菊道 とりゃ、めん!!!

菊道 とりゃ、めん!!!

【報告】第1回中南米剣道大会

2010-10-22 | はい!せんせ!

表題の件、以下、詳細報告です。


1.大会名
Campeonato Latinoamericano de KENDO
第1回中南米(ラテンアメリカ)剣道大会


2.開催場所
南米エクアドル国、キト市、ルミニャウイ体育館

3.開催日時
平成22年(2010年)10月8日(金)~10日(日)
初日 : 剣道・日本剣道形講習会、居合道講習会、審判講習会、一級審査
二日目 : 試合(女子個人、男子個人、少年少女青少年個人、女子団体、男子団体)
三日目 : 居合道段審査、剣道段審査


4.主催
ラテンアメリカ剣道連盟(CLAK)
エクアドル剣道協会


5.協賛
在エクアドル国日本大使館
JICAエクアドル支所
TOYOTAエクアドル


6.参加国・参加人数
14カ国 ・ 約400人(海外から約250人、エクアドル約150人)


7.試合結果

●総合
1.ブラジル
2.チリ
3.エクアドル

●女子個人
1.- Onaka M. (ブラジル)
2.- Toida E. (ブラジル)
3.- Tejeda N. (メキシコ)

●男子個人
1.- Takayama A. (ジル)
2.- Urano C. (ブラジル)
3.- Tachibana Z. (ブラジル)

●女子団体
1.- ブラジル
2.- エクアドル
3.- チリ

●男子団体
1.- ブラジル
2.- チリ
3.- メキシコ

●青少年(18歳まで)個人の部(勝ち抜き戦)
1.- Asato R. (ブラジル)
2.- Boudon J. (エクアドル)
3.- Ueda H. (ブラジル)


8.試合内容について
大会を終え、ブラジルが実力的にまだ頭一つ突き抜けているように感じた。剣道の歴史が長く、経験も豊富なブラジル。前回ブラジルで行われた世界剣道大会でも活躍したのは記憶に新しいと思う。男女団体ともに、三位でした。

特に男子ブラジルは世界大会後、さらに全体的にレベルアップしているように感じた。ブラジルに追随するのが、チリやメキシコなどの国。エクアドルは飛躍的にレベルアップしたものの、剣道の歴史はまだ11年と浅い為、三位決定戦でメキシコに2-1で惜敗した。

女子についても、ブラジルの強さが突出していた。今回は、剣道の経験の浅いエクアドル女子チームが二位に入賞した。エクアドルは大会に照準をあわせ強化稽古を数回行ってきた。開催国の強みももちろんあったであろうが、その結果が顕著に表れたようだ。エクアドルチームのように、まだ女子は短期的に集中稽古をすれば結果が残せることがわかった。


9.昇級・昇段結果(段位、受験者、合格者、合格率)

一級 94人 79人 84%
初段 39人 39人 100%
二段 36人 32人 89%
三段 17人 13人 76%
四段  9人   1人 11%
五段  7人   1人 14%
六段   2人  0人  0%
七段   3人  0人  0%

 

10.審査について
合格率が物語るように三段から四段の試験に一つの大きな壁が立ちはだかっている。審査後の講評で先生方から次の4つの条件を満たすよう指示があった。それは

1.攻め合い
2.崩し
3.仕掛け技
4.応じ技

である。この4つの条件を全て満たす必要がある。不足している受験者は必然的に不合格となった。加えて、各自が有する段位は1つ下の段位より圧倒的に優れていることが肝要である、と助言をいただいた。七段は六段より、六段は五段より、といった具合である。
今回の大会でたくさんの剣士が昇級・昇段を果たしました。1級以上の審査は、七段以上の先生がいるブラジルに行く必要があります。今回のように七段以上の先生方を招いてのエクアドル自国での審査開催は、剣道を愛するが経済的にゆとりのないエクアドル剣士にとって大きなサポートになりました。
一方、今回のように試合と審査が同時に行われるのは、中南米では致し方ないことだろう。試合と審査はもちろん共通する要素はもちろんあるが、双方について準備しなければならないラテンアメリカの剣士にとっては、切り替えが必要であり、多少なり困惑があったかもしれない。


