日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『同じ玄関の夢・第三夜』

2015-09-29 | 曼荼羅タイト

「シュリ!!シュリぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

と叫んだ、



けれど、実際の僕は寝ている状態だし、布団の僕は、少しだけ寝返りをうつ・・・くらいのものだろうか?

そんな想像をする気もなく、僕は、自分の睡眠中の彼女の為に、幽霊屋敷の中で、引き裂ける程の力で喉を使った。


その、僕の叫び声も届かず、シュリの反応はナイ。







少しだけ助走をつけて殴り掛かれば届く位置にいる、白いワンピースの女は、僕よりも大きな声で、自分が探し求める相手の名前を叫んでいる様だけれど、聞き取る事は出来ない。

聞き取れるような音量じゃないと言えば、伝わるかもしれない音量だ。





その白いワンピースの女に、【黄色のマネキン】が捕まった。






以前までの僕から見た黄色のマネキンの印象は、特に冷静で、表情を変える事はなかった。

【赤】などは、僕が命令口調で何かを命ずると、一瞬、コチラを見た後、不服を抑えて業務に努める印象だったけれど、黄色は違った。

黄色は、一度たりとも、僕に目を合わせた事がナイ。







思い出せば、こんな夜があった。

僕が、飲んだこともない色の液体を飲み干し、酔っぱらっている感覚に近い陶酔感を覚えている時に、【黄色】に言った。




「ヒマワリを持ってこい!!!」

座り心地の良い、至極のソファで僕は叫んだ、勿論、この夢の中で。

黄色は後ろを振り向き、両手を拡げ、間を確認して一気に閉じた。

何かを捕らえたのは僕にも見えた。



黄色がこちらを振り向くと、立派な黄色に輝くヒマワリを持っていた。


僕は、感動したが、その鮮やかさに嫉妬した


今、思えば、何故、そんな事を言ったのかは判断できない、陶酔感のせいにしたい、「そんな黄色じゃねーよ!!!」

僕は、グラスを黄色に投げつけて、見たこともないようなヒマワリを蹴り飛ばし、黄色を殴りつけた。



黄色は、鼻から黄色の液体をこぼしながら、次の準備をした。



もう一度、【黄色】が出現させたヒマワリは、僕から見たら、黄色なんだけども、見たことがナイ黄色で、

言葉と心を失った・・・、美しすぎたのだ。





この僕の世界では『限界』と言うものがナイらしい・・・。

キレイなものは、常に更新され、驚かせてくれる・・・。


そんなやり取りを、黄色と、一晩中やりあった。








その朝、二日酔いの感覚のまま、眠りの中で目覚めると、

失明するほどの黄色の眩しさが、僕を責め立てる・・・



その時は、シュリが近くにいた、「ちょっと・・・、昨日は、やりすぎじゃない?・・・」


声のトーンは呆れていた。


僕に、それを言うのは初めてじゃないんだろう、この世界では。




このまま起きて、この花束を現実世界に持ち帰られるなら、億万長者の一人になれるだろう・・・

その様な未知の黄色いヒマワリで、部屋を飾っていた。











そんなヒマワリを創造してくれた【黄色】が、白いワンピースの女に・・・捕まっている。

女は、黄色に尋ねた。


「今、あの人はどこにいるのよ?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


黄色は答えない、

一瞬の沈黙をかき消すような破裂音がした、


黄色が、女の手の中で弾けて散った。

まるで水風船が爆発したように・・・





僕が、腰を抜かして、ただ茫然と、出来事を時間に任せていると・・・





白いワンピースの女は、色々なマネキンを捕まえて、破裂させていった。


部屋の各所で、色が弾ける。






【紫】のマネキンを破裂させた時に、やっと僕は、気付いた。



部屋の色がドンドン・・・


ドンドン暗くなっている?




暗くなっている訳じゃない!!


色がなくなっている!!!!




紫は、シュリが大好きな色で、僕がシュリの爪に塗った初めての色だ。



「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


色が失われていく世界に、何をしていいのかは分からない、

僕は叫ぶしかなかった





ドンドン、この夢の世界からは色がなくなっていき、もう、灰色、白と黒とでなんとか認識出来るほどになった・・・



その時にふと、白いワンピースの女を見ると、今までの様子とあからさまに違った。



その女にだけは色があり、

白いワンピースには、残酷な血痕の赤や、人に殴られたような跡の青と、痛々しく腫れた黄疸

薄汚れた深緑や、髪の毛の黒さもしっかりと見えた。






なんなんだこいつは!!!!



シュリを助けたい、シュリの色だけは奪わせないぞ!!!と僕は抵抗した、


部屋にある、色のナイ絵画や壺、柔らかい花、色のマネキンの残骸などを投げつけた・・・


投げつけながら逃げる、


玄関から出れば、この悪夢から覚めて、僕は平凡な"売れていない芸人"に戻れる気がした。




"もう、こんな世界どうでもいい!!!!!"


全力疾走で玄関に走る。



後ろを振り向けば、あの女の様子はナイ。


玄関のドアを開ける、その時に、冷蔵庫が鳴った。

声がする、直ぐにシュリだ!と気付いた。


僕はこの世界から逃げる事を忘れて、冷蔵庫を開ける。


冷蔵庫の中には、色を亡くした真っ白いシュリが固まっていた。


「シュリ!!シュリ!!!!!」



シュリは、死んではいなかった、なんとか生きている様子。


僕は、冷たく凍えて、強く持ってしまえば、パリンと砕けてしまいそうなシュリの手を握り、冷蔵庫から出した。









あの女の様子は周辺に、ナイ。




「シュリ・・・、シュリ・・・、ここから逃げよう、俺が目を覚ませば大丈夫なんだから」


と言いながら、左手でシュリの右手を握り、


僕は、自らの右手でドアノブを握って開けた。




ぐっ・・・わぁーーーーーああああああああぁぁああーーー!!!


ドアノブを開けた先には、直径3メートルはある様な、あの女の顔がニッコリと笑って、僕に叫んだ。


『おおおおーーーーー、おぎる・・・おぎ、ぎぎ、おき・・・起きる時間よぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!まだぁー、まだまだ、あんだわぁーーーー!!!!・・・・・』



僕は、気を失う感覚で、布団の中に戻った、




夢の中、右手で本気で握っていたのはドアノブではなく、自分のスマートホンだった。







いつもの部屋だ・・・



汚い部屋だからこそ、色が沢山ある・・・


とても深い呼吸を一度して・・・、今日もバイトだと再確認した。




「そうだよな、夢だよな・・・」、不意に出た独り言に、自分でも笑ってしまった、「はは・・・、最近、飲み過ぎてたかな・・・」







なんとなく。


汗だくになった自分の脇の下をなでながら、


なんとなく、見た、


現実では出逢うはずのナイ、シュリちゃんのインスタグラムを見てみると・・・

彼女のタイムラインの写真が全て、白黒になっていて・・・

「あ・・・・・・、あああああぁぁぁぁあぁぁぁーーーーー!!!!!!!!!」


僕は、奇声の勢いで自分のスマートホンを壁に投げつけた。


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