ前だと思いますが…。9年4月1日には住職さんと共に、広島の明休寺さんの新築落成慶讃奉告法要の機会に見学させていただきました。爾来、住職さんや若院さんと精力的な打ち合わせを重ねてまいりました。お二人の研究熱心さに唯々敬服いたします。本物の、本堂改築への思い入れの強さに心を打たれました。14年1月20日には建築世話人会の発足を見、門徒の皆様の賛同を得、17年9月12日の起工式となりました。おめでとうございます。
 起工式での住職さんのお言葉は大変印象的でした。クラシック音楽のオーケストラの演奏にたとえられ〝設計者は作曲家など…〟と述べられました。この機会を与えられました私達一同は力を合わせ、皆様の心を打つことのできる交響楽に仕上げなければならないと、改めて身の引き締まる思いをいたしました。
 来年9月末日の完成までは、御本尊の阿弥陀如来さまには御不自由をおかけいたしますが、200年の大計に免じて御容赦下さいませ。
 ここで簡単に200年という寿命に触れました。皆様の御先祖を振り返って下さい。200年と言う年月は6~8代さかのぼることになります。並大抵の時間ではありません。特に自然環境の苛酷な土佐の海岸部は、建築の寿命に於いて不利な地です。今回より3回にわたり寺報の貴重な紙面をお借りし、僕の建築をつくるための基本的な考え方、この本堂設計の考え方、工事経過を述べさせていただきたいと思います。
 僕は住まいをつくる時も、少なくとも百年は永持ちする家を目差します。3世代が過ごすことが出来る住まいを。何故なら、家は不動産でなければならないと考えるからです。資産価値が変動するものでは不動産とは言えません。僕が現在住んでいる家は大正の始めに祖父により建てた住まいです。90年余り経ています。僕が少し増築をいたしましたが、我が家の耐久消費財への投資は父の代、僕の代とも、周りの人々に比べ圧倒的に少なくて済みます。低所得でも生き延びることができます。日本の経済情勢もいつまでも右肩上がりではありません。現代のように。いつの時代も健康で所得が伴うとも限りません。地球環境を考えても、寿命の長い建築づくりにより産業廃棄物を減らすことが求められています。
 さて、具体的にどのような手法で、寿命の長い建築が可能でしょう。
 僕は〝ピカッと・キチッと・ドシッとした建築づくり〟を提唱しています。
  ピカッとは文化として持ち合わさねばならない
    静けさを備える建築。
  キチッとは建築として持ち合わさねばならない
    確かさを備える建築。
  ドシッとはその他持ち合わさねばならない
    重たさを備える建築。
 確かな技術の裏付けを持ち、静けさを感じさせてくれ、重たさを持って地域に馴染む建築こそ、求める建築です。
 詳しくは、次号で説明させていただきます。(上田)

住職の「起工式に思う」は9月12日の記事に記載。

写真は、上田建築事務所。
9月まで使用していた旧事務所が都市計画により移転を迫られ、転居されました。
旧事務所も木造の素敵な建物でしたが、新事務所は30年ほど前に弁護士事務所として設計。前に比べて、かなり狭くなったようです。
レンガ風の外観ですが、内装は和紙でした。