11.所感

平成22年10月8日~10日の3日間、第1回中南米(ラテンアメリカ)剣道大会が南米エクアドル国キト市のルミニャウイ体育館にて行われた。今まで、南米剣道大会は過去7回開催されてきたが、中米の剣道界が融合する中南米大会は今回が初めてである。その記念すべき第1回の国際大会、小生が活動している南米エクアドル国で開催されることになった。大会参加国は14カ国(ブラジル、コスタリカ、ドミニカ、ウルグアイ、アルゼンチン、ベネズエラ、グアテマラ、メキシコ、ペルー、コロンビア、トリニダード・トバコ、チリ、アルーバ、エクアドル)。参加人数は約400人。主催は、ラテンアメリカ剣道協会とエクアドル剣道連盟である。協賛として、在エクアドル国日本大使館、JICAエクアドル支所、TOYOTAエクアドル等から協力があった。世界剣道連盟(IKF)からは、日本の七・八段の先生方3名(福本先生(範士八段)、近藤先生(範士八段、居合道教士七段)、黒瀬先生(教士七段))がエクアドル国に派遣され大会をサポートいただいた。

大会の総合結果は、優勝:ブラジル、二位:チリ、三位:エクアドルであった。エクアドルチームであるが、前回2008年の南米剣道大会で予選落ちしたことを考えれば大躍進といえるのでないか。これも本年2月に15名、7月に3名、計18名のJICA短期ボランティアの先生方にエクアドルに来ていただき、本大会に向けて集中強化稽古をエクアドル国内の各三都市で行っていただいた成果が出たといえるだろう。

また、特筆すべきは本大会にて、18歳までの少年少女剣士による勝ち抜き戦が行われたことである。会場は大いに盛り上がりを見せた。世界剣道大会ではこのような若手剣士を対象にした試合は行われていないと記憶している。特にエクアドル国第3の都市であるクエンカ市の子供剣士たちの活躍が目立った。その内の一人剣士ジャケス・ボウドンは、2位の好成績である。12歳の彼は、中高生クラスの大きい剣士含む5人に対して勝利を収めました。2年の間にたくましく成長したエクアドルの少年少女剣士たちを心強く思う。

小生は、2008年1月にエクアドルに着任した。この中南米剣道大会の開催はその着任当初から計画されてきたものである。本大会を開催するに当たり、エクアドル剣道協会の会長であるフェルナンド先生は数度にわたりブラジル、グアテマラ、コロンビア、ペルー、などの国を出張された。それは、今まで存在しなかったラテンアメリカ剣道連盟を立ち上げるため、そして本大会を成功させるためである。また、フェルナンド会長だけでなく、エクアドルの剣士たち個々人が粉骨砕身努力した。その甲斐あり、本大会は試合の結果ばかりでなく運営においても成功を収めることができた。3日間の大会は終わってしまえばあっという間であるが、この大会を成功させるために、2年間の日々の積み重ねがあったと思えば感慨深いものがある。

また、大会開催の1週間前の9月30日(木)、エクアドル国にて警察によるクーデターが発生した。日本でもニュースになったと聞いている。そのとき、エクアドル大統領が非常事態宣言を出し、空港が1週間閉鎖されるという噂が流れた。まさに各国の代表団剣士が到着しようとしている間近の事件で、大会の開催が危ぶまれた。エクアドル剣士の2年間の準備・努力の結果が無駄になるのではないかと思い、小生、一種の喪失感さえあった。 そんな中、エクアドルの剣士たちは常に「平常心」あった。事件があった当日、通常通り稽古に来る剣士が多く感動を覚えた。日本人の私が、エクアドル剣士から大切なことを学ばせていただいたような気がする。

このエクアドル剣士の精神は、大会に参加してくれた各国のラテンアメリカの剣士もきっと感じてくれたことだと思う。日本の武士道精神ですが、本大会をきっかけにエクアドルを起点として中南米中に広がっていく、そんな感覚さえ大会後、残りました。

最後になるが、今回の第1回中南米剣道大会、剣道の規律にラテンのフレンドシップが融合した非常に雰囲気の良いイベントであった。中南米剣道界にとって、またラテンアメリカの各剣士にとって、新たなスタートの1ページであり、財産となるイベントであったことを付記して、稿を終える。


キク