日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『刑事もの』

2015-11-07 | 曼荼羅タイト
やっぱりいつかは刑事ものの小説で、人気キャラを産み出したいものです。










トーストの上にバターを乗せてジンワリと溶けていくのを横目に、スープカップの底に沈殿するコーンスープの粉をかき混ぜていると、テレビから聞こえてきたのは近所で起きた殺人事件だった。

小さなスプーンにこびりついたコーンスープの濃厚な粉を舐めとりながら、自分の知っている地域かと言う事に興味を持つ。

自分の知っている家だろうが、殺されたのが知り合いだろうが、俺がそれを自慢気に第三者に伝える手段としては、Twitterくらいしかないし、そのツイートを常に見られる人も知り合いではない30人前後だ。


バターが溶けたのを確認すると、ジャムを取りに冷蔵庫に向かう。

冷蔵庫の先には、靴が散乱している玄関だ。

小さな一つの部屋と、玄関を兼用したキッチンがある、キッチンには一か月に一度、立つか立たないか。


思い切り踏みつぶせば割れるであろう安いテーブルの上で、自分のスマートホンが揺れている。

ブブブブブ ブブブブブ ブブブブブ

電話の相手は、知り合いの刑事だった。


「はい」ジャムは片手に持っている。

「お、ニュース見てるか?」

「うん、見てるよ、藤崎町のやつだろ」

杉山とは、知り合って五年は経つ、友達の友達と言う形で出会った。

杉山は、俺が働いていない事をいい事として、事件の手伝いをさせる、年齢は俺と同じくらい、40手前だ。



勝手に俺との約束をとりつけ、一時間後位には、家に来ると言う。

杉山は、事件が起きると、ゲン担ぎの様な形で俺の家を訪れる。




インターホンを無視して、拳でドアを殴る音がする。

「入って来ーい」、俺はテレビを見ながら杉山と、いつも連れている部下を招き入れた。



「相変わらず汚い部屋だなぁ・・・」と言いながら杉山は、水平チョップを額にあてて挨拶をした。

「また、俺んちかよ」

「まぁ、そう言うなって」、例えにくい色をしたネクタイを首にだらしなくぶらさげている。



部下の、高崎と言う男は柔道選手にでもなれば?と助言をしたくなる体格で、俺の部屋を一層狭くさせる。

しっかりとスーツを着ているが、もっと動きやすい恰好をしろ・・・と高崎を見るたびに思う。



杉山が「藤崎町の事なんだけどな・・・」と一通り、警察しか知らない情報をペラペラと俺に話す。


高崎はいつも、そこまで言っていいのかなぁ?と不安な顔をしている。


「で、いつものヤツでいいのか?」と俺は提案する。

「あぁ」杉山はネクタイを外した。


杉山は、高崎に「ジシュマチさん」と呼ばれている。


「ジシュマチさん、これ」と言って高崎は紙エプロンを差し出す。

「さんきゅーな」

杉山が来ると分かっていたので、俺は、いつものカレーを作った。


杉山は、それを水を飲まずにたいらげる。


そして、俺の布団でゆっくりと寝るのだ、自分でもよくこの俺の布団で寝られるな、と感心する。

杉山が寝てから、20分位経った時、高崎の電話が鳴った。


「はい、あ、そうですか、わかりました、はい、戻ります」


高崎は安心した顔をする。

「ジシュマチさん!ジシュマチさん!!」杉山の体を揺らす。


「お・・・あぁ・・・、自首してきた?」杉山が起きる。

「はい、自首してきたみたいです」


「あ、そう、じゃ、帰るか」

杉山は、俺に3000円を渡して、「ゴチゴチー」と言いながら、帰っていった。



杉山・通称「自首待ちさん」

ただ、ひたすらに犯人の自主を待つ。


自首を待つ、職人だ。

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